2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。
NO | 学校・団体名 | 都道府県 | 企画の概要 |
45 |
広島県山岳連盟 |
広島県 |
「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。 |
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「わんぱく登山部」 こどもトレッキング隊! [9/23-24]
日 時:平成19年9月23日(日)~24日(月・祝)
場 所:鳥取県西伯郡大山町 大山(国立公園大山・標高1729m)
参加者:部員15名(男子8名、女子7名)※小学校3~6年生、スタッフ4名
ねらい:・よりスケールの大きな自然、またその自然の営みや厳しさなどを直接肌で感じる体験
・より大きな自然遊びに挑戦する楽しさ

こども達には初めての山小屋。そして明日はいよいよ大山!いろいろわくわく、いろいろどきどきです。

夜、山小屋の2階にあつまって、「お笑い芸人大会(?)」を開いていました。いろいろと自分達で考えて楽しむことが上手です。
<タイムスケジュール>
9月23日(日)
07:30 横川集合・出発
12:00 山小屋到着(大山寺内)・生活準備
12:30 昼食
14:00 大山寺散策(大神山神社まで)
15:00 入浴
16:00 夕食準備
17:30 夕食
20:30 就寝
9月24日(月・祝)
05:00 朝食
05:45 山小屋出発・登山開始
08:12 6合目避難小屋
09:30 山頂・昼食
11:00 下山開始
13:30 下山(大神山神社)
14:00 入浴・撤収
16:45 現地出発(お弁当で夕食)
20:30 横川着
<運営ポイント>
どんな山であるか、どんな登山をするのか、イメージをあらかじめ伝える。
これまでの山との比較、標高差、ルートの様子、潜んでいる危険など、イラストも使用し事前に説明。
どんな山登りにしたいか、事前にイメージしてもらう。時間管理についても意識させる。
<実施の概要>
これまでのハイキングから様子をかえて、少し本格的な山にチャレンジ。
中国地方最高峰の大山に、前泊し、早朝から登山を開始して山頂を目指した。
当日、天候は曇り。ガスがかかりがちであったが、なんとか展望を望むことができ
大山のスケールも感じることが出来た。
 大山は大きな山。14時までに下山するために、5時半に出発しようと決めました。この時間、外はまだ真っ暗。 |
 ちょっと明るくなってきましたが・・・今回は最初からこんな階段ばかり・・・!朝も早いし・・・はー、疲れる。
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 「看板があったら、休憩ね!」きついなあ、という気持はみんな一緒だとなんとなく感じます。でも登りたい。休憩のとりかたを考えることで、自分たちをはげましていました。 |
<参加者の様子>
仲間と一緒に山登りをすることや、山遊びの魅力に大いに取り付かれ
「中国地方最高峰の大山に登る」ということを楽しみにしてのぞんでいた。
一方で、いざ登りはじめると、登山口から早速はじまる階段のきつさに少々げんなり。
しかし、1合目ごとに出てくる合数の表示に、確実に登れていることが自分たちで確認できる状況があり
「看板についたら休憩しよう」とお互いにルールを決め、仲間の間での「登り方」を考えて実行する姿もみられた。

6合目の避難小屋には、大勢の登山客でにぎわっていました。他の登山客に混じって登るのもなかなか楽しい。景色も開け、大山の山容も間近にみえてきます。
6合目からは道の様子や見える景色がかわり
いよいよ山頂に近づいてきた、という感じがする。
展望も開けるようになり、桁違いに広がる下界の様子にも感動する。
また、大山の北壁も手に取るようにその様子を見ることができる。
今まで見てきた山といろいろなことが随分違う。
石だらけの急登が続くので更に苦しくなるが
こども達は自信をもって山頂に集中し始めた。足取りも速くなった。
山頂についてから、全員が俄然元気に。
表情も晴れやかで、それぞれに喜びや達成感を感じているようだった。
昼食をすませ、ココアやスープをたっぷり飲んだあと
この班恒例の「鬼ごっこ」が山頂一帯で繰り広げられ、
あまりの元気のよさに他の登山客の注目を集めていた。
下山はブナ林の中を通り、元谷を横切って、大神山神社に降りるルートをとったが
急なくだりにうんざりしたり、石だらけで灰色の風景がひろがる大山の谷の景色に
「ねえ、なんだか俺、不安な気持ちになってきた・・・」と、ぽろりとこぼすこどももいた。
全ての行程を終え大神山神社に下山したこども達は、また途端に元気になり山小屋まで駆け出していく。
「出来るかな?大丈夫かな?」といろんな気持ちをかかえながら、ついにやりきった。
「大変だったけど中国地方で一番高い山にのぼった!頑張った!」という達成感や満足感が感じられ
表情を見ても、またひとつ自信を得た、という感じであった。
 なんてすごい景色!目も心も奪われました。 |
 いよいよ山頂が近づいてきました!木道にのると気持ちもうきうきしてきます。 |
 ついに山頂の避難小屋!後ろの景色はかすみで見えにくいですが、かなりのスケールなのです。 |
<運営について>
前回2班の大山の時とほぼ同じスタッフでの運営。
余裕もあり、スタッフがリラックスできていたのは全体の雰囲気作りにも良かった。
<プログラムの設定について>
大山というフィールドはねらいやコンセプトに合っていた。
大きさや植生、標高によって天候や気温の変化がはっきりと分かることが出来る。
また、1合ごとに合数の表示があり
こどもたちが「自分が今どれくらい登れたか」を確認できる状況は、今回の設定に有効だった。
<安全管理>
雨具や防寒着の携帯。
これまでの山との比較、標高差、ルートの様子、潜んでいる危険(寒さ、落石、強風)など
イラストも使用し事前に説明。
<総合評価>
活動後に作成する「思い出シート」によると、
ある女子は山頂についた時「とびあがりたいほどうれしかった」とのこと。
そして、次は「上には上の山があるから、もっとちょうせんしたい」と書いている。
彼女は小学校6年生なのだが、
登りはじめてから山頂につくまでにあった自分の気持ちをいろいろと書いてくれていた。
『私ははっきりいって大山をなめていました。
でものぼってみると「(頂上は)まだ?」と聞く回数が恐羅漢山よりもふえていました。
だから山って、こんなに大きいんだあと思います。
大山に登る前、トイレに、“クマ目げき”という紙がはられてありました。
クマが出てこないかとばかり考えすぎて、7合目からこわくなったときもあります。
でも無事に頂上についたので良かったです。』
そして、冒頭の山頂についた時の大きな喜び。
 山頂も大勢の登山客!みなさんにまぎれてお昼ご飯。大山ではそんなに珍しくはないのですが、こどもはやはり目立つのか、いろいろと声をかけてくださいます。 |
 山頂でもおにごっこ。1時間くらい一生懸命あそんでいました。そのうち雲もかかってきて大喜び。雲がすぐ近くにあることが、本当にわくわくして嬉しいようです。 |
 下山は大神山神社へ出ます。昨日は安全登山をお願いしました。下りてきて、またご挨拶。無事に下りてこられましたよ!またよろしくお願いします。 |
単純に大きな山に登る、という遊びだけれど
その中でこどもたちは本当にいろいろな気持ちになっている。
今回の「中国地方最高峰の大山に登ろう」という2日間は、彼らにとっては
気持ちの上でもひとつの「挑戦」「冒険」になっていた。
そして しんどかったけどそれも含めて「登った(登れた)」ということが、新たな楽しい体験になり
またひとつ大きな自信になったように感じる。
また、大山は1700mクラスとはいえやはり大きな山で
こども達に自然のスケール・懐の大きさも感じさせてくれていた。
もちろん、今回の大山登山が彼らにとってこのような意味をもったのは
4月からの山遊びを重ねてきた結果であると感じる。
提供し続けてきたのはあくまでも「遊び」の場で、大人が伝えたいと思って大切にしてきたことは
「楽しい」と「好き」の気持ちであった。
その中で、こどもは自分の興味に素直にしたがって遊び、
また大人に導かれながら新しい遊び「山登り」もしながら、
「もっともっと遊びたい」「楽しい!」という気持ちや意欲、自信を習得していったプロセスを感じる。
人が根本的なところでの「生きる力」や「生きる意欲」を習得していくために
「あそび」がどれほど大切なものか、ということを強く感じている。
それも結果を求められるものでなく、また年齢不相応のものでなく
今の自分の興味にしたがって、五感を使って「単純にあそぶ」ことである。
それが自然の中ならなおのこと良いと感じている。