表彰式と記念シンポジウムのご報告    
安藤百福理事長のご挨拶
 平成16年度トム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰式と記念シンポジウムが、1月31日、大阪府池田市のインスタントラーメン発明記念館で開催され、自然体験活動や教育関係者などおよそ150名が参加した。
 まず、安藤財団の安藤百福理事長から、平成16年度トム・ソーヤ-スクール企画コンテストの表彰団体に祝辞と、参加者への挨拶があった。

中山成彬文部科学大臣からのご祝辞要旨(代読)
 続いて、文部科学省の岩上安孝生涯スポーツ課長から、中山成彬文部科学大臣の代読で、「受賞団体の活動は創造性やチャレンジ精神を育むために、創意工夫されたすばらしい自然体験活動であった。」そして「今後も豊かな心、健やかな身体を育む自然体験活動を実施し、子ども達に夢を与える事業を企画していただきたい。」との祝辞があった。

講評(要旨)
 審査委員を代表して、岡島成行大妻女子大学教授が、各賞が決定した経緯などを解説した。
 文部科学大臣奨励賞を受賞した、「由岐町立伊座利小学校 由岐中伊座利分校(徳島県)」の「基地づくり」に挑戦は、「ひみつ基地」建設という小さな夢を実現させるため、子ども達の主体性を尊重しながら地元の大人も参加し、地域が一体となった活動を実施。小学1年生から中学3年生までのメンバーが、それぞれの役割を分担し、作業する中で、達成感、充実感、喜びを実感できる活動になっていたこと。さらに学校の先生方の熱意と、地域で子どもを育てるという町全体の取り組みが、地域活性化につながっていることも高い評価があった。

 今年度より一般団体の部として設けられた安藤百福賞を受賞した、特定非営利活動法人やまんばの会の「やまんばの森学園」は、里山の保全をテーマとした同会の自然体験のコンセプトと、事業のねらいが明確に示された活動である。子どもたちが大きく変化する活動の状況がよく把握され、自然体験活動の学習効果がよくあらわれている。多くの子どもたちが参加できる仕組みと指導体制、プログラムが用意された通年型活動で、日常的に自然体験の機会と場の提供を行なった精力的な活動が高く評価された。

 また、学校団体部門の優秀賞に選ばれた、岡山県赤磐郡赤坂町立軽部小学校の「こちら吉井川環境調査隊」は、科学的な視点と自然体験学習をうまく組み合わせて、吉井川流域を上流・中流・下流と定点観測し、完成度の高い環境教育を行ったことが評価されたと解説。
 一般団体部門の優秀賞の史跡猿ヶ城友の会の「戦国狼煙わくわく実験」は、戦国時代に行われた狼煙の実証を25kmにわたっておこない、狼煙台確保のための間伐や、古道の整備などの体験活動を実施した。狼煙の実証によって、現代の情報ネットワークとの違いを体験し、子ども達に「通信」や「コミュニケーション」について考える機会を提供するなどのユニークさが、評価の対象になったと受賞理由を説明した。

表彰
学校団体部門
文部科学大臣奨励賞
 100万円+副賞チキンラーメン1年分
由岐町立伊座利小学校 由岐中伊座利分校(徳島県)
テーマ「基地づくりに挑戦」

一般団体部門
安藤百福賞
 100万円+副賞チキンラーメン1年分
NPO法人 やまんばの会(滋賀県)
テーマ 「やまんばの森学園」


学校団体部門  
優秀賞
 50万円+副賞チキンラーメン半年分
赤坂町立軽部小学校(岡山県)
テーマ 「こちら吉井川環境調査隊」

一般団体部門
優秀賞
 50万円+副賞チキンラーメン半年分
史跡猿ヶ城友の会(長野県)

受賞団体報告(詳細は追って掲載します)
由岐町立伊座利小学校 由岐中伊座利分校(徳島県)
NPO法人 やまんばの会(滋賀県)
赤坂町立軽部小学校(岡山県)
史跡猿ヶ城友の会(長野県)

記念シンポジウム(敬称略・順不同)(詳細はこちら
トム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰式を記念して、シンポジウムが開催されました。
テーマ
  『自然体験で知力をのばす』
コーディネーター
  岡島 成行(大妻女子大学教授)
パネリスト
  堀 ちえみ氏(タレント)
  杉原 五雄氏(元渋谷区立中幡小学校校長)
   ※平成14年度最優秀賞受賞団体
  浦田 愛氏(ほしはら山の学校塾長)
   ※平成15年度文部科学大臣奨励賞受賞団体
要旨
 岡島教授のコーディネートで行われたシンポジウムでは、昨年文部科学大臣奨励賞を受賞した、広島県のほしはら山の学校の浦田塾長が、地域ではまだ受賞の余韻が残っていて、これら先5~10年もこの余韻が続くのではと思う。メディアにも取り上げられて、過疎の地域がこれほど注目されたことはなかったのではないか。
 自然体験に来る子どもたちにとって、指導するおじさんたちは大変格好良く見える。どんなことでもできるので、憧れの存在だ。一方で、指導のレベルを上げていくには、指導者の教育や情報の交流が必要であると、指導体制の課題を指摘。

 初年度最優秀賞を受賞した、元渋谷区立中幡小学校校長の杉原先生は、現在学力の低下が話題になっているが、自然体験活動で学力が向上するのは間違いないし、いかに大切かを伝えていくことが必要だ。
 ただ、学校の教育現場で自然体験を進めていく上で、まず自然体験の定義が不明確なこと、場所がない、教師の力量不足、予算がないことなど課題が山積し、厳しい現状に変わりはないと指摘した。そして、「生活の知恵として利用するものが学力」であり、「知識を租借して、知恵にする能力が自然体験」だと定義。

 タレントの堀ちえみさんは、子ども達5人の子育てのなかで、自然体験がどれだけ大切であったかを、具体的な経験を例にあげて、わかりやすく語りかけた。
 家族みんなで手をつないで山に登っていたし、あの頃は楽しかったと言える日を夢見て、いま、いっぱい時間をつくって子どもたちと接している。子ども達の精神的なたくましさ、優しい心、粘り強さなどは家族ぐるみの自然体験が育んでくれた。そして、いい親子関係の醸成には、自然体験がいいと思っていると感想を述べた。

閉会の挨拶要旨
 安藤宏基安藤財団副理事長から、シンポジウムや受賞団体の発表で、子どもの自然体験は、大人の責任でもあると強く感じた。子ども時代の自然体験活動で不思議に思ったことや、疑問に感じたことがチャレンジ精神につながり、自然の中で、自分自身で全てを行うということが自活力を育む。また、地震や津波などの自然災害にあった場合には、生きていく力が必要であり、それには子どもの頃の自然体験も大変重要だ。
 そして、来年度はさらにすばらしい企画の実施を期待すると締めくくり、受賞団体、参加者、関係者への謝意を述べ、全てのスケジュールを終了した。