- 最終回 - 著者 大蔵 喜福


「HOW TO、親子で楽しめる山登り」

 大自然の風物を満喫しながら、心身ともにリフレッシュできるのが山登りです。中でも比較的穏やかな自然条件の中で登れる標高1000m内外の低山ハイクは、親子で楽しめるフィールドです。さらに高い山を目指すにしてもここで山歩きの初歩を充分にマスターしておきたいものです。

「予定外の雨に降られたら」
 天気のよしあしにかかわらず、フィールドに雨具は必携です。でも、忘れてしまい運悪く雨に降られたときは、体を濡らして体温を奪われないことが肝要です。雨を防ぐものが何もなければ、できるだけ撥水性の高いウインドブレーカーなどを着て、雨が浸透するまでの時間を稼ぐことです。
 代用雨具として
1.大きめのゴミ用ポリ袋があれば、穴をあけ頭と手を出してかぶる。
2.ショッピング用ポリ袋があれば、片面の両サイドを底まで切り開き、エプロンの
ように取っ手に両腕を通して、上半身の前面だけでもカバーする。

「地図磁石がなくて方位を知る方法」
1.太陽と時計で知る
 a.水平においたアナログ腕時計の真ん中にマッチ棒を立て、その影と短針をかさね短針(影) と12時に囲まれた狭い角度を2等分した延長線方向が北です。
 b.水平に置いたアナログ腕時計の短針延長線上に太陽をおき、短針と12時に囲まれた狭いほうの角度を2等分した延長線方向が南です。

2.星の位置で知る
 ひしゃくの形をした北斗七星の汲み口に相当する明るい二つの星の間隔を、約5倍した延長線上にある(ひときわ明るい)北極星の方向が真北です。

「よく起こるケガ病気の救急処置」
1.靴ズレ、マメ
 歩行中のトラブルの筆頭が靴ズレとマメです。水泡ができた後の処置としては患部を水で洗い、消毒した針と糸を水泡に通し(糸はしばらく残す)消毒済みのはさみやナイフで水泡を切り開いた跡、ガーゼなどを当てておくとよい。完全に乾燥したら、大きめのカット絆を数枚かデーピング用デープなどを重ね貼りする。
 踵の靴のズレは中敷などで踵の高さを変え、同じ場所がスレないように。また指先や足裏の靴ズレは厚手のガーゼなどで保護しておくと痛みが和らぎます。
 予防法として
 a.サイズの合った靴を選ぶ。
 b.新しい靴は事前に慣らしておく。
 c.靴ズレを起こしやすい部分に予めテープなどを貼っておく、あるいはクリームなどを塗布しておく。
 d.薄手のナイロン靴下と厚手の靴下を重ね履きする。
 e.靴の中に小石や砂が入ったらこまめに取り除き、靴下がずれてきたら履きなおす。

2.日射病
 日射病は強い直射日光に長時間さらされ、体温の調節機能が失われることによって起こります。
 一般に顔面が紅くなり皮膚が乾き汗が出なくなり、頭痛や吐き気などの症状を伴います。応急手当は風邪通しのよい涼しい場所に仰向けに寝かせ、頭を高くして(顔面蒼白の場合には、足の方を高くする)衣服をゆるめ、濡れタオルなどで全身を拭いて冷やす。
 予防法は、帽子などで頭、特に後頭部や首筋を直射日光から守ること。

3.筋肉けいれん
 疲労や低温によりふくらはぎやももの筋肉が硬直し激しい痛みを伴います。筋肉の伸縮力の低下が原因です。手当ては、硬直した筋肉を温めながら充分に伸ばし少しずつマッサージすることです。
 予防法は筋肉を冷やさず適度に休ませ、糖分など充分な補給をする。

4.虫刺され
 ハチや毒虫に刺されるとその部分が腫れ強い痒みや痛みを伴います。手当ては先ず皮膚に残った毒針や毒毛を取り除き、毒素を血と一緒に絞りだします。次に患部を水でよく洗い、抗ヒスタミン軟膏や副腎皮質ホルモン軟膏を塗布した後、清潔な濡れタオルなどで冷やします。
 予防には長袖のシャツやパンツの着用で肌の露出部分を少なくすること。防虫スプレーや防虫ネットを持参する。

 スズメバチに刺された時の処置。抗ヒスタミン剤入りの軟膏を塗り、水か保冷剤で冷やす。1度目より2度目の方が抗体の働きで症状が重く、命にかかわるのでまず病院に行くことです。
 予防には、
 a.黒に反応するので服や帽子は白系統のものを着用する。
 b.巣に近づかない。飛んできたら身を低くしてやり過ごす。
   手で払ったり逃げ回ったり大声を出すのは危険。
 c.頭を狙われやすいので帽子を着用する。

5.毒蛇に噛まれたら
 数分で噛まれた部分が腫れ、激痛とともに脱力感や頭痛、腹痛、下痢、嘔吐などの症状が出ます。
 応急手当としては、先ず安静にして傷口より心臓に近い部分を縛り、毒のまわりと血流を抑えた後、傷口の周囲を冷やして血管を収縮させます。必要なら傷口を清潔なナイフで開き、口かポイズンリムーバー(毒素吸引器)で毒液を吸い出した後、傷口をきれいな水で洗い消毒します。予防は蛇の好む、湿った草むらなどを避け、 木の洞や岩穴に手を入れない。また、 足元をしっかりした装備で固める。


■バックナンバー
自然体験活動のすすめ「山に登ってみよう」(1)
自然体験活動のすすめ「山に登ってみよう」(2)
自然体験活動のすすめ「山に登ってみよう」(3)
自然体験活動のすすめ「山に登ってみよう」(4)
自然体験活動のすすめ「山に登ってみよう」(5)最終回

■著者紹介

大蔵喜福(おおくら・よしとみ)
1951年長野県飯田生まれ。クリエイティブディレクター、著述業/登山家。
20代は岩壁登攀でヨーロッパ、アメリカに。'79 年には世界初のヒマラヤ縦走登山(ダウラギリ三山縦走) に成功。30代はヒマラヤ厳冬期登山にこだわる。冬のチョモランマ北壁に二度挑戦。'85 厳冬期最高到達地点〔8450m〕記録をつくる。 '87秋チョー・オュー(8201㍍) では無酸素登頂。40代はマッキンリー気象観測のため12年連続して登頂。カヌーでの瀬戸内海初横断、朝鮮海峡横断などユニークな記録も持つ。海外登山、辺境トレッキング等は50数回におよび、多角的にアウトドアスポーツを楽しみマルチに山を遊ぶ活動は精力的で、雑誌、テレビ、ラジオ、講演でも活躍。'00 年、マッキンリー気象観測が評価され、第三回秩父宮記念山岳賞を受賞。著作「エベレストのぼらせます」小学館 '00、「地球元気村遊びテキスト-山の遊び方-」旬報社 '01など多数。