- 第7回(最終回) -  著者 椹木 喜雄


『大型カメラなどの特殊カメラ(カメラ付携帯電話など)あれこれ“芸術カメラ?”』

主に大型カメラ解説をしていきます。大型カメラを最近見なくなりました。昔はカメラといえば、蛇腹の付いたカメラで撮るものでした。報道カメラマンもマグネシュームをストロボにして、大型カメラを手持ちで撮影していたようです。
古い映画などによく出てきますよね。大型カメラのサイズも4×5(シノゴ)といものが一般的で手のひらくらいのフィルムサイズです。さらに大きなものでは、8×10(エイトバイテン)があり、それ以上もあります。単位はインチです。ほとんどスタジオで使われていまして、建築写真で建物の歪を補正しての撮影に使われます。

大きなカメラを好んで使う芸術タイプの写真家の方もいて、高画質にこだわって大きなカメラを担いで、山登りをしながら撮影している写真家の方々も、意外に多いのです。カメラ本体が「木」で出来ている軽量なものもあり、レンズも小型の物が存在することから、ある程度機動力もあります。
オートによる撮影は出来ませんが、以外に難しくなく、フィルムコストさえ安ければ、もっと使いたいカメラです。デジタルカメラも存在しますが、こちらは、完全なスタジオカメラです。無理も出来ますが、画素数が一億を超えるものあり、芸術作品や貴重なものの保存画像として、デジタル化する仕事に使われていたりもします。
デジタル部分の値段も超高級車が買える値段のものあります。その点、昔からのフィルムカメラは、高性能の35ミリ一眼レフよりも、安くなることもあります。本体が数万円から買えるのです。ここでは、デジタルカメラとフィルムカメラという分け方はせず、それぞれ込みで、解説させていただきます。
また、対照的に携帯電話のカメラ機能や、ポラロイドカメラなどにも触れて説明したいと思います。

<大型カメラ>
基本的は、蛇腹のついたカメラのことです。レンズをつけてピントグラスで構図とピントを合わせます。レンズを閉じて、ピントグラスをはずし、フィルムホルダーを入れて、フィルムホルダーの引き蓋を引いて、シャッターを切ります。
シャッターを切ればそれで、写ってしまう他のカメラとは違い、面倒な操作が必要で、撮りたいイメージや構図を撮影前から決めないと、いつまでたっても写真が撮れません。その工程を楽しめるのが、このカメラのいいところです。
フィルムは、ホルダーに一枚ずつ暗室(暗箱)でつめます。基本的にロール上のフィルムではないため一枚撮影したら、次のフィルムホルダーを用意します。自動巻上げといった便利な機能はありません。
デジタルの場合は、フィルムの代わりに画素子の付いたものをカメラにさしこみます。パソコン画面を見ながら撮影することになります。
3. ピントグラスに映し出される映像は左右逆、上下逆です。慣れるまでコツが必要です。
4. フィルムもデジタルも非常に高画質な映像が得られます。ピントや歪をコントロールできますので、じっくり撮影するには適しています。
5. フィルムもデジタルも画像の保管方法は、工夫しなければなりません。どちらも単位は違いますが、サイズが大きいのです。
6. カメラの構造は、歴史のあるもので、完成されています。
7. 構造上、ブローニーフィルム(中型カメラのフィルム)を使うことが出来ます。フィルムのかさ張りを減らすことと、コスト削減に有効です。(別途、フィルムホルダーが売っています。)
8. 必ず三脚を使っての撮影になります。
9. フィルムは、最近カメラ専門店でもあまり置いていないことがあります。フィルムの種類も35ミリカメラなどと比べると少ないです。
10.少量生産のため、機材が壊れたときなど修理のため、部品を取り寄せたりするに時間がかかることもあります。


<その他のカメラ(カメラ付携帯電話、ポラロイドカメラ)>

1. 手軽に撮影できるカメラとしては、一番ではないでしょうか。
2. いつでも手元にあるので、いざという時の記録に向いています。
3. 撮ったその場で見ることが出来ます。特にポラロイドカメラは、プリントをその場でプレゼント出来ます。
4. 最近の高機能なカメラ付携帯電話は、操作が紛らわしいものがありますが、とにかく情報を流すスピードは、最速です。画質もそこそこなものもあります。写真を絵としてではなく、情報として扱うとこの手のカメラを生かせます。
5. 特に、カメラ付携帯電話は、持ち運びに困りません。というよりも、必ず携帯することを目的に作られています。


<総合的にみると・・・>
1.こだわりのカメラが、大型カメラだといえます。手間を惜しんで撮影するスタイルは、時代に反していますが、それが、最大の特徴になっています。その上超高画質です。
2.最終的なシステムの重量は、自分で選んでください。フィルム以外は、高性能35ミリカメラよりも軽くすることが可能です。
3.オート機能は、全くありません。露出もメーターが必要です。その分カメラはとてもシンプルに出来ています。カメラ付携帯電話も、ポラロイドカメラも、非常にシンプルです。
4.全く性格の違うカメラが、大型カメラとカメラ付携帯電話ですが、大型カメラを乱暴に扱うとカメラ付携帯電話以下の写真しか得られません。逆にカメラ付携帯電話が、すばらしい映像を生む可能性を持っています。

★ どんな人が大型カメラを使えばいいのでしょうか?

 これは、私独自の考えです。みなさんイメージしてください。私の考えがすべてではありません。このクラスのカメラは、大きなフィルムが使えるとう、画質にかかわる部分に有用性があります。デジタルカメラもレベルが違いすぎます。カメラ操作の基本は同じです。カメラ操作に時間がかかりますから、風景写真でもかなりの予測が必要です。超高画質の世界が堪能できますので、それに見合った結果が必要な場合は、迷うことなく大型カメラを使ってください。
目的がしっかりしていると最高のものが得られます。カメラ付携帯電話やポラロイドカメラは、簡単に使えてしまう結果、写真としては甘くなりがちです。情報カメラとしてはすばらしい能力を持っていますが、写真として完成させようとすると、安易にシャッターを切ってはいけません。大型カメラと小型カメラのいいところへ通じるような心構えで、撮ると、大型カメラで撮影した写真をしのぐ能力を秘めています。写真の良し悪しは、決してカメラやフィルムが持つ画質だけではありません。撮影前の心構えで変わるのです。

(大型カメラ)
1.超高画質な写真を残したい人。
2.撮影に頑固とした目的がある人。
3.ゆっくりと撮影したい人。
4.カメラのシステムの組み方により、時間をかけて写す方法や、機動力優先に出来たりします。そのシステムを組むことが出来る人。
5.カメラが荷物の半分以上となってしまうこと覚悟出来る人。
6.印刷や大きくプリント(全紙以上や大型ポスター)する必要がある人。
7.写真の仕上がりにこだわりがある人。

(カメラ付携帯電話やポラロイドカメラ)
1. いつでもどこでも気軽に撮影したい人。
2.その場で、情報を分かち合いたい人。
3.機動力と情報伝達力を最大限利用したい人。
4.感動を表現することに、道具にこだわらず、使えるものは使う人。

★ カメラの補助道具は、どうでしょうか?

1. 大型カメラの補助道具は、基本的に自分でカメラシステムを組んでいく必要があるので、すべてが補助道具になってしまいます。自分に合ったカメラを作り上げることが可能です。しいて言えば、カメラ本体以外の補助道具で絶対必要なものは三脚です。出来れば大型のものがいでしょう。
2.ブローニーのフィルムホルダーや、水準器があると撮影範囲が広がるでしょう。
3.水中ハウジングは、基本的に無いと思ってください。
4.カメラ付携帯電話やポラロイドカメラは、基本的に補助道具はありません。予備のバッテリーや記録メディアがあると便利です。
5.フィルムカメラは、フィルムの保管のための道具が必要です。たくさん撮影すると保管場所も困ります。ポジフィルムの場合、フィルム専用ビュワーが必要です。
6. 大型カメラは、基本的に動くものを追いながらの撮影は出来ないでしょう。

★最後にアウトドアでは、大型カメラはどうでしょうか?

1.山登りなど体力がいりますが、このクラスのカメラも覚悟が必要です。着替えや食料などを抱えなければならない上、カメラも機材も10キロ以上なることもあります。危険ですからよく考えて使うようにしましょう。フルシステムを持って行く場合は、アシスタントが必要です。一人で撮影出来ないこともあるのです。
2.自然を映像としてとらえる能力は、かなりのものがありますが、レンズの制限などあり撮影能力が問われます。芸術作品を完成させるような気持ちで取り組むと、自然をじっくり理解できるでしょう。条件がそろえば最高の写真が写せます。
3.本格的な撮影能力を持っていますが、あくまでも、そのカメラセットを持って移動できることが条件になります。それなりに覚悟が必要です。三脚もすべての場面で使うことになります。機材は車で移動が原則となることも多いでしょう。
4.慌てて撮影しても、内容の薄い写真を作りやすくしてしまいます。ゆったりとした気持ちで挑めるなら最高のカメラです。重量も少なくすることが可能ですから、アウトドアでは、無理をしないでください。
5.特殊な撮影は、35ミリカメラにはかないませんので、じっくり撮影できる環境でお使いください。
6.風の影響を受けやすく、山頂など天気の荒れるところでは、使いにくいです。
7.情報の伝達スピードは、カメラ付携帯電話やポラロイドカメラに任せましょう。

<<最後に>>
連載で野外でのカメラの選びや特徴など、カメラのカテゴリーにより解説して来ました。重複する部分も多かったと思いますが、基本的によい写真を撮るには、撮影する前の心構えがしっかりとしている方がいいようです。どんなに高性能のカメラを使っても、感動させられる写真が撮れるとは限りません。
それぞれ、手になじむカメラを使うのがまず、先決でしょう。目的がしっかりしているとカメラ選びは簡単になってきます。その時、私の連載した文章が役に立つことを願っています。
近年、デジタルカメラが急速に発展してきました。私の撮影のほとんどはデジタルカメラになりました。ですが、画像処理的な知識やパソコンや、その周辺機器を扱うためのスキルが要求されます。最高の画質を得るために、相当なデジタルカメラスキルを要求されるカメラも少なくありません。その一方、簡単にきれいな写真が得られるカメラもあります。まだまだ、私も勉強中です。これからの時代は、さらに写真が面白くなっていきます。私の連載した文章の内容も古くなる時が、すぐにやってきそうです。


■バックナンバー
カメラの種類あれこれ
コンパクトカメラ&使い捨てカメラあれこれ“遊べるカメラ“
高性能コンパクトカメラにあれこれ“通好み、情報カメラ”
一眼レフカメラ(35ミリ)あれこれ“いろいろな顔を持つカメラ”
レンズ一体型一眼レフ風カメラあれこれ(私のお勧め)“小さな何でも屋”
中型カメラあれこれ(意外に簡単な)“趣味のカメラ”
大型カメラなどの特殊カメラ(カメラ付携帯電話など)あれこれ“芸術カメラ?”

■著者紹介

椹木 喜雄(さわらぎ よしお)
1968年滋賀県生まれ。写真家。91年、京都精華大学美術学部造形学科卒業。在学中から独学で写真を学び、26歳から本格的に自然をテーマに地元の琵琶湖から撮影を始めた。自分自身も自然の一部として、感じるままを表現し自然と調和して生きることが出来たら、そこは"天国"だと思う。写真集「Winter」(光村推古書院)、がある。滋賀県草津市在住。
ホームページは、「自然写真物語」http://www8.plala.or.jp/sawaragi/