− 第1回 − 著者 高田 直樹


なんだかわからない、いまの世界
 この頃、世の中なんだかおかしい。などというと、年寄りの繰言めいて、いやなのですが、でもほんとに変なのです。
 昔には考えられなかったようなことが起こる。信じられないような事件が相次ぎます。価値観の多様化などというような説明は何の説明にもならない。

 9・11あの9月11日を境に世界は変わったと唱える人がいれば、いや何も変わってはいないと言う人もいます。
 ―アメリカが「テロ戦争」を口実に世界支配を強めている現状からみると、アルカイダはアメリカの本当の敵ではなく、敵を装ったアメリカの「別働隊」なのではないか、との疑念も湧いてくる(田中宇の国際ニュース解説《バリ島爆破事件とアメリカの「別働隊」》)− などというインターネットの記事を読むと、何がなんだか分からなくなってきます。

山登りから考えた、日本のこと
 かつての高校教師時代、もう25年も前に『なんで山登るねん』(注)を書いていた頃は、そんなではありませんでした。
 日本のどこが良くないのか、どうなってゆくべきなのか。そういうことは、一人合点であったかもしれませんが、結構はっきりと分かっていました。
 だからぼくは、そういう主張を、山登りという特殊な自然活動を通したかたちで書き綴ったのでした。
 四半世紀たって、『なんで山登るねん』は、「待望久しい名著の文庫化」などという帯付きの文庫本となって、再登場しました。

 あの本の中でぼくが期待した世界は、いまの日本ではほとんど実現しているともいえます。でも、よかったよかったではすまない状況が、日本のみならず世界中で起こりつつある。
 だから、ぼくは少々混乱していて、世の中何を信じたらいいのだろうかなどと、幼稚ともいえる戸惑いの中にあるのです。

信じられるのは自然だけ
 カラコルム登山や学術調査で、何度もパキスタンに出かけたので、ぼくはパキスタンの共通語−ウルドゥ語がしゃべれます。回教徒との付き合いも慣れたもの。回教という宗教にも理解があって、パキスタンでは、アダームスリム(半分回教徒)と呼ばれるぼくも、回教徒になる気はありません。外国で宗教を聞かれたら「シントーイスト」と答えることにしてはいても、神道に帰依することはありません。仏教などはもっと全然。
 そうした状態のぼくが唯一信じることの出来るもの、それは自然です。大自然こそは、ぼくは唯一信じられると言い切れるものだ、と思っているのです。

(注)『なんで山登るねん』http://www.shizen-taiken.com/books/20021010f.html
   自然体験のために読んでおきたい図書に紹介文掲載


■バックナンバー
もっと外で遊ばなあかん!(1)
もっと外で遊ばなあかん!(2)
もっと外で遊ばなあかん!(3)
もっと外で遊ばなあかん!(終)

■著者紹介

高田 直樹(たかだ なおき)
1936年京都生まれ。京都府立大学卒。同大学山岳部OB。
国際登山家。教育評論家。
大学卒業後、京都府立高等学校で化学の教鞭をとるかたわら、登山や教育についての執筆評論活動を行う。
主な登山活動は、厳冬期剣岳東大谷G1初登攀、積雪期前穂高岳屏風岩第1ルンゼ第2登など。
また、海外ではカラコルム、ネパール、旧ソ連コーカサス、中国など各地の未踏峰へ、隊長として数多くの登山隊の指揮をとる。中でも1979年のカラコルム、ラトックI峰(7,145m)の初登頂は世界的に知られている。
一方で、パソコンのデーターベース処理・開発の専門家としても著名。

現在、龍谷大学非常勤講師(教育情報処理)。
株式会社クリエイトジャパン取締役、Ez-Comsite France 社外取締役、
株式会社イージー・コムサイト 取締役。

著書
自伝的登山論『なんで山登るねん(正・続・続々)』(山と溪谷社)
体験的教育論 『いやいやまあまあ』(ミネルヴァ書房)
『入門 TURBO PASCAL プログラミング』(ソフトバンク社)
『dBaseIII PLUS ガイド』(ソフトバンク社)
『FRAMEWORKガイド』(ソフトバンク社)
『FRAMEWORKII EZ ガイド』(ソフトバンク社) など。

専門誌・雑誌他
1981年7月〜9月京都新聞夕刊小説欄に92回の自伝的教育論『いやいやまあまあ』を連載。
1985年12月、NEC98ラップトップ機をネパール山中で初試用。『日経パソコン』誌の取材を受ける。ソフトバンク社『Oh!PC』1985年1月号特集・ボクの夢のパソコンに『ワープロが作家になる日』を執筆。1991年1月よりソフトバンク社『Oh! PC』誌上にエッセイ『パソコンおりおり草』を28回に亘り連載。
その他、山と溪谷社出版物各誌、朝日新聞出版物など各紙誌に執筆評論多数。