2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
45 広島県山岳連盟 広島県 「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。

「わんぱく登山部」 親子で山遊び!~山遊びの楽しさを、家族の人にもおすそわけ! [11/11]

 日  時:平成19年11月11日(日)
 場  所:広島県山県郡北広島町 臥龍山・八幡高原(標高1223m)
 参加者:部員11名(男子5名、女子6名)※小学校3~5年生、保護者10名、スタッフ2名
 ねらい:・保護者に山遊びの楽しさを感じてもらう。
       ・保護者にわんぱく登山部の活動を体験的に理解してもらう。


臥龍山も最後の秋。今日はしとしと雨もふっています。

最初の小川はみんなで「えいやっ」、と飛び越える。いつもはこどもばかりだけど、今日はお母さんも、えいやっ!
 <タイムスケジュール>

07:30  横川集合・出発
09:00  八幡高原千町原着(9:30出発)・ストレッチ後出発
11:00  8合目着・昼食(調理あり)
12:30  頂上へ
13:00  下山開始(往復ルートで)
13:45  下山・現地出発
14:20  いこいの村(入浴)
15:30  いこいの村出発
17:00  横川駅着

 <運営ポイント>

どんな山か、どんなハイキングにするかなど
事前の概要説明とイメージを伝える。
自己紹介で保護者のための軽いアイスブレイキングを。
ペースは保護者にあわせて。
きのこ狩りなど寄り道も十分楽しみながら
こどものペースをコントロールして。

 <実施の概要>

こどものみでの活動を続けてきたが、
今回は保護者にも参加してもらっての山遊び。
シーズン最後の紅葉と、きのこ狩りを期待して芸北の臥龍山へ。
当日は曇り。朝から気温も低く、いよいよ冬の寒さが到来、という様子。
往路は寒い中にもすがすがしい空気と、きのこも探しながらの楽しい道行であった。
しかし昼食時、雨がぽつぽつ降りはじめ、突然の雹(ヒョウ)の嵐に!
雪雲がめまぐるしく動き、雷も鳴り始めた。縦走の予定を往復に変更して下山。
今年初めての山の寒さに震え、下山後、温泉に寄って体をあたためた。

 <参加者の様子>

黄色に紅葉したミズナラの森が臥龍山へのアプローチ!今回は大人のわんぱく登山部が出発!(ちゃんとこどももいますよ)

さがして、さがして、ようやく大量のクリタケを発見!!この木の裏側にも畑のようになっていました。大興奮のひととき。

あんまり嬉しいので、クリタケの記念写真をパチリ。秋の色が美しいです。

保護者、こどもともに「楽しみ!」と、モチベーションも高かった。
山歩きは初めて、または久しぶりという保護者が多く
「大丈夫かな」「歩けるかな」などと不安な一方で
「あまりない機会だから」と楽しみにされているようだった。

朝から気温が低く、登山口では風も吹いて
寒さに少しげんなりという感じもあったが
歩き出すと気持ちも温められ、楽しそうな様子も伺えた。
少し雨にぬれた森の様子はすがすがしく
落ちたばかりの紅葉の色も鮮やか。
「気持ちが良い!」「空気がおいしいんですね。」という声もあがった。
こども達はお父さんやお母さんと一緒に山に入るのが嬉しい
といった様子。始終、保護者にくっついて歩いた。
また、「ここはすべりやすいから、こっちに足をおいて!」
などという言葉もかけて
「山登りの先輩」として一生懸命自分の親を案内している姿も見られた。

きのこ狩りも期待していたのだが
落ち葉が大分ふりつもっていて見つけにくい状況に。
ちょくちょく見つかって全員が盛り上がる
という場面はあまり見られなかったが
少し周りを見渡したり、植物に目を向けたりするきっかけにはなったようだ。
小さなきのこも良く見つけるこどもに対して
なかなか見つけられず「みんなどうしてそんなに見つけられるの?」
と不思議がる保護者も。
「きのこってこんな風に生えてるんだ!」と感じ入る場面もあった。
(みんながあまり見つけられない中で、最後尾について
きのこ探しに一生懸命だったこどもがようやく大量のクリタケを発見。
大興奮する場面も。)

昼食時に気温が急激に下がり始め、雹の嵐に。
あまりの寒さと突然の嵐にみんな驚いた様子。保護者にも、
これからどうなるんだろう、どうするんだろうという不安が漂った。
寒さでモチベーションもあがらず、
これ以上いっても危険なばかりで今回の狙いにそぐわないとして
往復のルートに変更しての下山を判断した。
厳しい寒さに辟易しながらもあまり悲壮感はなく
保護者のみなさんは頑張って元気を出されていたように感じた。
寒いので黙々と下りがちではあったが、「こんなのが結構楽しい!」と笑顔を見せる人も。
全員が気持ちも頑張って、無事下山することができた。

 <運営について>

思いがけない寒さで、お湯が沸きにくい状況に。
あらかじめテルモスでお湯を持っていっていたが、それでも沸きにくかった。(トン汁に時間が掛かってしまった)
お湯の量が必要量に対して少なかった。また、すぐに飲める温かい飲み物などを用意していなかったことは失敗。


クリタケが出たので、周りの人も少しやる気になってきた!?どれどれ。落ち葉をかきわけて。

私もきのこが欲しい!

美しい臥龍山はやはり人気。この日も大勢の登山客に会いました。お先にどうぞ。
 <プログラムの設定について>

負荷がちょうど良い。きつくもなく、ゆるすぎもせず、「山に入っている」という感じが十分。
動植物もゆたかで天然の森の美しさ、良さが堪能できる。エスケープもしやすい。
きのこ狩りについては、落ち葉がふりつもって探しにくい状況があった。
しかし「きのこ狩り」のような具体的な動きがあると、土や植物などに触れやすくなり
五感がいっそう刺激され、いろいろな自然に気づきやすくなりそうだ。
ある程度コンスタントに見つけられた方が盛り上がるのはもちろんだが
うまく見つからない場合もスタッフが上手に介入すれば、様々な良い効果をもたらしてくれそうだ。

 <安全管理>

ポイント・・・保護者向けにウォーミングアップとクーリングダウンの時間を入れる。
個人装備として雨具・防寒着・手袋などの携帯。
事例・・・8合目での昼食時に雹。風もあり、体感温度も低かった。
参加者はフリース・雨具・手袋など用意していたが、それでも寒いようだった。
(要因分析)防寒着の用意が十分でない。体が天候の変化についていけていない。
(季節の変わり目、環境に慣れていないなど)
(今後の対策)10月下旬以降は特に防寒着の必要性を呼びかける。(必ず持参してもらって)
季節の変わり目、また寒い季節は下山後に入浴などの時間も。
保護者には天気の動向について、日頃から関心をもってもらう。すぐに飲める温かい飲み物の用意。


美しい臥龍山はやはり人気。この日も大勢の登山客に会いました。お先にどうぞ。

お昼は太陽も当たって、しばしは和やかだったのですが・・・。(写真に写る車は、山水を取りに来る人たちのもの。わんぱく登山部とは関係ありません)

突然、ヒョウが降ってきた!どうりで寒いと思いました。すぐ目の前で雪雲が行き交う様子が見えます。雪雲の中で鳴る雷鳴も聞こえました。

 <総合評価>

とにかく寒かった!
今までのわんぱく登山部の活動の中で、一番厳しい天候を体験したのではないだろうか。
しかも「ルンルンの楽しいハイキング」をねらっていた親子登山で!
しかし驚いたことに、参加した保護者の感想の多くは「楽しかった!おもしろかった!」というものであった。

「・・・私も、どんなお天気も肯定的に受け止めよう!と思いながら、下りはずぶぬれになりながら
『こんな経験したことなーい』と楽しんで下りました。寒いの嫌い、汚れるの嫌い、の私が本当に楽しめましたよ。
そして歩きながら、山っていいな、自然っていいな、という気持ちになりました。
今度はどこの山へ登ってみようかな、と自然に考えていました。」


他の登山客もいそいそと下りはじめます。紅葉の森にカッパと傘も彩りをそえます。

わんぱく登山部が4月からほぼ毎月続けてきたことの集大成は
本当はこの親子登山である。
こどもが生きることが楽しいと感じるためには
一番身近な大人である親が楽しんでいることが
一番好ましいのではと考えたからだ。
そのために4月に保護者のみの山登り・保護者会を予定していた。
しかし、それは没になってしまった。
参加する保護者がいなかったからだ。
理由は特に聞いていないが多くは「仕事があるから」などであったろう。
それは仕方がない。
だが印象的だったのは、「山はこどもだけでいいです」と
笑いながら断った保護者がいたことだった。
全く参加者がいなかった4月の保護者会から、この秋の親子ハイキングの実施はめざましい変化だと感じる。

「山登りは“きつい”“しんどい”“寒い”などの苦手なイメージがあった私が、今回“行ってみよう!”と思ったのは
山登りを経験している子ども達の、なんとなく感じる、前とはひと味違うたくましさや生き生きさを感じていたからです。
・・・山登りをしてみて感じたこと。一言では言えないし、言葉にするのが難しいです。
あえてひと事でいうと『楽しかった!おもしろかった!』です。」

「まず登りはじめ。こども2人が私にいろんなことを教えてくれたり、話しかけてくれたり
さすが山登りの先輩!とたのもしく感じました。
足元があぶない所はちっくんは自ら手をさしのべてくれ、私の方が甘えていました。
しばらく登ると寒さもふきとんで、とても気持ちよく
きのこをみつけたり、おもしろい形のはっぱや実をみつけたりと、こどもと楽しく会話しながら登りました。」

「一歩一歩足をふみしめ、ひたすら登る時
ふだんの細かい悩み、こだわりみたいなものから開放されたような無心の心地よい感じを覚えました。
何も言わず前へ前へと進むこどもの足元をみていて、とても前向きな気持にもなれ
たくましい姿が見れて嬉しかったです。」

こども達に山登りを通じて「楽しい!好き!」を伝える中で、それらは家庭に持ち帰られ
自然とその家族に伝わっていたようだった。
上の感想を書いてくれた保護者だけでなく、今回参加してくださった保護者からも似たようなことをうかがい知った。
このことは、わんぱく登山部のいくつかある最終的なねらい、そのものである。


これで臥龍山の秋も終わりです。落ち葉もそろそろ冬のお迎え。寒かったけど冬が山にやってきた瞬間に親子で立ち会えました。そんな神秘な瞬間との出会いも、山遊びの魅力のひとつです。

おもしろく思うことに、
この「楽しかった!」という感想を強くもったのが
10月28日に快晴の紅葉狩りを楽しんだ1班よりも
今回の2班だったということだ。
強いストレスに遭遇し、それをくぐりぬけてきた時
私も何か達成感のようなものを感じるが
そういった効果もあったのかもしれない。
人間の体は酷使するように出来ている、といった人がいたが
私自身、自然の中で活動してきてそれは正解だと感じる。
自然はおのずと私達の感覚を刺激し、
持っている力や能力を引き出してくれる。
感性が開かれていく。雹を降らせて無理やりにでも(笑)。
やっぱり自然はおもしろい。



支援団体活動レポート