![]() ![]() ![]() 第9回 「大雪山系を考える ①」 著者 木村 宏
北海道を代表するアウトドアフィールドの代表格は、「大雪山」と言って過言ではないであろう。地理的には北海道のほぼ中央に位置し、日本最大の面積を誇る大雪山国立公園として、北海道の真ん中に広がる大屋根-カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)-と称されている。 溶岩台地を基盤とする高山帯の上に火山が聳え、高山植物の花畑や針葉樹の森や針葉樹と広葉樹が混生する植生が広がり、それらに依存してヒグマやナキウサギ等の希少な動物が生息している。大雪山国立公園は北大雪、表大雪、東大雪、十勝岳連峰の4山域の総称で、面積は23万ヘクタールにも及ぶ。自然景勝地や温泉地が点在する裾野周辺を一周するのに車でも丸一日かかる(350㎞)。まさに北の大地の大自然郷である。 ![]() 雪解け後の6月下旬から9月の中旬までは、縦走を楽しむハイカーでにぎわいを見せる。旭岳や層雲峡・黒岳ロープウエイを使い、カムイミンタラの縦走をスタートし、目的のポイントを目指し、避難小屋を2泊ないしは3泊して大雪山を堪能、最後はやはりいで湯につかり帰路に就くというパターンが多い。もちろんそれ以上の行程を組むハイカーも少なくない。 最近ではカラフルな装備やウエアをまとった女性ハイカーも多くなっている。希少な動植物を目当てに、そして何より雄大な北の大地の景色を求めやってくるハイカーは後を絶たない。コロナ禍前の状況を見れば訪日外国人のハイカーも急増していた。2020年の入山者は環境省が設置した熱感知式カウンターでの計測値によれば、黒岳登山口で22,000人程度、旭岳、雲見の池付近で21,000人程度と大雪山系には相当数のハイカーが歩いていることがわかる。 近年、大雪山ハイカーの増加現象を捉えるうえで、問題になっていることがある。未熟なハイカーによる遭難や、希少植物の盗掘、し尿処理、山小屋(避難小屋)のキャパシティオーバーなど、ほかの地域も同じ問題を抱えていることではあるが、ご多分に漏れずしばしば議論が行われている。特に登山道の荒廃は大きな問題といえるだろう。 ![]() 登山道のパトロールやトイレ問題を解決する議論や作業、健全な環境を守るための啓発活動など、費用や人手のかかる様々な問題解決のための活動はエンドレスに続く。 ■バックナンバー ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ■著者紹介 木村 宏(きむら ひろし) 東京都生まれ 北海道大学 観光学高等研究センター 教授 信越トレイルクラブ 代表理事、日本ロングトレイル協会 常務理事、日本トレッキング協会 理事 大学卒業後ホテル・リゾート開発会社の勤務を経て、長野県に移住し宿泊施設の経営の後、飯山市の観光推進組織において滞在型の自然体験施設、温浴施設、道の駅、新幹線飯山駅内の観光施設やアクティビティーセンターの立ち上げに関わるなど施設運営や観光まちづくりに取り組む。信越トレイルやみちのく潮風トレイルの立ち上げにも関わり、ロングトレイル、トレッキングの普及活動にも従事する。2016年から現職。 |