第1回 著者 山口 章


 ピレネー山脈、それはフランスとスペインの国境を走る褶曲山脈である。これはヨーロッパ大陸とイベリア半島を分ける山脈にもなっている。この山脈は東西に430㎞の長さがあり、幅はおよそ100㎞ある。最高峰はアネト山の標高3404mだ。この中央部が登山やハイキング、スキーが楽しめるエリアとして人気がある場所となっている。
 ここではこのピレネーのハイキングを4回にわたって紹介しよう。1回目はスペイン側だ。
 スペイン側のピレネーの魅力はなんと渓谷だ。なかでもオルデサ・ペルディード国立公園の渓谷は氷河に浸食された谷がいくつもあり、世界遺産にも登録されている。今回はこのなかのひとつ、アニスクロ峡谷(Valle De Anisclo)を歩いてきた。
 この峡谷を歩く起点はアインサ(Ainsa)だ。この町はアラゴン地方のもっとも興味深いところとして、スペインの歴史芸術地区に登録されている。ここから車でおよそ一時間走ると、マリノ・デ・アッソに着く。ここからいよいよ歩きだす。

 深いアニスクロ峡谷を橋で渡ると、岩壁をくりぬいたサン・ウルベス教会がある。よくぞこんなところに教会を作ったものだと感心させられる。教会をあとにどんどん遡っていくと、頭上高く2000m級の山が迫ってくる。そして、あれだけ深かった谷沿いを歩くようになり、同時に高度も上げていく。周りは深い森林だが、頭上には依然として岩壁が連なっており、迫力は満点だ。

 道はよく整備されており、スニカーでも十分に歩くことができる。この谷を登りつめて行けば、アニスクロ峠に上がり、ピネタ(Pineta)にいくことができるが、ルート番号15をたどってセルクエ(Sercue)に上がり、上部にある町からアニスクロ峡谷をながめた。
 帰路はもう一度、アニスクロ峡谷までもどり、途中の分岐をアニスクロ峡谷まで下り、滝の景観美にひたりながら登り返して駐車場にもどる。駐車場の手前には石造りの小さな建物のインフォメーションがある。ここで簡単な地図ももらうことができる。


■バックナンバー
ピレネーの山旅 第1回
ピレネーの山旅 第2回
ピレネーの山旅 第3回
ピレネーの山旅 最終回

■著者紹介

山口 章(やまぐち あきら)
1947年京都市生まれ。「山と渓谷」編集長を経て、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構常務理事事務局長、浅間山麓国際自然学校顧問。クライミングインストラクター。国内外のほかヨーロッパや北アルプスの登山、登攀等の経験多数。