2007年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
42 NPO法人 さんぴぃす 兵庫県 「あしや村ゼロエミッションキャンプ」
ゼロミッションの考え方に基づく野外活動を実施し、参加者を地域で今後行われる遊びや、自然体験活動のリーダーとして育成する。異年齢の活動と子どもたちの経験の伝承を復活させる。

「あしや村ゼロエミッションキャンプ」 [12/16]

 日  時:平成19年12月16日(日) 11:00~16:00
 場  所:芦屋市青少年野外活動センター(通称:あしや村)
 参加者:小学生6人、高校生5人、保護者3人、大人3人、スタッフ5人

 <活動スケジュール>

11:00    集合:芦有ゲート前に各自集合
11:00~  登山:集合場所より徒歩でハイキング道を通りあしや村へ
11:30~  昼食作り:役割分担をして昼食作り
13:30~  昼食
14:00~  休憩
14:30~  シンキングタイム:今回の活動で気づいたこと、感じた事を話し合う
15:00~  後片付け
15:30~  下山
16:00    解散:芦有ゲートまで戻り現地解散

 <活動の様子>

出発前の記念撮影

ゼロエミッション?キャンプ?
なかなか聞きなれない言葉だと思いますが、ゼロエミッションとは
国連大学が提唱しているコンセプトで、産業の完全リサイクルを目指す
プロジェクトの事です。
しかし、実際には完全リサイクルやエネルギー損失ゼロは
現実社会では実現不可能な事ですので、一般的には
徹底分別などによりリサイクル効率を高める資源の有効活用など
をする取り組みなどに使われている言葉です。

この理念に基づき、私達は今回震災により施設のライフライン(電気・上下水道設備)が破壊され、その後13年間も経済的な理由から復旧がなされず閉鎖状況が続いているあしや村で、日頃当たり前のように利用している資源(電気・ガス・水・食料など)や設備(水道・トイレ・コンロ・暖房器具など)の大切さと便利さを再認識し、自然と人との共存を考えるための環境体験キャンプを行いました。 ゼロエミッションキャンプは、今回初めて行われる取組であり、今後より多くの人にも体験してもらえる活動に育てていくためのプレ活動として、今後の指導者養成も兼ねて実施をしました。


具体的には、芦屋市内で調達可能な食材を集め山に登り、昼食作りと食後の残飯処理やトイレなど、日常生活で必要不可欠な問題をどのように解決していくかを参加者と一緒に考えました。

まず、飲み水は六甲産の水(市販されているペットボトル飲料水)、メインの食材は猪(もちろん、今回は精肉店より調達しましたが、昔の人にとっては地元で獲れる貴重なタンパク源でした)、野菜も有機無農薬栽培で芦屋市と近隣地域で採れたものを集めました。(モグラがかじった跡のある人参や夜盗虫がいっぱい出てくる朝採りの白菜など)。そして地元で作られた豆腐と味噌を使ってボタン鍋を作りました。 限られた飲料水なので、野菜などを洗うのは、そばを流れる川を利用し、お鍋のお湯を沸かすために、山から乾いた木や落ち葉などを集めました。 火だねは、虫眼鏡で太陽の光を集め着火に挑戦したのですが、当日の天候がうす曇りだったため、白煙は上がり、もう少しで着火か・・・といった状態までは出来たのですが、残念ながら今回は太陽光により着火は出来ませんでした。


大根、人参、白菜など

川で野菜を洗っている様子

虫眼鏡による火だね作り

美味しいボタン鍋をみんなで食べた後、大きな問題が発生!具材と汁が少し残ったのです。 今回、ゴボウやニンジンの皮は新鮮なものでしたので、すべて剥かずに全部食べたのですが、付け根の固い部分など一部食べられない部分も残っています。 これをどうしようか?という事で参加者からいろいろな意見が出ました。 最初は単純に持って帰ればいい・・・とか、埋めればいつかは腐ってなくなる・・・などに意見が出ましたが、「今回だけであればそれでいいが、もっと大勢の人がみんな同じ事をしたらどうなるのか?」「持ち帰ったとしても、結局はエネルギーを使って処理するのだから、ゼロエミッションの考えからすると、それでいいのかな?」といった問いかけをすると、「うーーん・・・どうしよう?」とちょっと困った顔も見せていました。

すると、「菌に分解させると、早く無くなるよ」と一人の参加者が口火を切ると、「トイレなんかにも使われているよ」と、堰を切ったようにそれぞれが知っている知識やアイデアを出し始めました。 そして、それらのアイデアを着実に実行していく事で、大勢の人と一緒にキャンプをする事も出来そうだという結論に至りました。 そして今回は残った具と汁は希望者が持ち帰り、自分達のお腹に仕舞う事で決着し、野菜くずは現時点では処理が難しいので、持ち帰り通常処理(生ゴミとして処分)する事になりました。


シンキングタイムの様子

これで一件落着かと思われましたが、更に大きな落とし穴発見! お鍋をきれいにする方法は・・・? ボタン鍋は、肉から出た脂がとても多く、冷えると白い脂となって鍋にこびり付きます。 家であれば、洗剤をかけお湯で洗い流せば、下水道を通り下水上で処理してもらえるのですが、ここにはその設備がありません。川の水で洗えば、油が川一面に広がり野菜のように川の水を使う事も不可能です。洗った水をどこかに集め、バイオトイレ同様、いろいろな菌を使って下水処理をする事も可能ですが、その為には専用の設備が必要で、アイデアや知識としてはわかっていても、今すぐ出来ない事も学びました。 そこで、今回はゼロエミッションの考えには反しますが、新聞紙で空ぶきして脂を取り、その新聞紙は燃料として利用する事にしました。ただし、今後はこんな事をしなくても済むように、いろいろなところに働きかけていきたいと、みんなで約束もしました。


枯葉の絨緞に座りみんなで考え中

こうして、たった数時間ですが日頃当たり前のようにあるものが無い別世界での体験は、子ども達だけでなく、大人にも多くの大切なものを思い出すきっかけを与えてくれました。 そして、この参加者が来年以降、更に多くに人と共に、この活動を続けていく事で、いつの日か人と自然が共存可能か空間を市民の手で作りあげることが出来ると確信が得られた活動でした。



支援団体活動レポート