- 第5回 -  著者 清水 國明


 静岡を流れる狩野川に出かけて、子どもたちと川原で遊んだ。なつかしい水の臭いがした。たくさんの生命を育んでいる、元気な川なのだろう。水辺にたくさんの小魚が群れているし、流れの中にもきらきらと輝く魚影が見えた。流れに足を浸して水遊びでも、と考えて川原に降りたのだけど、ムクムクと狩猟の本能が目を覚まして、急きょ車の中から釣り糸と鉤、オモリをもってきた。

 竿は使わないで指先に2mくらいの糸にくくりつけて釣るのである。エサは足もとの石をめくってつかまえた川虫。よどみから流れが速くなりはじめる瀬のところに立って、下流へシカケを流した。すぐに、本当に何秒もしないうちに指先にピクピクと生命感が伝わり、クィと合わすときれいなハヤが釣れた。目を見張る子どもや妻の視線がすごく気持ち良い。ヒザくらいの深さなので、小一の三女にも糸を持たせてやったら、これもすぐアタリがあって、しかも僕のより何倍も大きいウグイが釣れた。室内でのトランプゲームや、ひととき我家でも流行ったベイブレードの勝負で勝ったときよりも三女は誇らし気に、全身で嬉びを表わしている。真剣にくやしくてそのあと、懸命に釣ったけれど三女のウグイを超える大きさの魚を釣ることはできなかった。

 大きさを競うのはやめようと提案して、今度は水辺の小魚をペットボトルで作ったシカケに追い込んで掴まえることにした。ボトルの上部を切り、逆さにしてさし込んだだけの簡単なものだけど、これは海の潮だまりなどに少しエサを入れて置くと、エビやカニ、小魚が面白ようにとれるスグレモノ。今回は石を積んで逃げ場をふさぎ、追い込んだ先にペットボトルを置いた。家族全員の気持ちが合わないと魚をうまくコントロールできない。自己中心的な家族だから功をあせって列を乱すので、なかなか魚が入らずあきらめかけたころ、ようやくの小魚2匹に大感激だった。

...続く


■バックナンバー
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■著者紹介
清水 國明(しみず くにあき)
1950年、福井県生まれ。
現在、テレビ、ラジオでのコメンテータや新聞雑誌への執筆活動など幅広く活躍中。芸能界きってのアウトドア派として自然体験イベントや講演活動も多い。家族と共に楽しむアウトドアライフは、趣味でもあり、ライフワークでもある。1995年には、自然暮らしの会を結成。代表を務める。
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自然暮らしの会