2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
45 広島県山岳連盟 広島県 「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。

「わんぱく登山部」 こどもトレッキング隊! [9/16-17]

 日  時:平成19年9月16日(日)~17日(月・祝)
 場  所:鳥取県西伯郡大山町 大山(国立公園大山・標高1729m)
 参加者:部員16名(男子11名、女子6名)※小学校3~5年生、スタッフ5名
 ねらい:・よりスケールの大きな自然、またその自然の営みや厳しさなどを直接肌で感じる体験
      ・より大きな自然遊びに挑戦する楽しさ


今回は鳥取県の大山(だいせん)にチャレンジ。前の日から山小屋にとまって明日の山登りにそなえます。
大山に入る前に、登山口で「登山届」を書いてポストに入れます。本格的な気分になってきました!
 <タイムスケジュール>

9月16日(日)
07:30  横川集合・出発
11:30  山小屋到着(大山寺内)・生活準備
12:00  昼食
13:00  大山寺散策(大神神社まで)
15:00  入浴
16:00  夕食準備
18:20  夕食
20:30  就寝

9月17日(月・祝)
05:00  朝食
06:20  山小屋出発・登山開始
10:10  登山開始~9合目手前より下山(山頂が暴風雨の為)
11:00  6合目で昼食(避難小屋)
13:00  下山
14:00  入浴・撤収
16:00  現地出発(途中で夕食のお弁当)
20:30  横川着

 <運営ポイント>

事前に大山についての情報をインフォメーション。

 <実施の概要>

これまでのハイキングから様子をかえて、少し本格的な山にチャレンジ。
前泊し、中国地方最高峰の大山の山頂を目指して早朝から登山を開始した。
台風11号の影響で、前夜から強い風が続き、当日も影響が残った。
「行ける所まで行ってみよう!」と大山登山に挑戦。
強い風が吹く中、6合目までは森林に守られ快適に進むことができたが
低木帯が始まる6合目から上は雨。風もまとに受け、危険度が増す。
こども達の意思を確認後、全員で山頂をアタック。
だが、木道のはじまる8合目から先は暴風雨となり、下山が困難になるとの判断と
また こども達自身の判断で山頂まで行くのは危険とし、9合目手前で断念して下山した。


大山のブナ林は中国地方最大級の純林です。大きなブナの森に守られ、台風の中でもしばらくは平気でした。

森の切れ目から広大な展望を垣間見ることができました。大山の大きさが感じられます。ずいぶん高いところまできたぞ!

森が切れました。6合目から先は大山の厳しい顔がまっていました。山頂は雲の中。

 <参加者の様子>

またまた不安がいっぱい!

大人の登山客にも大勢会いました。「おお、がんばれよ~」と声をかけてくれます。

落石注意

「中国地方最高峰の大山に登ってみたい」「どんな山だろう」という気持ちと
「本当に行けるだろうか?」という不安。
今までと違う山に対して、期待と不安と両方もちあわせて登山に望んだ。
登山道が整備され、ほとんど階段になってしまっている大山夏山登山道は
登山口すぐからもうすでにきつい。
寝不足も手伝ってか「なんかいつもより疲れる・・・」という言葉も聞かれた。
いつもは寄り道にもわくのだが、今回は休憩時の表情も冴えない。
「本当に登れるのだろうか」という不安の表情。
3合目、4合目と歩を進めていくうちに
「登れている」ことへの自信も出てきたのか
表情にもようやく余裕がではじめた。
時々木々の間から見える下界の展望に「きれい!」と見入る場面も見られ
登ることへ集中し始めた。
森の外では、日本海にいる台風の風が時折ごうごうとうなりを上げるのだが
大山中腹に広がる中国地方最大級と言われるブナの森に守られ
しばらく道行は快適であった。

その台風の影響で、
森の切れる6合目から先の状況は当初から危ぶまれていた。
実際、風はやまず6合目から先は風に加えて雨も降り始めていた。
寒さも襲う。
危険につき、こども達の体調や気持ちの部分を確認して進めた。
「山頂に行きたい!」というこどもが多く
結局全員が山頂を目指すことになったが、9合目から先は暴風雨。
こども達も全員が「怖い!」ということで、下山を判断。
9合目では、水平に吹く強い風が雨を弾丸のようにとがらせていた。
こども達は初めて「雨が痛い」という感想をもった。
(他の大人の登山者半分も、9合目手前で下山を判断している状態。
スタッフとしても、山頂まで行くのは可能でも下山が逆風になり
こどもの場合は体力的に困難と推測し、退却を判断した。)
6合目まで逃げるように下山して、寒さに震えながら昼食をとった。
こども達の表情は、まさに「ぬきさしならない」状況の中
といった感じであった。

標高が下がり、森に入ると気温は上昇。
暖かくなり、全員がほっとした感じ。急に元気になっていく。
「死ぬかと思った!」と言いながら、嵐の中の登山を無事に終えた自分達を肯定的にとらえられたようだった。


山頂までいかず、ひきかえす大人も沢山みられましが。果たして我々は山頂にいけるのか???

さあ、8合目を越えました!途端にすごい風です!立っているのがやっと!本当にふきとばされそうです!

「雨が痛い!」水平にふく強い風が、小さな雨を弾丸のように尖らせていました。雨が痛いだなんて、はじめて知った!
 <運営について>

プログラムの目標にあわせて準備が十分でなかった。
大山のスケールの大きさについて、行きの車中で見るなどして事前に感じてもらえればと思ったが
台風の影響でほとんどその姿が見えない状態であった。それについてのフォローも十分できていない。
また、大山がどのような山か、今回どのような登山をするのか、という直前の事前説明が不十分。
個人装備についての意味づけがしっかり出来ておらず、蓋を開けてみると
行動着がジーンズや綿シャツだったり、フリースなどの防寒着をデイバックに入れていなかったりする
などが目立った。

 <プログラムの設定について>

ねらいやコンセプトに合ったフィールド。負荷もちょうどよかった。
また、大きさや植生、標高によっての天候や気温の変化、自然の変化がはっきりと分かる。
他の中国地方の山と、様子の違いがはっきりしている。

 <安全管理>

今回は危険につき、9合目で断念して下山。自然の脅威に対峙して、いろいろな気持になりました。嵐の山を体験したこと、その中でちゃんと歩いて、無事に帰ってこられたことへの自信。ほっとして、しかも自信がつくと、頂上にいけなかったくやしさが心の中ににょきにょきと・・・!嵐の中で「次こそは・・!」と意欲をもらったみんなでした。

ポイント・・・雨具や防寒着の携帯。

 <総合評価>

2班にとって初めての「自然の脅威との対峙」であった。
この経験をどのように捉えるのだろうかと不安も感じながら見ていたが
彼らは「楽しかった」「すごい経験をした」と
肯定的に感じていてくれていた。
また、初めて山頂にいけなかったことになったのだが
「くやしい、今度は登りたい」という気持をもったようである。
「嵐の中の登山」を成功させることが出来たのは非常によかったと感じる。
晴れた気持ちの良い山だけが「自然」ではない。
また、いつも快適に山頂にいけるというわけでもない。

雨や風は寒かったりつらかったりすることもあるけれど
こどもにとってはそれらも興味を掻き立てられる新しい世界のようである。
「ものすごく楽しかった!といって帰ってきました」と
ある保護者からご報告があった。

自然の中で寒さやしんどさを体験した時に、大人が
「雨や風はつまらない」「危険だからだめだよ」といってしまうのか
「これも自然の姿だよ」といって謙虚にとらえ、付き合い方を伝えていくのかによって
その後のこども達の世界は左右されるのではないかと感じる。
「この自然は良くて、この自然は悪い」と自然を区切ってこどもに与えてはならないと思う。
どんな自然の中でも、ちゃんと活動できることの喜びや楽しさを伝えて行きたいと思う。



支援団体活動レポート