第3回 著者 杉原 五雄


平成15年度 『飯田自然体験学習』レポート
2003年10月22日~10月24日(2泊3日)

間伐体験
 大平宿に戻る途中、青空の部分が多いのに一部の雨雲から雨が落ちてくる。風も出てきた。きっと寒冷前線が通過しているのだろう。大平宿に着いてバスを降りた時にはすっかり天候は回復し青空が広がっていたが、風が強く急に寒さを感じる。聞くところよるとついさっきまで、霰が降っていたとのことである。
 防寒のしたくをさせて、すぐ間伐体験に入る。間伐の指導者は昨年と同じ寺岡さんである。何度かシンポジウムでお会いしている方なので気心が知れている。寺岡さんから、できれば森に住む大型の動物の頭蓋骨の標本などを、子どもたちに見せて上げようと思っている、との提案をいただいたが、はたしてそんな時間があるだろうかと心配になる。

 昔、木を伐るために使っていた大きな鋸を見せていただいてから間伐の仕方などの説明を聞き、いよいよ実際の樹木の伐採が始まる。計画では3~4本伐採する予定だったが、風が強く本来ならば伐採する天候でないうえに、時間的なこともあり、今日は一本だけになった。
 しかし、この一本はかなり太い。昨年は混みすぎた林の中で伐採したので、木が一度に倒れなかったが、今年は民家の近くの倒れやすい樹木だったので、臨場感あふれる体験となった。

「ウォー」と歓声があがった
 安全のため、あらかじめ倒す方向を決めてロープをかけてから、一人一人少しずつ樹木に鋸を入れていく。まず受け口を作り、次に反対側に切り口を作っていく。最後に担任の澤田教諭が鋸を入れると、樹齢約35年直径20cm高さ30mほどの巨木が音を立てて倒れていく。
 誰もが『ウオー』と叫んだ一瞬。凄い迫力である。昨年は周りの樹木と絡んでしまったが、今年は凄い音を立てて地面に叩きつけられた。
 間伐体験の時間はわずか1時間半程度。寺岡さんとそのお手伝いの方々には大変申し訳なく、また残念なことながら一部割愛して、林さんの樹木のプログラムに移ることにした。

林さんの樹木教室
 林さんは詳しい資料を作ると同時に、昨年の経験を生かして、主に葉っぱ探しを中心にしたネーチャーゲームを計画してくださった。大平宿の中央部に、通りを遮るようにアキグミの樹木がある。そのアキグミの実を食べることから、彼の学習は始まった。
 今では美味しいお菓子が何時でもどこでもお腹一杯食べられることに、誰一人疑問を持つものはいないが、その昔ぎりぎりの生活を余儀なくされた、この大平宿の子どもたちにとって格好のおやつだったアキグミの味を、現代の子どもたちはどう感じたのだろう。
 その時は好奇心で食べたが、きっと東京に戻ったら、見向きもしなくなるのではないだろうか。



■バックナンバー
私の実践している自然体験活動 第1回
私の実践している自然体験活動 第2回
私の実践している自然体験活動 第3回
私の実践している自然体験活動 第4回
私の実践している自然体験活動 第5回
奥多摩での2日間~中幡幼稚園『奥多摩宿泊自然体験活動』レポ-ト~ 第1回
奥多摩での2日間~中幡幼稚園『奥多摩宿泊自然体験活動』レポ-ト~ 第2回
私の実践している自然体験活動 第6回
私の実践している自然体験活動 最終回
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(1)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(2)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(3)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(終)

■著者紹介

杉原 五雄
1943年京都生まれ。富士電機通信製造(株)を経て、横浜国立大学教育学部卒業。
1968年東京都の小学校教員となり、現在、渋谷区立中幡小学校校長。
著書に「畑と英語とコンピュータ」などがある。
http://village.infoweb.ne.jp/~sugihara/main.htm