著者 岡島 成行


 昨年成立した環境教育推進法、正確には「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」に対する国の基本方針作りが始まった。法律では、国が基本方針を作り、地方自治体が地域の特性に応じた計画を作って公表することになっている。

 国が基本方針を作る時には広く一般から意見を求めることになっており、5月10日からそのための懇談会が始まった。
 この法律の趣旨は国も地方自治体も事業者も国民も、そして民間団体も協力して環境保全に当ろうということだが、その中でもとりわけ民間団体(NGO,NPO)の動きに注目している。法律の行間には民間団体を支援をしようじゃないか、という意図が読み取れる。
 しかし、条文だけを読む限りでは、大枠が決まっているだけで、具体的なものとしては国の役所が人材認定をすることと、地方自治体が拠点整備つくりに協力することの二つだけしか書かれていない。ちょっと抽象的な法律なので、どのように運用するのか、その点をもっと明らかにするために、基本方針が必要になる。

 この法律は、意欲的に読めばかなり使える法律であり、何か与えてもらえるのではないかという期待が強い場合には、失望する法律といえる。だから、積極的に読み込んでいく必要がある。言い換えれば、都合よく解釈して突き進めばいい。
 人材育成はまさに自然体験活動推進協議会(CONE)が行ってきたことをオーソライズする形になるだろうし、拠点整備は地域CONEの活動舞台となりうる。
 法律の範疇は環境教育全般だが、自然体験以外の分野では、まだ人材育成をしっかりと実践しているところは少ない。そのため、自然体験の分野がかなり先行する事になるかもしれない。拠点整備は様々な環境団体が雑居する形になるだろうが、自然体験派が多様な環境教育団体、グループと接する良い機会になる。

 今回は総合的な意味あいを書きましたが、私も懇談会の委員なので、次回からは、懇談会の内容をていねいに書いていきたいと思っています。



■バックナンバー
自然体験の夜明け
自然体験活動のすすめ
自然体験に追い風が吹いてきた
幼児と自然体験
若者たち
私の原風景
シャワークライミング
思い出の黄金色のトンネル
ジャック・モイヤーさんのこと
ジャック・モイヤーさんを悼んで
環境教育推進法が動き出す
NGOから見た環境教育推進法
冬山
都市と農山漁村の交流を考える

■著者紹介

岡島 成行(おかじま しげゆき)
環境ジャーナリスト、大妻女子大学ライフデザイン学科教授教授、(社)日本環境教育フォーラム専務理事、自然体験活動推進協議会代表理事 など。
1944年1月 横浜市生れ。上智大学山岳部OB
読売新聞解説部次長をへて現職。 
主な役職:国土交通省・社会資本整備審議会委員林野庁・林政審議会委員・環境省・中央環境保全審議会臨時委員。環境省・政策評価委員会検討員。文部科学省・中央教育審議会臨時委員など。
著書:「アメリカの環境保護運動」(岩波新書、90年)、「レモンジュースの雨」(共著、築地書館、90年)、「Only One Earth」(桐原書店、91年)、「Green Issues」(桐原書店、93)「はじめてのシエラの夏」(翻訳・ジョン・ミューア著、宝島社、93年)
「地球救出作戦」(翻訳・チルドレン・オブ・ザ・ワールド著、小学館、94年)
「林野庁解体論」(洋泉社、97年)「Echoes of the Environment」(鶴見書房、99年)
「自然学校をつくろう」(山と溪谷社、2001年)など多数。