第3回 (財)安藤スポーツ・食文化振興財団


3日目(最終日)

 テントもなしに野営するのは、子どもたちとっては初めての経験だった。草原にブルーシートをひろげ、スリーピングバッグにもぐりこんだ。目の前に満天の星空が広がった。海鳥の鳴き声が、すぐ近くで聞こえてきた。
 蚊やダニの襲来にもめげず、ほとんどの子どもたちは、疲れと緊張からはなたれて、深い眠りについた。

 早朝4時30分。カウンセラーにたたき起こされ、目を覚ました。今朝は、日の出を見るプログラムから始まる。早速、昨日グループごとに決めておいた日の出ポイントまで移動した。森の中の木々の間から、日の出を見るグループ、手作りの釣竿を持って埠頭で、釣りをしながら日の出を待つグループ、断崖の上をポイントに選んだグループなど、場所がまったく異なるところが面白い。
 5時15分頃、朝霞のうえに太陽があがった

 朝食の前、慣れたとはいえ、水汲みの作業がある。トイレも埠頭まで下り、また200段もの階段を登らなくてはならない。休み休み登る子どもが増えてきた。中には、カウンセラーに付き添われ、30分もかけて、へとへとになってようやく登りきる者も出てきた。確かに、この階段の上り下りはきつい。

 一方で、ようやく焚き火のおこし方や、食事の準備にも慣れてきて、スープも上手につくれるようになった。これは、大きな進歩だ。

 8時。日時計が一周し、これでようやくサバイバルの24時間が終了した。子どもたちの表情に安堵の色が、ありありと浮かんだ。
  
 キャンプディレクターが子どもたちにたずねた。
 楽しかったこと?・・・『魚釣り』『木登り』『夜集まって遊んだこと』『ボーンファイアー』・・・
 つらかったこと?・・・『階段の上り下り』『風呂に入れなかったこと』『手を洗えなかったこと』『煙がすごかったこと』・・・
 子どもたちはつらかったことに、一様に階段の上り下りと、水がなかったことをあげた。

 無人島冒険キャンプは、私たち同行のスタッフにとっても、大変印象深いものだった。ライフラインがないという無人島の生活は、子どもと同様、多くの貴重な経験をえた。

 無人島から陸に帰り、3日ぶりに風呂に入った。昼食を食べたあと、振り返りの時間をになった。
 『節水に心がけた』『顔を洗うのは朝だけと決めた』『少ない材料で料理ができた』
 『階段はゲーム感覚で登るとつらくなくなった』『火がうまくつくようになった』・・・・・
 こんな感想がかえってきた。

主催 (財)安藤スポーツ・食文化振興財団
運営・指導 NPO法人国際自然大学校
文・写真 中村 達



■バックナンバー
トム・ソーヤースクール無人島キャンプ(1)
トム・ソーヤースクール無人島キャンプ(2)
トム・ソーヤースクール無人島キャンプ(3)