2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
45 広島県山岳連盟 広島県 「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。

「わんぱく登山部」 夏の大チャレンジ! [8/22-24]

 日  時:平成19年8月22日(水)~24日(金)
 場  所:広島県山県郡安芸太田町 恐羅漢牛小屋高原エコロジーキャンプ場
       深入山・恐羅漢山・牛小屋谷(沢登り)
 参加者:部員15名(男子6名、女子9名)※小学校3~6年生、スタッフ7名
 ねらい.:大きな自然をフィールドにして冒険することの楽しさ。大きなことをやりきる達成感と楽しさ。
       ダイナミックな自然を直接肌で感じる体験。「あそびこむ」時間の提供。

 <タイムスケジュール>

山にはもう秋がおとずれていました。

8月22日(水) 深入山(しんにゅうざん)ハイキング
07:30  横川集合・出発
09:00  いこいの村着(登山口)
09:30  登山開始
10:30  山頂(お弁当)
11:50  下山開始
13:00  下山
14:00  キャンプ場着・生活準備ほか
17:30  夕食
21:00  就寝


簡単そうに見えて、実はきつい深入山!あーつかれたあー。草地に寝ころぶのも今では平気です。

8月23日(木) 恐羅漢山ハイキング
          (奥三段峡からの恐羅漢山一周から変更)

05:00  起床・朝食
06:30  出発・現地判断(10時まで休憩タイム)
10:30  恐羅漢山台所原ルート
14:15  山頂着
15:00  下山開始
15:50  下山
16:00  自由(テントの掃除などが始まる)
18:30  夕食
20:00  シャワー
21:00  就寝


1日目深入山山頂の広場で始まった鬼ごっこ。3日間続きました。しかも本気が入ってかなりダイナミック!走り回る場所にも事欠きません。こども同士が認知しあうのに大きな助けになりました。

8月24日(金) 牛小屋谷沢登り
06:00  起床・朝食
07:30  キャンプ場出発
08:30  牛小屋谷沢登り
13:30  キャンプ場着・昼食
14:00  撤収
15:30  キャンプ場出発(入浴カット)
17:40  横川着

 <運営ポイント>

様子を見て、活動(沢登・山登り)のペースはこどもにおまかせ。
沢登りも出来るようであればルートファインディングもこどもにおまかせで。
沢登りは正面突破型。チャレンジ系で。
(様子を見ながら初めは大人がプッシュ。また大人もチャレンジしながら。)
炊事、生活の運営などは基本大人で管理。こどもはお手伝いとして参加。

 <実施の概要>

広島のゆたかな奥山を舞台に大自然を冒険してあそんでみようという2泊3日のキャンプ。
メインの活動は2日目、沢をのぼり、山を越えてぐるっと一周し
恐羅漢山北側にある巨木のブナの森をめざす「わんぱく登山部の大チャレンジ」だったが、
前夜1時ごろから早朝にかけて激しい雷雨が発生し、沢の水量が急増。現地判断で沢は中止
ルートを山道のみに変更して「恐羅漢山登山」で活動した。
また、2日目午後から天気が回復に向かったことをうけ、3日目を急遽沢登りに変更。
奥三段峡ではなく、牛小屋谷でキャンプ場までつめる沢登りをおこなった。


広島の豊かな奥山を舞台に3日間の「でっかい山遊び」がはじまります。

ガマガエル。小さい!いつも見るのは両手でかかえるような大きなカエルですが、この小ささにみんなびっくり。3日間いろんな生き物を見つけては遊びました。

大気が不安定な日がつづいています。1日目はこの後、ゲリラ雨に逢いました。そして、夜には雷雨!テント浸水。雷に身を寄せ合い、濡れれば乾かし、生活できるように片付けたり、疲れたら休んだり。そして時間をひとつぶも残さずおもいっきり遊んで・・・そんな風に自然の中で過ごしました。
 <参加者の様子>

3日間のさまざまな自然の中でのあそびを通して、15名という人数にもかかわらず
15名のわんぱく登山部という「チーム」が出来上がってきている。
チャレンジすることの楽しさを覚え、沢登りでもより困難なルートを選び、仲間とともに挑んでいく。
生活面も含め、自分でやること、また、自分達でやることに楽しさと喜びを感じてきた、という感じである。
体力的にも余裕のあるこどもが比較的多い。
深入山ハイキングも大人ペースの1時間でやってのけ、山頂で本気の入った鬼ごっこバトルが
約1時間繰り広げられた。
この「鬼ごっこ(通称オニゴ)」は3日間を通してこどものお気に入りのあそびとなり
こども同士が認知しあうのに多いに助けとなった。


1日目前夜の雷雨で、沢が増水。2日目の沢登りは中止に。山道を通って、目的地の巨木ブナの森をめざしました。残念な気持と、前日雷雨の為の寝不足で結構しんどく・・・。ココアの甘さに癒されながら、みんなゆるゆると登ります。

1日目深夜1時。突然の雷雨が襲う。
広島県最高峰の恐羅漢山にあるキャンプ場である。
まるで雷の巣の中に入ってしまったようであった。
雷雲がごうごうと行きかう様子が、
テントの薄皮一枚を通してさわるように感じられた。
テントは浸水。寝袋もあっというまに水浸しに。
こわい、寒い思いをしながらも、
こども達はパニックになることもなく、身を寄せ合ったり、
お互いにおもしろい話をするなどして
眠れない夜を乗り切った。

翌日はメインの活動が予定されていたが、
沢の増水で楽しみにしていた沢のぼりは中止。
睡眠不足も手伝って、大人もこどもも少し落ち込んだ雰囲気であった。
2時間の骨休めをとって
希望者のみでの恐羅漢山台所原ルートのハイキングに活動を変更。
体調を崩していたこども一名をのぞいて全員が参加。
大人もこどももしんどい中での山登りであったが、そんな中でも「楽しさ」を見つけながらのひと時となった。
疲れたら休み、みんなでココアの甘さに癒され、
雨上がりのぬくもった道の脇に甲羅干しに出てくるヘビを見つけては数える。
雷雨の後の森に、鳥達がきれいな声で鳴きあっている。山頂は晴れ。
前回の7月22日では見られなかった広島県最高峰からの展望がのぞめ、こども達も満足な様子であった。


道すがら、甲羅干しで出てくるたくさんのマムシをみつけました。ついでに舞茸も見つけちゃいました。

きつかったけど、それでもやっぱり山が好き。登れば気持ち良いし、空気もおいしい。展望に目を奪われ、おもわず「やっほーーー!!!」

ここにも秋の匂いが。もう萩の花が咲き始めていました。

下山後、大人たちが夕食の準備にとりかかっていると、男の子のテントでこども達がごそごそやっている。
「ほうきかしてもらっても良い?」といって、ほうきをもっていく。
テントから荷物が出されて山になった。
何をしているのかな?と見てみると、昨日の雨で一番被害のあった男子テントを全員で掃除しているのである。
「駐車場のアスファルトはずっとあたたかいから、マットなどはそこで乾かせるよ」と大人の知恵もかしてもらい
テント場の大掃除がはじまった。決して大人が管理したり強制したわけではない。
こども達は自分達で考え、自分達で行動していく楽しさを覚え始めていた。

7月から沢登りに「食いっぱぐれ」ているこの班のこども達に、大人たちは
なんとかして沢登りを経験させてやりたかった。
スタッフの提案で、奥三段峡とは反対側のもうひとつの谷「牛小屋谷」の沢登りが可能ではないかということになった。
牛小屋谷はこのキャンプ場に続くひと周り小さな谷である。奥三段峡と異なり、フィックスロープなどの必要がない。
谷にそって遊歩道も続いており、高巻きやエスケープも容易である。幸い天候は回復に向かっていた。
そして、ようやくこの班の「沢登り」が実現することとなる。

「小川のような谷」であることが、この時のこども達に幸いした。
大きな確保システムがいらないこの沢でのチャレンジ形態は「正面突破型」とした。
初めての沢に驚きと興奮であったが、すぐに滝登りに夢中になっていく。
はじめは大人の手も借りていたが、そのうち要領がわかってくると
「行ってもいい?」と自分達でどんどん進みたがるようになった。
へつり方も登り方も、まったく大人顔負けで様になっている。
ルートファインディングも自分達でおこなえるようになっていく。
動きが大きくなる。表情がたくましくなった。こども同士で手を差し伸べる。
大人に対しても手を差し伸べてくれる。「がんばって!」と声がかかる。
最後尾を歩くこどもにスタッフの一人が「手伝おうか?」と声をかけた。
首を横にふって「自分でやる」と楽しそうに答えたという。
大人もこどもも共に「楽しさ」を共有しあった最高の瞬間を向かえ、3日間を終えた。

 <運営について>

3日目は晴れ!ようやく、みんなが待ちに待った沢登りが出来ました。

生活・活動ともに良い運営が出来たと感じる。
活動は変更が相次いだが、
その時のこどもの状況やフィールドの状況にあわせて
柔軟に運営を変更し対応することが出来た。

 <プログラムの設定について>

天候による活動の中止で「大チャレンジ」とまではいかなかった。
しかし、最終日の「沢登り」では「挑んで遊ぶ楽しさ」や
「仲間とともにやること、とも挑むことの楽しさ」、「自己効力感」
などを提供できたと感じる。
また、自然の脅威にさらされながらも
3日間を仲間とともに遊びきったことは、大きく心揺れる出来事として提供できたと思う。


今回の沢のぼりはおもいっきり正面突破です!

岩ののぼりやへつりも、進むごとに頼もしくなっていきます。動きも大きく、表情はたくましくなっていきました。

この3日間、自然の営みを直接肌で感じながら仲間とともにあそび、すごしてきました。3日目のこの沢のぼりが今回の集大成になりました。一気にたくましくなったみんな。わんぱく登山部というチームが始まりました。来月9月は中国地方最高峰、大山にチャレンジです!
 <安全管理>

ポイント・・・沢登りは基本大人先行
・離れすぎないように、距離を管理。先頭が行き過ぎるようであれば安全の範囲でとめる。
・ヘルメット、ハーネス、ライフジャケット使用。(牛小屋谷はハーネスの必要はないが、装着の練習として)
・こどもは空身。飲み水・食料・フリースは大人が荷揚げ。
・運動靴の上から靴下を着用。(すべりどめ)
・飲み水・食料・救急セット・無線機。

生活・その他・・・脱水・夏バテ対策
・麦茶やスポーツドリンクのほか、旬のくだもの、食事で栄養のバランスに注意。
・食事のカロリー計算と、なるべく食がすすみやすいメニューを工夫。
・フリースなどの防寒着持参(高原での寒さ対策)
・緊急連絡などのためのバックアップの配備

 <総合評価>

自然の脅威、自然の営みを謙虚に受け止めながら
大人もこどもも共に乗り切って、最終的に中身の濃い3日間のキャンプを成功させたと感じる。
メインの「恐羅漢山一周」チャレンジが出来なかったことは本当に残念に思う。
しかし、それから得られると思われるものをしのぐほどの、生き生きとした時間を過ごすことが出来た。
こども達は仲間とともに助け合ったり、協力しあったりしながら
チャレンジしていくことの楽しさの一端を垣間見、そのことに大いに興味をもってきた、といった感じである。
わんぱく登山部では教育目標として、そのようなことはあえて掲げていない。
「楽しい」と「好き」を大人と共に追求する中で、こども達が自ら見つけ出した「楽しさ」である。
大人自身も楽しめた3日間。
次回9月が本当に楽しみになる、「次につながっている」8月の活動になった。



支援団体活動レポート