第5回 著者 杉原 五雄


軌道に乗った飯田自然体験学習
次年度計画の申請
 第一回目の『飯田自然体験学習』(2000年)が大成功裏に終わると、私は区教育委員会の教育長宛に、前回このサイトで紹介した内容を基盤とした詳細な報告書と来年度の申請計画書を提出した。これから自然体験学習を行なおうとする方の参考のためにその内容を掲載しておく。

[自然体験学習の主旨]
 本校は、区内というより都内でも屈指の広さの『畑』を利用した植物の栽培活動等を通しての命の教育、現代のような情報社会を生き抜くための『コンピュ-タ』を駆使した情報教育、そして『英語』という言葉で表現しているが、広い視野で考える事のできる子どもの育成を国際理解教育に求め、『畑と英語とコンピュ-タ』をキ-ワ-ドにして『総合的な学習』の研究推進校として、研究を来年度その成果を発表する。
 今年度試行した『飯田自然体験学習』では、既に提出している報告書の通り大きな成果を得られた。この成果を踏まえ、さらに充実発展させるために、来年度もこの『自然体験学習』を継続させたいと考えている。

[目的]
(1)豊かな自然の中での集団生活を通して、協力や自立の精神を育成する。
(2)自分たちで発芽させ育てたドングリの苗を植樹することにより、今年度から始めた『中幡の森』作りを引き継ぐと同時に、豊かな人間性を育てる。
(3)自然からもたらされる豊かな素材で、自分たちの作品を創造する喜びを体得し、その過程で自然の偉大さを感じ取り自然に対しての敬虔な考え方や態度を養う。

[参加学年]
 6年生 53名 (引率教員は6名を予定している)

[体験学習場所]
 長野県飯田市『大平宿』を宿舎とし、その周辺で活動予定。

[日程など]
 9月下旬から10月下旬の、3泊4日

[費用など]
今年度の試行では、交通費や宿泊費は飯田市の提供を受けたが、来年度はバス借り上げ費用や看護士同行などの予算的な支援をお願いしたい。

[来年度考えている自然体験学習の内容]
第1日目-学校から出発し途中昼食後、飯田市大平宿へ到着する。炊飯などの体験活動や星の観察などの学習を計画している。
第2日目-大平宿を基点にして、木こり体験や豊かな自然素材を生かした芸術的な活動体験を考えている。食事は全て自分たちで作らなければならないので、蕎麦打やうどん作りなどの『食』を中心にした体験も重要である。
第3日目(2泊3日の場合はこの部分はできない)-『すりこぎ山』や『黒川渓谷』など、近くにはバリエ-ションに富んだハイキングや登山などのコ-スがあるので、これらを利用した運動的な体験学習を考えている。
第4日目(第3日目)-今年度植樹した『中幡の森』に行き、ドングリの成長の様子を観察し、自分たちの育てたドングリの苗を植樹し、帰校する。

学校中に歓声が沸き起こる
 その年の末、区教育委員会から来年度の『飯田自然体験学習』を認める。ただし申請通りの3泊は他の学校とのバランスから無理だが、2泊の予算措置と往復のバスの費用を予算化する。といううれしい知らせが届いた。
 その日学校中が盛り上がったことはいうまでもない。3泊はしたかったが、ここは我慢である。数年の実績を残して改めて申請することにして、早速来年度の計画を立てはじめた。

 新年度、正式に予算令達があり、看護婦まで引率者に加えられることが分かり、いよいよ『飯田自然体験学習』が軌道に乗ったのである。
 昨年の『飯田自然体験学習』は、いわば飯田市の好意に甘え、いろいろなプログラムを行なったが、2泊3日では内容が多すぎた、という反省にのっとり、今年度(2001年)は、もう少しゆっくりした日程で自然体験をさせる計画を立てた。

 その年の6年生が、『総合的な学習』では、環境とエネルギ-というテ-マで取り組んでいたので、この飯田での体験活動をその一環として位置づけて、飯田で拾ってきたドングリを発芽させ、その苗を植樹すると同時に森林の役割をより理解するために、間伐体験などもする計画を立ててくれた。

中幡の森の創造
 ねらいとして、次の項目を挙げてはっきりとしたものになった。ここに『中幡の森創り』が具体的な本校の教育のねらいとして定着したのである。
(1)豊かな自然の中での集団生活を通して、協力や自立の精神を育成する。
(2)豊かな自然環境に直接触れることによって、自然の美しさや良さに気づくとともに、自然を大切にする心を養う。(恵まれた環境のもと、動植物の観察や星や月などの天体観察等、理科の生きた学習を行い、豊かな自然観・科学観を育てる。)
(3)自分たちで発芽させ育てたドングリの苗を植樹することにより、昨年度から始めた『中幡の森』作りを引き継ぐと同時に、豊かな人間性を育てる。
(4)文明から離れた場所で、食住環境まで全て自分たちの力で確保し、生活する体験を通して、真の生きる力の育成をはかる。
(5)自然からもたらされる豊かな素材で、自分たちの作品を創造する喜びを体得し、その過程で自然の偉大さを感じ取り自然に対しての敬虔な考え方や態度を養う。

 これで本校独自の自然体験学習を継続できる基礎が固まった。新6年生は、担任を中心に『中幡の森の創造』を、より意義のある学習にするために、『森林』をテ-マにしたカリキュラムの整備に入り、今年も昨年と同じような時季に行なうことになった『飯田自然体験学習』の準備を着々と進めていった。



■バックナンバー
私の実践している自然体験活動 第1回
私の実践している自然体験活動 第2回
私の実践している自然体験活動 第3回
私の実践している自然体験活動 第4回
私の実践している自然体験活動 第5回
奥多摩での2日間~中幡幼稚園『奥多摩宿泊自然体験活動』レポ-ト~ 第1回
奥多摩での2日間~中幡幼稚園『奥多摩宿泊自然体験活動』レポ-ト~ 第2回
私の実践している自然体験活動 第6回
私の実践している自然体験活動 最終回
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(1)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(2)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(3)
平成15年度『飯田自然体験学習』レポート(終)

■著者紹介

杉原 五雄
1943年京都生まれ。富士電機通信製造(株)を経て、横浜国立大学教育学部卒業。
1968年東京都の小学校教員となり、現在、渋谷区立中幡小学校校長。
著書に「畑と英語とコンピュータ」などがある。
http://village.infoweb.ne.jp/~sugihara/main.htm