著者 岡島 成行


 岐阜県の板取川上流で久しぶりのシャワークライミングを楽しんだ。梅雨がようやく明け、青空が広がる気持ちの良い日だった。
 大阪外国語大学大学院の学生7人(うち女性5人)と一緒に、岐阜県立森林アカデミーの高田研さんとODSSアウトドアサポートシステム代表の北川健司さんに案内していただいた。大学院の授業の一環で、この一泊二日の実習を受講すると、環境教育論の2単位と自然体験活動推進協議会(CONE)のリーダー資格が取得できる。月一回の授業(3時間)を4回受け、理論を学んだ後の一泊二日の実習だ。前日は美濃市の「うだつの町並み」をタウンウオッチング、自然と文化、伝統などを学んだ。

 シャワークライミングはまず、ウエットスーツを二枚重ねで着用し、その上にフリース、さらにヤッケ、そしてライフジャケット、沢登り用のシューズなど大変な装備を身につける。北川さんは「川の水は冷たい。いつのまにか手足がしびれて危険な状態になる。そのためにしっかりと装備を身につける」と説明してくれた。
 川に入って滝の中に入り込んだり、岩からジャンプしたりしているうちに、唇が青くなる学生がいた。相当冷たかった。それでも学生たちは滑滝を勢いよく頭からすべり降りたり、滝をよじ登ったりと軽い身のこなしだった。

 ほとんどの学生がこのような遊びは初めてだった。だが、全員「気分は爽快」と喜んでいた。北側さんは最後に、「この渓谷では私たちが危ない岩や流木をていねいに取り除き、頭から滑り込んでも安全なことを確認している。決してほかでは真似しないように」と言い聞かせた。安全管理がきちんとされているので誰でも楽しむことができるのだ。
 できるだけ早く、楽しく遊べる安全なシステムを作りたい。全国レベルでの指導者の育成、設備の充実など、手当てしなければならないことは山ほどある。誰かがどこかで損得抜きに踏ん張らないとできない。仲間のみなさん、応援してくださるみなさん、もう後には引けないですね。



■バックナンバー
自然体験の夜明け
自然体験活動のすすめ
自然体験に追い風が吹いてきた
幼児と自然体験
若者たち
私の原風景
シャワークライミング
思い出の黄金色のトンネル
ジャック・モイヤーさんのこと
ジャック・モイヤーさんを悼んで
環境教育推進法が動き出す
NGOから見た環境教育推進法
冬山
都市と農山漁村の交流を考える

■著者紹介

岡島 成行(おかじま しげゆき)
環境ジャーナリスト、大妻女子大学ライフデザイン学科教授教授、(社)日本環境教育フォーラム専務理事、自然体験活動推進協議会代表理事 など。
1944年1月 横浜市生れ。上智大学山岳部OB
読売新聞解説部次長をへて現職。 
主な役職:国土交通省・社会資本整備審議会委員林野庁・林政審議会委員・環境省・中央環境保全審議会臨時委員。環境省・政策評価委員会検討員。文部科学省・中央教育審議会臨時委員など。
著書:「アメリカの環境保護運動」(岩波新書、90年)、「レモンジュースの雨」(共著、築地書館、90年)、「Only One Earth」(桐原書店、91年)、「Green Issues」(桐原書店、93)「はじめてのシエラの夏」(翻訳・ジョン・ミューア著、宝島社、93年)
「地球救出作戦」(翻訳・チルドレン・オブ・ザ・ワールド著、小学館、94年)
「林野庁解体論」(洋泉社、97年)「Echoes of the Environment」(鶴見書房、99年)
「自然学校をつくろう」(山と溪谷社、2001年)など多数。