■ユキノシタ科・スイカズラ科の2大勢力
正真正銘の「ウツギ」という木はあるのでしょうか? 正真正銘かどうかは分かりませんが、単にウツギ(別名ウノハナ)という名の木は存在します。ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木で、身近な山野に多く見られる木なので、最も正統なウツギに相応しいと言えます。同じユキノシタ科にはマルバウツギ、ヒメウツギ、ノリウツギ、ガクウツギなどがあるように、ユキノシタ科は「ウツギ」と名の付く木をたくさん含む大派閥です。この中のノリウツギ、ガクウツギ、コガクウツギは、アジサイと非常に近い仲間で、花の形もガクアジサイと似ています。アジサイは「ウツギ」の名こそ付かないものの、やはり茎の中は立派な空洞になります。
ユキノシタ科に対抗する勢力にスイカズラ科があります。スイカズラ科はタニウツギ属とツクバネウツギ属という2軍を備え、両軍とも多くの「ウツギ」を含んでいます。ニシキウツギ(二色空木)やハコネウツギは、白とピンクの2色の花を咲かせる(正確には一つの花が白からピンクへ変わる)ため人気があり、庭木にも多く植えられています。また、ツクバネウツギの仲間から作られた園芸品種ハナツクバネウツギ(別名ハナゾノツクバネウツギ)は「アベリア」の名で親しまれ、こちらも公園などに多く植えられています。
ユキノシタ科とスイカズラ科の2大勢力以外にも、「ウツギ」と名の付く木はいくつかの科に点在しています。何ウツギと何ウツギが同じ仲間なのか、それをしっかり頭の中にたたき込んでおくと整理しやすくなります。花の時期も初夏のものが多いので、今咲いている「ウツギ」は何ウツギか確認してみましょう。
■ウツギ類を見分ける特徴を探そう
仲間は違うけど、いろいろあるウツギ類。これらをうまく見分けるポイントは何でしょうか。幸いなことに、ウツギ類にはいくつかの共通点があります。一つめは、ほぼすべてが落葉低木であること(高木はない)、二つめは、コゴメウツギを除くすべての葉は対生(たいせい)につくこと、三つめは、コゴメウツギとミツバウツギを除くすべての葉は切れ込みのない単葉(たんよう)であることです。つまり、切れ込みのない単葉が対生する落葉低木を見つけた場合、枝を折ってみて中が空洞だったらウツギ類が有力と考えられます。ただし、若い枝は中が詰まっていることもあるし、「ウツギ」と名が付かない木でも空洞になっている種類もあるので注意が必要です。
葉の大きさ順に見てみましょう。
● 最も小さな3~4cm程度の葉を持つのはツクバネウツギ属の仲間とコガクツウギ。ツクバネウツギの近縁種にはコツクバネウツギ、オオツクバネウツギなどもあります。コガクウツギは西日本で多く見られる木で、葉は細長い形です。
● 続いておよそ5~7cmぐらいの葉を持つのがウツギ属の仲間、バイカウツギ、ドクウツギ。ウツギとドクウツギはかなり細長い形ですが、バイカウツギやマルバウツギは丸みを帯びた卵形です。主に北日本に分布するドクウツギは、猛毒を含む植物としても知られています。
● さらに細長い葉を持つのがフジウツギ。10~15cmを超える細長い形で、よく庭木にされるブッドレア(フサフジウツギ)もこれと同じ仲間です。
● そして最も幅広い葉を持つのはタニウツギ属の仲間とノリウツギです。時に15cmにもなるハコネウツギやノリウツギの葉を最大として、ニシキウツギ、ヤブウツギ、タニウツギなどの葉も10cm前後の大きさになります。
●ウツギ類の中で特殊な葉を持つのがコゴメウツギとミツバウツギです。コゴメウツギは葉に浅い切れ込みがあり、林内に群生して生えるので一見キイチゴの仲間と見間違えそうですが、トゲはありません。ミツバウツギは名の通り3枚ワンセットの葉(三出複葉:さんしゅつふくよう)を持ち、若葉やつぼみは山菜として食べられます。
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ツクバネウツギ
最も葉が小さいウツギ類
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ウツギ
鋸歯はほとんど尖らない
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フジウツギ
かなり細長い形
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タニウツギ
幅広い形。山地に多い
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ノリウツギ
葉柄が長い。山地に多い
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コゴメウツギ
唯一切れ込みがあって互生
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ミツバウツギ
3枚ワンセットの葉
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