著者 岡島 成行


 農山漁村と都市との交流が盛んになってきている。政府も「オーライニッポン」というキャンペーンを展開するなど力を入れている。非常に喜ばしいことだが、どうも今ひとつ弾けない。パっとしないのだ。
 一体どこに原因があるのだろう。農村側も都市側もそろって交流を期待しているのに、どうしてなのか。農協のポスターを見ても「自然を楽しもう」と書いてあるし、自然体験活動推進協議会(CONE)のパンフレットにも「自然へ行こう。自分に帰ろう」とある。共に同じことを目指していているのだが、どうもしっくりいかない。お互いのチャンネルがかみ合っていないのだ。

 誰が考えても、自然の豊かな田舎は良いところだし、遊びに行きたい。しかし実際に遊びに行くとなると様々なマイナス要素がでてくる。アクセスが悪い、サービスが悪い、農作業だけ、アウトドアスポーツができない、飽きる・・・などである。
 農村が都市からの来訪者に望むことと都市住民が農村に望むこととが、ずれているのである。農村は商売にしたくない気持ちがある。そこそこお金は欲しいけれど、卑屈になりたくはない。都市からの来訪者は、お金を払っているのだからそれなりのサービスは欲しいし、快適にすごしたい。受け入れ側にもう少しプロ意識を持ってもらいたい。

 しかし、よく考えてみよう。都市側から農村に行ってなぜホテルや旅館並みのサービスを求めるのか。農村民宿のような場合ははじめからホテルや旅館とは違うことを認識しなければならない。違う点を楽しもうという意識が必要だ。また、農村も卑屈にならなくてもいいような受け入れ作戦を開発しなくてはならない。
 都市と農村との見えないギャップを埋める仕掛け、人材が必要である。そこにうまく油が回るようになれば、都市と農山漁村交流の動きは一気に弾けるのではないか。その時は、もうすぐそこまで来ているような気がするのだが、誰がその引き金を引くことになるのだろうか。楽しみである。



■バックナンバー
自然体験の夜明け
自然体験活動のすすめ
自然体験に追い風が吹いてきた
幼児と自然体験
若者たち
私の原風景
シャワークライミング
思い出の黄金色のトンネル
ジャック・モイヤーさんのこと
ジャック・モイヤーさんを悼んで
環境教育推進法が動き出す
NGOから見た環境教育推進法
冬山
都市と農山漁村の交流を考える

■著者紹介

岡島 成行(おかじま しげゆき)
(社)日本環境教育フォーラム理事長、環境ジャーナリスト、大妻女子大学ライフデザイン学科教授教授、自然体験活動推進協議会代表理事 など。
1944年1月 横浜市生れ。上智大学山岳部OB
読売新聞解説部次長をへて現職。 
主な役職:国土交通省・社会資本整備審議会委員林野庁・林政審議会委員・環境省・中央環境保全審議会臨時委員。環境省・政策評価委員会検討員。文部科学省・中央教育審議会臨時委員など。
著書:「アメリカの環境保護運動」(岩波新書、90年)、「レモンジュースの雨」(共著、築地書館、90年)、「Only One Earth」(桐原書店、91年)、「Green Issues」(桐原書店、93)「はじめてのシエラの夏」(翻訳・ジョン・ミューア著、宝島社、93年)
「地球救出作戦」(翻訳・チルドレン・オブ・ザ・ワールド著、小学館、94年)
「林野庁解体論」(洋泉社、97年)「Echoes of the Environment」(鶴見書房、99年)
「自然学校をつくろう」(山と溪谷社、2001年)など多数。