![]() 第1回 著者 大西 かおり
「危険な武器から便利な道具へ」 魚をとるにはまず釣りざお作りから?! ![]() この春休み中も「大杉谷の春休み」と題した2泊3日の孫さんキャンプを行ったばかりです。このキャンプのテーマはずばり「春の宮川で魚釣り」です。大杉谷に住む子どもたちは、昔は釣りざおから何から全て自分たちで工夫して魚を捕まえていました。その道具の一つ一つに自分なりのこだわりがあり、工夫があり、考え方の軌跡があったのです。子どもたちは自分たちのお気に入りの道具を大変大切に使ったものです。今回のキャンプでは、そんな昔の大杉谷の子どもたちが味わった、魚をとることを創意工夫する苦労や楽しさ、そしてモノ作りに対する姿勢について学んでもらおうと企画しました。 道具か武器か・・・・ ![]() 達人の質問は、現代の子どもたちから遠ざかっている、生活にはなくてはならなかった刃物という道具を使って、いったいどんなものができるか実感してもらうための体験に入る前のひとコマでした。今回は竹を使った箸作りと釣りのために使う釣りざおを作りました。 えっ?!!!刃先を親指に当ててる? ![]() 「使い方を間違うと、自分も人も怪我さすぞ!」達人から注意が飛びます。集中して作業をする竹を削る音しか聞こえない、ここちよく緊張した空気がみなぎります。そんな中、どきっとする光景に出くわします。肥後の守の刃先と背を間違えて、切れる刃先に親指を当てて切ろうとする子がいるのです。昔から刃物をよく使っていた人には信じられないことだと思います。ところが、最近は30人の子どもたちに肥後の守を使ってもらうと3~4人くらいは刃先を親指に当てて逆向きで使おうとする子どもがいるのです。背には赤いペンで色付けをし、事前に十分注意をしますが、作業に夢中の子どもたちには気づかなくなることもしばしばなのでしょう。でも、この場合にケガをすることは不思議なことにありません。おそらく、使ってみても切れないか、痛いと気づくので、すぐに持ち替えるのでしょう。昔は子どもの常備道具だった肥後の守は、今では持ち方も使い方もわからない道具になってしまっているようです。 自分たちで創意工夫 ![]() 自分で使うからこそわかる自分で工夫するべき点。自分でしたいことをするために自分で作り、試し、また直す。この繰り替えしから、さらにいいものを作り出すという創意工夫の心をもつことがとても重要だと考えています。昔の子どもたちが毎日当たり前のように使っていたこの思考回路を知った子どもたちは、きっともう“刃物は武器”なんてことは言わないでいてくれるのではないでしょうか? ■バックナンバー ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ■著者紹介 大西 かおり(おおにし かおり) 三重県多気郡宮川村・大杉谷自然学校代表 |