- 第2回 -  著者 清水 國明


 僕が代表の「自然暮らしの会」には、週末だけ工房へやってきて、チェンソーで丸太小屋を作ったり、カナディアンカヌーを作ったり、ナイフや釣り竿を作っている、「週末職人」という人たちがいます。いつもは様々な職場で働いている人たちが、週末だけまったく違う職人さんとなってモノづくりに励んでいるのです。先日、その人たちが造った丸太小屋、丸太の遊具をみんなで幼稚園に運びました。実はこれであちこち4棟目になります。

 突然幼稚園の園庭にあらわれた丸太の家、遊具で、子供たちがすごく喜んで遊んでくれます。木の香りがいい、木にはぬくもりがある、と大人たちはよく言います、それはきっと、記憶の中にある、遠い昔木の家で暮らした思い出が言わせているのだと思います。では今、木の香りやぬくもりとはまったく縁遠い、新建材やコンクリートや金属、化学物質に囲まれて育った子供たちが大人になったとき、木に触れて何と言うのでしょう。

 たぶん同じように、香りがいい、ぬくもりがあると言うでしょうけど、それは誰もが自然ていいなぁと、言うのに似ています。では、自然て何?とたずねられたとき、知識の中でしか答えることができません。体験として体が覚えている実感ではないのです。

 僕らが造った丸太の小屋によじ登ったり、くぐったり、頭をぶつけたりして幼い時を過ごしてきた子供たちの記憶には、本物がインプットされています。鮮やかに木の肌触りが蘇ることでしょう。

 そして、もうひとつ。僕ら週末職人や園児の父兄が一緒になって丸太小屋を建てている光景は、何にしてもお金でしか手に入れることができない、と思い込ませてしまう世の中にあって、唯一自分の力で創り出すこともできるのだと気づくシーン。HAVEよりもDO。楽するよりも楽しい、へ進む道の分岐点だったのだと、いつか思い出してもらいたいと願っています。

...続く


■バックナンバー
自然暮らしは面白い(1)
自然暮らしは面白い(2)
自然暮らしは面白い(3)
自然暮らしは面白い(4)
自然暮らしは面白い(5)

■著者紹介
清水 國明(しみず くにあき)
1950年、福井県生まれ。
現在、テレビ、ラジオでのコメンテータや新聞雑誌への執筆活動など幅広く活躍中。芸能界きってのアウトドア派として自然体験イベントや講演活動も多い。家族と共に楽しむアウトドアライフは、趣味でもあり、ライフワークでもある。1995年には、自然暮らしの会を結成。代表を務める。
■関連情報
自然暮らしの会