2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
45 広島県山岳連盟 広島県 「わんぱく登山部」
山登りや沢登などの山遊びを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった、気持ちの原体験を提供する活動。

「わんぱく登山部」 おもいっきり夏遊び!~雨の森を楽しもう!~ [7/22]

 日  時:平成19年7月22日(日)
 場  所:広島県山県郡安芸太田町 恐羅漢山(標高1346m、広島県最高峰)
 参加者:部員17名(男子7名、女子10名)※小学校3~6年生、スタッフ4名
 ねらい.:ダイナミックな自然遊びをするなかで、挑んで遊ぶ楽しさを感じる。
       ダイナミックな自然を直接肌で感じる体験。

 <タイムスケジュール>

沢登りをたのしみにしていたけれど、あいにくの雨。みんなちょっと残念そう。 でもこんな雨の日は、森にあそびにいくといいですよ!
お気に入りのカッパをきて、恐羅漢の森に出発です。

07:30  横川集合・出発
09:30  奥三段峡着・沢の確認と判断
10:00  恐羅漢キャンプ場入り口着、登山開始
11:30  昼食の準備・昼食
14:00  山頂・下山
15:30  終了
16:00  現地出発
17:50  横川着

 <運営ポイント>

雨という自然を感じる。雨の森の良さを楽しむ。
下山開始時間以外はタイムスケジュールは自由。
大人が雨を楽しむ。


森に入ると、木が雨粒をさえぎってくれます。動くと熱くなるので、しだいにみんなカッパをぬぎはじめます。

お腹がすいてきたので、途中でお昼ご飯をとることにしました。
簡単な屋根も作って休憩です。

大人の登山隊がやってきました!
恐羅漢山は人気の山で、他の登山者にもよく会います。お昼ごはんで道をふさいでいましたが、「ラーメン、いいにおいだね~」とみなさん笑ってゆるしてくださいました。

 <実施の概要>

わんぱく登山部ではうんちやおしっこの持ち帰りをしています。最初は抵抗のある子もいたけれど、結局は習慣でしかありません。おしっこが固まることもおもしろくて、「やってみたい!」と興味もでてきました。使い方も慣れてきて、今ではみんな平気です。(ちなみにこれはまっさんのおしっこではありません)

おもいっきり夏を感じるあそびを、と当初沢登りを予定していたが
梅雨明けが予想より遅れ、この日は梅雨最後の日となった。雨。
沢の水量は前日より減っていたが、気温も低く
過酷な沢登りになることが予想されたため、活動を「恐羅漢山登山」に変更。
判断は現地で行った。
本降りの雨ではなく、雲の中の山行きといった感じで
雨の森をしっかり楽しんだ一日となった。

 <参加者の様子>

沢登りを楽しみにしていたこども達だったので
沢NGのインフォメーションがあると「え~~~」と残念がった。
ただ、予想もしていたのか気持の切り替えははやかった。
「雨でものぼるの?」との声もあったが、
「雨の森はすてきだよ!なかなかない機会だからいってみよう。
8月にとっておいた、とっておきの山に今日のぼってしまおう」と伝える。
全体的に否定的な感じはなく、素直に受け入れた雰囲気だった。


雲の立ち込める森で、みんな思い思いにあびます。

森の奥へどんどんわけいります。大きな木が現れはじめます。ブナも出てきます。森も深くなってきて・・・何かいろいろいそうですね。

かどっちのザックカバーに葉っぱのマークがついていました。自然についたんですね。じゃあ、これもつけてみよう!

雨でも晴れでも、メンバーの自然への好奇心は変わらない。
道草たっぷり、沢の水もひとつひとつためす。(今回は「苦い」とのこと)
1346mの恐羅漢山は、雨というより雲の中。
「雲の中にいる」ということが子ども達には興味津々の出来事のようで、目の前の雲の動きにもしきりに目をみはる。
また広島の奥山であり、壮大なブナの森を抱えるこの山は、雨になるとまったく幻想的な光景を繰り広げてみせる。
森の緑が霧にのって空気に溶け、辺りを乳白色の深い緑色に染めている。時折、ゆたっとした風もふく。
そんな森の様子をこどもたちも体全体でみつめている姿がよく見られた。
多い子で5回目、少なくても3回目の活動で、山遊びだけでなくグループ内の関係作りもだいぶ活発になってきた。
グループにいることに安心感も出てきていて、グループのより多くの他人に目が向き始めた。
全体的にリラックスして、よい雰囲気が漂ってきている。

山が好きで、もっと山で遊びたい、もっと大きな山に登ってみたい。
スタッフだけでなく、わんぱく登山部での同年代のメンバーにも興味を持ち始め
もっと一緒に遊んでみたい、という状態。
また、雨という自然を体験し、素直に受け入れ、肯定的にとらえられた一日となった。


恐羅漢頂上に到達!いちばん高いところはどこ?さがしてのぼっています。

みてみて、こんなにどろんこ!

頂上に岩があると必ずのぼりはじめます。自分が怪我をしない範囲で、でもちょっとチャレンジする。
 <運営について>

自然の営みにそって、柔軟に活動内容を変更実施することができた。活動場所の選択が成功だったと思う。
スタッフ不足。今回は4名での実施であったが、登山途中でひとり体調をくずし下山にスタッフをひとりとられる。
3名での実施はハイキングではぎりぎり。

 <プログラムの設定について>

雨の森を楽しむ、というコンセプトに、活動場所・活動内容がちょうどよかった。
負荷もちょうどよく、しっかり「雨」という自然を良さ、楽しさを提供できたと感じる。

 <安全管理>

登頂の記念写真!「変な顔と変なポーズ」で!

雨の森はどうでしたか?歩きにくかったり、ぬれて気持悪かったりもするけれど、雨でなければ見られない森の光景や空気、遊びや楽しさもありました。みんな気づいてくれたかな?次回はこの恐羅漢山のもうひとつの姿を見に行きましょう!

ポイント・・・列がのびすぎないように。大人は前、後ろ、中。
綿製品を避ける。雨具使用。

事例1・・・登り40分程度のところで、女子が泣き始める。
本人にどうしたいのか確認したところ「上りたい」という。
励ましてつづけさせたが、またすぐに泣き始める。さらに咳をはじめた。
様子がおかしく、一緒に来ていた親戚のこどもから
3日前に風邪をこじらせた、ということを聞く。朝は熱がなかったとのこと。
体をさわると熱も感じられ、本人の意思も遊びにむかっていないようだったのでスタッフについてもらい直ちに下山させた。
(要因分析) 3日前の風邪から体調がしっかり回復していない。
雨、山の登りということもあり、体力の消耗がぶりかえしになったか?
風邪という日常的な病気であるが、自然の中では危険が増すという認識が
保護者にもってもらえていないか?
(この日はもともと沢にはいる予定であった)
スタッフが把握できていなかった。
(今後の対策) 朝の時点での健康チェックをしっかり行う。
少し体調不良でも、自然の中にでれば危険なこともあるということを
保護者に理解してもらう。
事前の健康チェックと同時にスタッフに相談してもらえるよう伝える。
(健康管理カードの意味づけと活用)
こども自身にも、少しの体調不良が山では危険なこと
また自分の体調を山に登る前にちゃんと大人の人につたえることも
自分で自分を守る力であることを伝える。

事例2・・・車酔い。嘔吐2名。
(要因分析) 朝、集合の時点で車酔い。もともと車酔いが日常的にある子。
長時間の場合はよくあるとこのこと。(1時間30分はOK)
(今後の対策) 車酔いはある、ということで認識。特別なことではない、という意識をメンバーにもってもらう。
ビニール袋やタオル、水、スポーツ飲料などの常備。

 <総合評価>

ハイキングの活動をひとつ重ねられたことは、この班にとって良い効果をもたらした。
山のおもしろさがどんどん明確になっていているようだ。雨ではあったが沢にくらべて負荷も軽く、その分
今まで一歩踏み出せなかったグループの新しい友達にも意識がむきはじめ、働きかける場面が出てきている。
夏のキャンプにむけて、グループ固めもできつつある。
また、臥龍山(標高県内10位)、吉和冠山(県内2位)、恐羅漢山(県内1位)とステップアップもできていて
良い動機付けにもなっていた。春の森、初夏の森、梅雨の森、とさまざまな自然とふれあえているのも特徴的である。
出来なかった沢登りの魅力をうめるだけの貴重な体験が出来ている。
今回 雨の森プログラムを成功させられたのは、わんぱく登山部にとって大きな財産にもなった。
野外教育・野外活動界で、一般的に雨プログラムが「対処的」な雰囲気をもつのに対して
「雨という自然を楽しもう」という「積極的な雨プログラム」のひとつとして提案できるのではないかと思う。



支援団体活動レポート