- 第1回 -  著者 星野 敏男


 いま、こどもたちの間で、本物の自然体験や生活体験が極端に少なくなっています。そのため、本来であれば、友だちとの遊びや日常の生活の中で身につけていくべき、「自然」「仲間」「友情」「努力」「おもいやり」といった、生きていくために重要な多くのことがらについて、「知識として知っているが、体験や身体を通して実感としては、何もわかっていない」というこどもたちが増えています。

 将来に向かって、青少年が「生きる力」を身につけていくためには、これらの自然体験や生活体験、さらには人と人とがかかわり合うナマの直接的体験の不足を補うことがきわめて重要です。
 「生きる力」とは、このような体験や活動を通して主体的に考えたり、あるいは、試行錯誤の中で自ら解決策を見いだしていくプロセスにおいてこそはぐくまれるものです。これは決して青少年ばかりの問題ではありません。
 かつては、いつでも、どこでも、だれでもが日常生活の中で体験できたこれら体験の場が、現代では極端に少なくなっています。そのため、誰かが意図的、計画的に青少年を含めた多くの人にさまざまな体験の機会を提供する必要があります。
 キャンプなどの自然体験活動を通して行われる、いわゆる野外教育には、学校の教室という限られた空間では不可能な、野外ならではの教育の可能性に満ちあふれています。
 各地で行われている自然体験活動は、活動を単なる活動だけで終わらせるのではなく、青少年のための教育へと発展させたり、参加者の主体的な、気づきやまなびへと発展させる内容で考えられています。直接的な体験を通して、青少年のさまざまな学びへと発展させることが可能な自然体験活動がいま注目されています。


■バックナンバー
なぜ、いまなぜ自然体験が必要なのか(1)
なぜ、いまなぜ自然体験が必要なのか(2)
なぜ、いまなぜ自然体験が必要なのか(3)
学校教育と自然体験(1)
学校教育と自然体験(2)
学校教育と自然体験(3)
学校教育と自然体験(4)
学校教育と自然体験(5)
学校教育と自然体験(6)

■著者紹介

星野 敏男(ほしの としお)
1951年栃木県生まれ。
明治大学 教授
東京教育大学卒業。筑波大学大学院で野外活動を研究。
野外教育全国会議実行委員長、日本野外教育学会理事、日本キャンプ協会理事などを務める。自然体験・野外教育の研究分野では日本の第一人者のひとりとして著名。
著書、論文多数。

■関連情報
社団法人日本キャンプ協会