2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。
NO | 学校・団体名 | 都道府県 | 企画の概要 |
45 |
広島県山岳連盟 |
広島県 |
「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。 |
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「わんぱく登山部」 おもいっきり夏遊び!~沢登りであそぼう!~ [7/28]
日 時:平成19年7月28日(土)
場 所:広島県山県郡安芸太田町 奥三段峡
参加者:部員17名(男子9名、女子8名)※小学校3~6年生、スタッフ6名
ねらい.:ダイナミックな自然遊びをするなかで、挑んで遊ぶ楽しさを感じる。
ダイナミックな自然を直接肌で感じる体験。

大人の人にチェックをしてもらいながら、みんな神妙に装備付け。真剣です。
<タイムスケジュール>
07:30 横川集合・出発
09:30 奥三段峡着・説明・装備付け
10:50 沢登り開始、登山開始
13:30 昼食(畳平・たたみだいら)
14:40 下山開始
17:00 終了
17:15 現地出発
18:45 横川着
<運営ポイント>
大人先行。「沢登り」というちょっと危険ですごくおもしろそうな自然遊びを「やってみる」。
 沢の装備もつけて本格的な気分になってきた!沢の音もしてわくわく。でも危険も感じるのでまっさんの説明も聞きいります。 |
 うわあ、沢の水ってつめたい! |
 F2の滝は登れないので「高巻き」ます。ザイルやカラビナなどで確保しながらわたります。「一番危険!」と思ったところです。 |
<実施の概要>
いつもは山道を歩いて山にのぼるけれど、今回は山に流れている川「沢」の中を歩いて登る
「沢登り」というあそびをやってみよう、という内容。
ゴールは7番目の大きな滝の上にある「自然のプール(淵)」。
そこまでいって自然のプールで泳いでかえろう、ということにした。
実際には予想したよりもペースが遅く、ゴール手前の「畳平」という場所で昼食をとりひきかえした。
タイムスケジュールが予定より1時間おくれ、迎えの保護者にはご心配をおかけした。
 さあ、いよいよ沢だよ!川には道がないからまっさんが道をみつけていきます。茶色い「こけ」はすべるから気をつけてね。 |
 みんな、水にはいればいいのに・・・。でも、なんだかわくわくきらきらして楽しそうです。靴の上から靴下をはいて、かわいらしい様子。 |
 水もみどりもきらきら。 |
<参加者の様子>
沢では危険もいっぱい感じるけれど、その先にそれぞれのレベルで「楽しい!」をみつけたという感じ。
まず日常にはない世界に、命を守る道具をつけ、自分の足で分け入り、遊びきった、という感じであった。
最初の沢へのアプローチは滝の高巻きで大人でも危険を感じる。
傾斜面で足元も悪く、大人もこどもも緊張が続く。40分かけての高巻きはさすがに疲れたようだった。
いよいよ水に入る場面になり、喜んでつかるものと予想していたが、意外にもみんな足踏み。
目はきらきらしているのだが、なかなか慎重。遡行しながら徐々に水にぬれることになれていく。
しかし夢中である。また危険を身近に感じる分、集中している。
「(自分で自分を守るためにも)グループのメンバーからはぐれないように」と
伝えたことなどもしっかり覚えていて、はぐれそうなメンバーを見ると
「(危険だから)はぐれたらだめだ」と働きかけている場面もみられた。
つれていってもらう、というのではなく自分のもになっているようだった。
沢になれてきて、沢の滑り台など どんどんチャレンジしていく子もいれば
やってみたいがやっぱりこわくて出来ない子、
誘惑にまけてやってみるのだが、水流の力を感じると思い切れない子などさまざま。
体力に余裕のないこどもは水にあまりつかりたくないようだった。
しかし、沢という日常とかけはなれた環境で、緊張感も開放感も両方味わいながら
「すごいあそびをやった」という表情はうかがえた。
歩みが遅く、グループからはなれてしまう子もいたが決して途中でなげださない。
嫌がるのかな、とおもってみていても、楽しそうに向かっている。
時間は登り2時間30分、下り2時間30分。さすがに疲れる。帰りのバスは全員爆睡であった。
<運営について>

畳平(たたみだいら)に到着しました。ひときわめだつ、美しい景観です。
良くも悪くも、沢登りという山遊びを「やってみた」」という感じになった。
わんぱく登山部自体、こどもの沢登りのサポートがはじめてであり
スタッフも安全確保に手一杯であった。ひとりひとりのこどもについて
ねらいに向けてのこまかなケアまでは手がまわらなかった。
今回のねらいとしては「挑んであそぶ楽しさ」を提供したいと考えていたが
個々のレベルでは感じてもらえているものの、全体的にしっかり落とし込めていないように感じる。
ひとつの沢をのぼって降りてくる、ということだけでも
彼らにとっては大きな冒険をやってのけたことになるのだが
こちらの働きかけで、そのあたりだけでももう少し明確にしてあげることも出来ただろう。
振り返ってみると、あれもできた、これもできたともったいない感じもするのだが
それも無事に沢登りを終えられたからこそである。協力してくださった方々に心から感謝したい。
また、大人が自然に対して真剣な様子を見て何かを感じてもらうことも
わんぱく登山部が提供したいもののひとつでもある。
こどもたちに受け止めてもらえていたらありがたい。
<プログラムの設定について>
プログラム設定自体、少し大きすぎたか。
川をさかのぼってあそぼう、沢登りという遊びを楽しもう、というイメージだったが
かなりの大冒険になってしまった。少し負荷が大きかった。
 今日の昼食のおかずはチキンラーメンです。おわんを持ってお湯をもらいます。 |
 沢の水を汚さず、沢の水がつかえて、軽くて疲れた体でも食がすすむもの・・「あ、参加賞でもらったチキンラーメンが良いじゃないか!」ということになったのです。 野菜とおもしろさもくわえるのがわんぱく流。コーン・ねぎ付にしてみました。 |
 たべるのに夢中。チキンラーメンのほかに、お母さんのおにぎりもあります。 お母さんのおにぎりがおいしいから、「ひとくちたべて」とスタッフに持ってきてくれた子もいました。ありがとう! |
<安全管理>
ポイント・・・基本大人先行。
・3~4名のグループにわけ、大人がつく
・ヘルメット、ハーネス、ライフジャケット使用。沢に入ってから帰ってくるまではずさない。
(装着解除は大人が行う)
・奥三段峡のアプローチ、F7の高巻きは事前にフィックスロープを設置。フィックスロープ使用。
・こどもは空身。おにぎり、フリース、雨具、食器などのこどもの持ち物は各グループのスタッフがあずかり
荷揚げをする。
・こども用飲料水10L~。こどもにも家からスポーツドリンクなど持参してもらい、個別の飲み物はバスに。
(帰ってからの飲み物として)
・運動靴の上から靴下を着用。(すべりどめ)
(伝えておくこと) 事前に活動要項で沢あそびの概要、危険について告知済み。
※当日のインフォメーション
・メンバーと担当の大人を覚えること。グループのメンバーと絶対はぐれないこと。
・まっさんより先には行かない。
・各装備の意味を説明。意味づけ。(ヘルメット、ハーネス、ライフジャケット)
・装備は命を守るものであることと、正確に使うことで自分で自分の命を守れること。
・命を守るための3つの沢遊び道具は、帰ってくるまで絶対にはずさない。
大人の人がよいというまでつけておくこと。
事例・・・アプローチで踏みぬき。行き帰り1名づつ。
行きの1名は少し多動気味で、危険な道にもかかわらず慎重さがかけており、集中していなかった。
踏み抜き、体が谷に落ちたが周りの草や木でとまる。
後ろについていたスタッフがすぐにライフジャケットをつかんでひっぱりあげた。
帰りの1名は沢がおわり、高巻きに入る前の道で踏み抜く。
小さな段差であったので危険はすくなかったが、体がすっぽり入ってしまった。
すぐ後ろのスタッフが引き上げる。
(要因分析) 行きの1名は集中力にかけ、危険な状況を認知しどういう行動をとったらよいのかが
イメージできていないようだった。踏み抜いてから直後も、慎重にすすもうという感じがしなかった。
帰りの1名は疲労からくるものと思われた。
(今後の対策) 踏み抜きについてのインフォメーションを事前におこなう。
出来るだけ小グループ内でおこない、しっかり理解してもらうようにする。
多動気味なメンバーについては特に注意を。必要な場合にはスタッフの増員・確保。
下山時の疲労による事故について再度注意する。
活動部員の実際と比較して、活動時の負荷が大きくなりすぎないようにプログラムを考える。
 畳平の自然のウォータースライダー。 男の子が夢中になりました。 プールなんかよりずっとおもしろいよ! |
 帰りは楽勝!およいじゃえ! |
 最初ははじめての沢に緊張もしていたけれど、何が危険かわかってきて、水にもなれてくると、おもしろいことがいっぱいある、ってわかってきました。水の冷たさも、歩きにくさもすべてが自然そのままの姿。私達はこんな「世界」に生きています。この本当の世界での本当の「楽しい」をみつけてもらえたかな?
次回8月は、この沢をのぼりつめてみましょう! |
<総合評価>
今回はわんぱく登山部にとっても、とにかく「やってみる」というチャレンジの一日であった。
こどもの沢登りのサポートという初めての試みは、まずは「成功」。
ひとりのけが人もなく安全を確保し、17名のこども達の沢登りを成功させることができた。
このことだけでも、本当に大きな意味がある。
提供する側の言い訳のようにも聞こえて恐縮ではあるが
プログラムがおそまつなものでも こどもを自然に放り込めば、あとは自然がうけとめ
「やってくれた」と感じることがある。
企画をする側としては、「あれもできた、これもできた」と自分のいたらなさを痛感するのだが
そのたびに自然に助けられ、自然の圧倒的な包容力の前に頭が下がる思いがする。
「自然の中にこども達を連れ出した。それだけで我々の勝利だよ!」といってくれた人がいたが
今回はまさにそんな回だったなあ、と思う。
こども達には「大きなあそびをやってのけた」という機会を提供できたと感じる。
また、「挑んで遊ぶ楽しさ」も、個々のレベルながら提供できたと思う。
はじめての試みには次につながるものが宝石のようにちりばめられている。
プログラム設定や運営、安全管理なども含めて、今回得たものを次につなげていきたいと思う。