- 第1回 - 著者 三浦 正行


 こころとからだをつくる(ほんものの「生きる力」の形成)ために是非見つめ直してみたいのが、「人間的自然」ということです。

 「ホメオスターシス」(身体機能の恒常性)にみられる、からだの中で黙々と働いている諸機能や「直立二足歩行」とそれを支える様々なからだのつくりが出来上がってきていることなどから、「人間的自然」は理解出来るでしょう。しかし、ここで意識したいことは、自然との関わりの中で、人間とはどのような生き方をしてきているのかを見つめ直すことなのです。

 自然と友だちになり、自然の厳しさを知り、自然の大きさを知ることから、人間は、自然に対して全く受け身で関わってきたのではなく、主体的に種々の働きかけによって人間らしい生活活動の自由を拡充し「豊かさ」を獲得してきたことを追体験させたいものです。

 山岳丘陵地帯、森や林、海や川や湖沼は、春夏秋冬、そして梅雨時それぞれに変化に富んだ姿・世界を提供してくれます。火もない、水もない、家もない世界も現れてきます。そこでは、有り余るほどの「モノ」を見せてくれる博物館や動物園、植物園では体験できない、自分で見つけ出す工夫や楽しみを実感し、人間本来の能力に気づき、種々の「わざ(業)」を向上させる刺激も見つけられるでしょう。

 もちろん、遠く離れた大自然の懐に飛び込むことも大切ですが、もっと身近でありふれた自然とのつき合いによって、日常生活空間の中に、「自然の感性」を取り入れることから始めてみてはどうでしょうか。



■バックナンバー
こころとからだをつくる自然体験(1)
こころとからだをつくる自然体験(2)
こころとからだをつくる自然体験(3)

■著者紹介

三浦 正行(みうら まさゆき)
1949年宮城県生まれ。
立命館大学経営学部教授。
東京学芸大学大学院で学校保健学を専攻。1976年より立命館大学で教鞭をとり現在に至る。「現代人とヘルスケア」「心身の健康管理」「ウェルネス論」など、健康関連科目を担当。