  
- 第3回 - 著者 奥村 彪生
■手つかみのアマゴに「踊り串」を打つ
自ら手でつかみ取ったアマゴを、自ら料理バサミで腹を切り開く。肛門にハサミの先を入れ、アマゴのあごに向けて切ってゆく。
えらと内臓を取り除き、川の流れ水で洗い清める。
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 アマゴの腹にハサミを入れる |
青竹を削って作った長さ45cmの丈夫な竹串を、アマゴの口に刺し込み、アマゴをくねらせながら尾のつけ根まで通す。まるでアマゴが活きよいよく踊っているように見えるから、この竹串の打ち方を「踊り串」という。
両面に薄く焼塩をふり、尾びれと胸びれにも塩をつける。ひれに塩をつけると焦げないで焼き上がりは美しい。この塩つけを化粧塩という。焼塩は高温の釜で天然塩を炒ったもの。にが味がやわらぎ、サラッとする。
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 アマゴを串で通す |
■焼けたアマゴは頭からかぶりつく
炭火をいこす(火をつけること)炉はブロックかレンガで築く。その中に炭を入れていこす。ブロックの穴に土を入れ、この中に竹串の元を差し込む。炭火に対し、丁度家の屋根の柱のように、斜めに差し込むことがポイント。尾が飛び上がっている側から焼く。(これが表)こうすると炭火から発する遠赤外線が、有効にアマゴの体を焼く。アマゴの目玉が白くなれば、表裏を返し、再び焼く。目が白くなり。尾に近い見の部位がじゅうたんの如く、フワッとしていたら焼き上がり。アマゴの頭の骨は柔らかく、おいしいから、頭からかぶりつこう。
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 アマゴを炭で焼く |
■カレーとん汁の材料
野菜⇒キャベツ、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、青ネギ
豚薄切り肉、ちくわ
だし用の煮干(カタクチイワシをゆでて干したもの)
調味料・無添加天然醸造みそ
カレー粉
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■火加減のワザを覚えよう
大鍋に水と、煮干、切った野菜、豚肉、ちくわを入れる。
煮干は頭と内臓を取り除くが、そのまま用いたグループもある。野菜は大ざっぱでざく切り。ジャガイモは新物だったので、洗って皮のまま用いたグループもある。切り方は少々不揃いでもよい。アウト・ドア・クッキングだからダイナミックさが大切。
豚薄切り肉は2cm幅、ちくわは1cm厚さにザクザクと切る。
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鍋を火にかける。薪をドンドン勢いよく燃やす。沸とうしたらすぐ薪を引いて、煮汁がほほえむぐらいの火に調整する。火を強くしたり、弱くすることを火加減という。
よごれた泡が立ち、固まるが、これには材料から出た栄養やうまみが含まれているからすくい取らない。大人はアクと呼ぶけど、アクも味のうち。人間にもアク(個性)が大切。静かにほほえみ火で煮るとアクは、煮汁にかえってゆく。
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とん汁の中の材料で一番火(熱)が通りにくいのはジャガイモ。このジャガイモに木の小枝を刺して、スーッと気持ちよく通ると、材料全部に火が通っている。
ここで味つけ。みそはこだわって無添加。天然醸造の米と大豆(ダイズ)のみそ。これをスプーンですくって加えて、静かに混ぜる。
上等のみそは煮すぎると香りが失せるから、ひと煮立ち。昔の人はみそ汁の煮え花といった。
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 味噌を入れる |
■「ほっぺが落ちそう」と、にっこりする味にしよう
味を確かめ、「ほっぺが落ちそう」とにっこりする味にするのがポイント。だからみそは控えめに入れること。これは味加減。
仕上げにカレー粉を加えて混ぜる。「みそ汁にカレー粉なんて!」といわないで。ミスマッチのようだけど、実においしい。猛暑の熱気にうんざりしていても、その香りと辛さで元気が湧いてくる。
アウト・ドア・クッキングのみそ汁は、具を沢山入れ、おかずとして認識しよう。
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 カレー粉を入れる |
■チキンラーメンをトッピングしてみよう
カレーとん汁は器に具、汁ともにたっぷり盛り、刻みネギをトッピング。
おいしく焚けたはんごうのごはんは、器に盛りながらほぐし、細かくくだいたチキンラーメンをトッピング。
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 チキンラーメンをトッピング |
ごはんとチキンラーメンを箸で軽く混ぜて食べる。チキンラーメンのロースト臭(ラーメンを油で揚げた時につく芳ばしい香)とサリサリした触感と、もちっとしたごはんの触感とのリズム感のあるハーモニーを味わって!!
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■バックナンバー
アウトドアクッキング事始め(1)
アウトドアクッキング事始め(2)
アウトドアクッキング事始め(3)
■著者紹介
奥村 彪生(おくむら あやお)
昭和12年和歌山県生まれ。
伝承料理研究家。
日本各地の土地や家庭に伝承された食文化を見なおし、明日に生きる新しい伝統料理を研究する。平成6年、食生活文化賞を受賞。
著書に『日本の食べもの』『たのしくつくる健康野菜料理』(いずれも人文書院)
『おいしさ度あ・な・た流』(ぎょうせい)『日本料理秘伝集成』(同朋社)など多数。
また、テレビ番組などの出演も多い。
■関連情報
神戸山手大学 人文学部環境文化学科
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