![]() ![]() ![]() 第11回 「大雪山系を考える ③」 著者 木村 宏
話の結びに、二つの謎を提起してみたい。これまで「大雪山」という表記をしてきたが、実は大雪山国立公園のエリア内に、大雪山という山はない。エリア内の50近い山々の総称を大雪山と呼んでいるのだ。大雪山系とか大雪山塊などと表現しているのが一般的であろう。 ではなぜ大雪山はないのだろうか。調べてみると、なかなかこれこそが真実、という説が見つからない。かつてアイヌの人たちが、旭岳を「ヌタプカウシペ」と呼んでおり、これが大雪山(=旭岳)の起源ともいわれるが、このアイヌ語の意味も「一段高くなった山の上に広い湿原(nutap)があって、更にその上に聳えている山」と解釈すればなんとなくその意味が分かりそうだ。が、「川端の平らになっているところ、川縁の野原」とか「河の廻流する所に立って居る山」となればまさに大雪山系のこと言っているような気もする。しかも大雪山がなぜ旭岳と読み替えられたのか、釈然としない。このことを探求しさらに綴ればとても長編になりそうなので、今回は諸説ありという便利な言葉でまとめてしまおう。 ![]() ![]() これらの謎解きは麓の東川町の複合交流施設「せんとぴゅあⅠ」にある「大雪山ライブラリー」に収蔵されている大雪山に関する1,500点余りの古書、文献、写真等を頼りにゆっくり検証してもらえれば、きっとすっきりするのではないか。ぜひ足を運んでいただきたい施設である。 本号では大雪山についてその利用状況や、課題について述べてきた。9月の初雪や日本一早い紅葉と、人を寄せ付けない厳寒の冬、そして高山植物が咲き乱れ登山の苦労を感動にかえてくれる神の庭。周辺の市町では温泉が湧き、観光客がその雄姿を眺めて楽しんでいる。これほどまで有名でかつ多くの人に愛される大雪山。しかし幻の山「大雪山」である。しかも呼び名も曖昧な「大雪山」。このミステリアスな山域に迷い込んではいかがだろうか。アウトドアの聖域「大雪山」。あなたはたいせつ派?だいせつ派? ※参考: 山名考 https://amaimonoko.at-ninja.jp/h-mtdata/hoka/sanmeko/taisetsu/taisetsu.htm 環境省:大雪山国立公園 https://www.env.go.jp/park/daisetsu/data/tozandoriyosya2016.html 大雪山・山守隊 https://www.yamamoritai.com/ (いずれも2022.5.5閲覧) ■バックナンバー ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ■著者紹介 木村 宏(きむら ひろし) 東京都生まれ 北海道大学 観光学高等研究センター 教授 信越トレイルクラブ 代表理事、日本ロングトレイル協会 常務理事、日本トレッキング協会 理事 大学卒業後ホテル・リゾート開発会社の勤務を経て、長野県に移住し宿泊施設の経営の後、飯山市の観光推進組織において滞在型の自然体験施設、温浴施設、道の駅、新幹線飯山駅内の観光施設やアクティビティーセンターの立ち上げに関わるなど施設運営や観光まちづくりに取り組む。信越トレイルやみちのく潮風トレイルの立ち上げにも関わり、ロングトレイル、トレッキングの普及活動にも従事する。2016年から現職。 |