第3回 (南十勝)著者 大八木 雅之


 私が北海道で好きなエリアが「南十勝」です。帯広と襟裳の間に位置し、日高山脈と太平洋に挟まれた酪農・農業地域です。交通量が比較的少なく、山・海・川・湿原・牧場・畑など盛りだくさんの絶景、いい距離間に旅人宿・ゲストハウスやキャンプ場があるので、バイクはもちろん自転車や徒歩での旅人にもよく出会います。

【晩成】
 十勝開拓の祖・依田勉三の「晩成社」があったことから、この地名がつけられました。六花亭の「マルセイバター」は晩成社が生産していたバターに因んだものです。現在でも牧場地帯となっています。

 この辺りにもタンチョウ(丹頂鶴)が住み着いていて、牧草地やデントコーン畑で姿を見ることができます。
タンチョウは飛び立つのに助走が必要です。たまにタンチョウが道路を横切る事があるので、ご注意を。

 海辺にある「晩成温泉」は、ヨード分が高く3回入浴すれば虫刺されが治ります。キャンプ場と宿泊が併設されていますが、私の定宿はアットホームな旅人宿「セキレイ舘」です。
 温泉脇の高台に「ホロカヤントー縦穴住居群跡」があります。復元住居が1棟建てられています。
 眺望が良く、初夏にはエゾカンゾウ(ニッコウキスゲの仲間)などが咲く美しい丘ですが
「海の魚を捕って生活した人たちが不便な高台に住んでいたのは何故なのか?」
そんなことも訪れて考えてみて下さい。

【十勝海岸湖沼群】
 十勝の太平洋岸は汽水湖が点在し、周囲は湿原になっています。宿のご主人とダッキーで湖を散策して遊ぶこともあります。
 夏は霧が多いこともあり気温が低く、ハマナスなど海辺の植物と一緒にコケモモ、ハクサンチドリ、トキソウ、ワタスゲなど高原の植物も見られます。地元の人は海辺の花だと思っていたそうで「本州では山に登らないと見られないですよ」と言うと驚かれました。
 野鳥も多く生息しています。ショウドウツバメ、カッコウ、ノビタキ、アカゲラなど普通にいます。オジロワシを見たこともあります。

 旭浜などの砂浜には、太平洋戦争中に作られた“負の遺産”「トーチカ」(鉄筋コンクリート製の防御陣地)が残っています。年々埋もれていっていますので、お早めに。

【中札内】
六花亭の施設が2つあります。
中札内美術村:4つの美術館がありますが、柏林を散策するだけでも価値があります。6月にはスズランが一面に咲きます。
六花の森:広大な庭園?植物園?の中に、六花亭の包み紙でおなじみの画家・坂本直行の記念館などがあります。併設のカフェには限定のメニューやグッズがあるので是非。

 一本山展望台:駐車場から鳥の声を聴きながら森の中を少し登ります。標高355mの山頂にタワーがあり、更別・大樹方面~中札内~帯広・大雪山方面~日高山脈と360度全部見えます。道路が未舗装なためか訪れる人が少ない穴場スポットになっています。


■バックナンバー
北海道の旅 1
北海道の旅 2
北海道の旅 3

■著者紹介

大八木雅之(おおやぎまさゆき)
1963年京都府生まれ。ウェブデザイナー・ライター。
趣味はバイクツーリング、山歩き、風景写真撮影