これから自然体験活動を行おうとする指導者の方や先生、お父さん・お母さんにもぜひ読んでいただきたい、おすすめの本を紹介します。(価格は掲載時のものです)

『大ピンチずかん2』

好評の『大ピンチずかん』の続編である。ケーキが倒れそうになったり、倒れてしまったり。気をつけていても倒れてしまうことが多い。また、スティックのりの蓋が開かなかったり、カレーが服についてしまったりと、日常生活で私たち大人でも、ついやらかしてしまう大ピンチが、思わず微笑んでしまう愉快なイラストともに綴られている。大ピンチの事態は、失敗のとなりにあるように思う。こんな失敗はいくら経験しても、何度学習しても繰り返してしまうことが多い。クスッと微笑んでしまうのは、そんな日常が誰にでもあるからだろうか。子どもたちと読んでほしいお薦めの『大ピンチずかん2』である。
鈴木 のりたけ 作 小学館 刊  定価1,500円+税

『100BASICS』~語り継ぎたいアウトドア服&道具100選~

かつて、山の道具には物語があると聞かされたことがある。現代ではアウトドア用のウェアやギアだろうか。本書はいまトレンドのウェアと道具類を100選として紹介している。
紹介されているモノの多くは、キャンプシーンに限らず日常生活でも利用できる。テント、炊事用具、食器、ナイフ、それにパックやウェアなどだ。最新の素材と伝統が息づいたモノが紹介され、その一つ一つに拘りとストーリーがある。ブームとしてのキャンプは収束しつつあるが、コアなキャンパーやアウトドアズマンは確実に増加していると言われている。そんな人たちにもお薦めの「100BASICS」である。
世界文化社 刊 定価 980円(税込)

BRUTUS「CASA」9月号 『こどもの本100』

児童書や児童文学などに分類される図書に、大人が読んでも面白い、いや、ためになるものが多い。そんな「こどもの本」が100冊紹介されている。案外知らなかった本もたくさんあり、手に取って読んでみたいと思う児童書ばかりである。
壁に掛けて眺めて見たくなるような、すばらしい原画や挿絵も多い。コミックも描かれた原画で、その時代や歴史的背景がわかるなど、大人も目を通してみる価値は高い。動物の目線で書かれた『冒険者たち』、絵本で描かれた移民の話など、実に多彩な「こどもの本」が数多くある。お薦めの『こどもの本100』である。
マガジンハウス 刊 定価1.080円(税込み)

『NO SIGNAL』 写真・文 ブリス・ポリトラーノ 訳者  山本 知子

都会から離れて、あるいは脱出して、自然の中での生活を選択した人々の物語である。
アルゼンチンのパタゴニアで、ガウチョ(南米のカウボーイ)として厳しい自然のなかで生活するファミリー。最も近い隣人の家まで馬で45分はかかる地が、生活の拠点だ。
あるいは、フィンランドラップランドのライフラインが何もない極北の地で生きる女性。犬ぞりが生活の最も大切な手段のひとつだ。その地での営みは常に85頭のハスキー犬とともにある。
また、自分の食べるものは自分で生産するという信念で、米国ユタ州の大自然のなかで自給自足の生活をしている夫婦。他にもイランの砂漠で騎手を選んだ大学教授やイングランドでトレーラハウスを住居とする家族。アラスカでの牡蠣の養殖で生活の糧を得る男性。そして、ノルウェイの無人島で灯台守として生活する一人の女性など、10人のライフスタイルが紹介されている。
「現代社会に生きながらも自然に寄り添うことができます。どちらか一方を選んで、これまでの人生の楽しみをすべて捨て必要なんてありません。」と語るのは、ギリシャの島の廃墟で住む女性だ。本書に登場する彼らは、決して都市生活を否定するのではなく、うまく距離を取りながら、自然の中で自らの生き方の本質を見いだそうとしているのではないか。
10人の自然とともにある生き方が、美しい写真とともに描かれている。ぜひ読んでみたいお薦めの図書である。
日経ナショナルジオグラフィック 刊  定価2,200円 + 税

地球の歩き方的『世界のなんでもランキング』 

外国に出かけていると、その地で気になることがたくさんある。例えばフランスでは、大勢の観光客に出会う度に、この国の観光客は何人ぐらいだろうか。ルーブル博物館では、どのぐらいの入場者があって、世界の博物館では何番目なのか。ニュージーランドでは、空気がきれいだと感じるが、世界ランキングではとか。飛行機のエコノミークラスに座っていると、どのキャリアが人気なのだろうか。そんな数々の疑問と不思議が、たくさん湧いてくることがある。
ここ3年ほど、コロナ禍で外国に出かける機会は大変少なくなった。外国旅行の必需品でもあった、『地球の歩き方』のお世話になることも、ほとんどなくなった感がある。が、そんな閉塞感が漂った中で、本書が登場した。興味が湧き好奇心を触発するような130テーマを選んで、それぞれランキングをしている。疑問解決がたくさんあって、再開しつつある海外旅行での視野が広がる、お薦めの『地球の歩き方』である。
地球の歩き方 刊  定価 1,760円(税込み)

『日本の聖地100』 カーサ ブルータス特別編集 

日本には古くから自然界で数多くの神々が祀られてきた。山々の頂、山岳地の露岩、森の大樹などはもちろん、人々の暮らしの中にも神様が祭祀されている。
そんな中で古くから人々が敬い、信仰の対象となっている日本の聖地が全国に数多くある。本誌では聖地の中で伊勢神宮、出雲大社、熊野大社、厳島神社などをはじめ100の神社などをわかりやすく紹介している。また、建築様式などを現代アートの視点で解説しているのも新鮮である。知らなかった神社の歴史や、聖地としての成り立ちがよく理解できる。本誌を参考に、日本の聖地を巡る旅に出かけるのもいいだろう。
マガジンハウス 刊   定価 1,650円(税込)

『Tarzan』no.843 ~脳もカラダも鍛えられる!『歩く』チカラ~ 

コロナ禍もあって「歩く」が注目されている。健康のため、リフレッシュのため、体を鍛えるため、そしてレクレーションなど、目的が異なるものの運動の基本は「歩く」だろう。本誌では「歩く」を、多様なニーズに応える内容となっている。
「歩く」で、脳が鍛えられ、気分も明るくなる。歩き方、歩きのメンテナンスなどのほか、歩くための用具(ギア)、さらに関節の役割など、体の動かし方についてもわかりやすく解説している。そして、山など自然を歩くための基礎知識も掲載されている。あらゆる「歩き」のためにぜひ目を通してみたい、お薦めの特集である。
マガジンハウス 刊   定価 690円(税込)

『大ピンチずかん』 

日常生活の中で「ピンチ」や失敗に直面することはたくさんある。牛乳をこぼしたり、紙パック飲料の中にストローを落としたり、あるいはトイレに紙がなかったり・・・そんなピンチを、絵本でわかりやすく解説している。児童書ではあるが、大人が見ても妙に納得してしまう。ピンチを切り抜ける方法が書かれたページや、ピンチを恐れず、立ち向かうことも考えさせようとしている。子どもたちと一緒に、ピンチのシーンと解決法を話し合ってみることも楽しい。イラストを見て納得しながら、「あるある!」と「クスッ」と思わず微笑んでしまう、お薦めの図書である。
鈴木 のりたけ 著 小学館 刊  定価 1,500円 + 税

『これでいいのか登山道』 

「人が歩くところに道が出来た」。登山道も同じである。何げなく歩いている、登っている登山道はいつできたのか、だれが管理しているのか、と思うことがある。本書は登山道やハイキング道の成り立ちと現状、問題点などを多角的に検証して提言を行っている。
また、全国各地の登山道を調査し、登山事故と自己責任や管理者との関係などにも論及している。さらに、登山道の歴史や「日本の美しい風景の再生に向けて」など、興味深い記述も多い。巻末の登山道法の制定についての提言も、活動の参考になるだろう。
登山道は自然体験活動のステージであり、指導者にも読んでいただきたいお薦めの一冊である。
登山道法研究会 編 山と溪谷社(ヤマケイ新書) 刊  定価 1,100円(税込)

『夢の山岳鉄道』 

山岳観光地には国立公園であっても、自動車道路が縦横に延び、最盛期は車の大渋滞と排気ガスなどで自然環境は大きなダメージを受けている。また、道路は山肌を切り刻み、白いガードレールが景観を台無しにしている。
そんな山岳観光地に山岳鉄道を走らせよう、という夢の物語である。急こう配の山岳では、アプト式とラックレールいう歯車を組み合わせた構造の機関車とレールによって、登板力に優れた方法で鉄道が走っている。スイスなどではこの方式の山岳鉄道が人気で、世界中から観光客を集めている。かつて、国内には工事や林業のための森林鉄道が各地にあった。だから実現はけっして不可能ではない。
山岳鉄道を敷設すれば、鉄路は道路の幅員の半分ですみ、残りは植林などで自然を復元する。自然環境の保護と景観の保全にも役に立つ。こんな目的で上高地鉄道、富士山鉄道、志賀高原鉄道など12線の『夢の山岳鉄道』が綴られている。夢物語とはいえ、実際に検討されているものもあり将来が期待される。
宮脇 俊三 著 山と溪谷社(ヤマケイ文庫) 刊  定価935円(850円 + 税)

『岩崎元郎の地球を遠足』 

登山家である著者が、山岳旅行専門の旅行代理店と企画し、世界の山々を旅したエッセイである。著者は中高年登山の指導的立場にあり、安全登山と「健康登山」の普及に尽力してきた。その著者がアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、中央・南アメリカ、そしてオセアニアなどの山々を、ツアー一行とともに歩いた100回のうちの30回分が紹介されている。
「地球を遠足」には、日常から離れてもっと気軽に海外に出かけましょう、というメッセージが込められている。また、ハイキングとはライトな歩きであり、トレッキングとハードでヘビーな歩き方だと、読者に言葉の違いを解説するなど、わかりやすいエッセイとなっている。
コロナ禍で外国には出かけられない状態が続いているが、本書でアフターコロナ時代を見据えた「地球を遠足」の参考にしてはいかがだろう。「人も山も素敵」なブルガリア、スペインの最高峰テイデを楽して登る、コスタリカ最高峰チリポ山などは、ぜひ遠足してみたい山々である。
岩崎 元郎 著 山と溪谷社 刊  定価1,650円(税込)

写真集『NORTH WOODS』 ~生命を与える大地~

NORTH WOODSとは、カナダ北部に広がる森と湖の大地のことだ。1年の大部分を冬が占める極寒の地だが、森は豊かな恵みに覆われ、数多くの野生の生物が棲息している。バイソン、北極クマ、オオカミ、ムース、リス、フクロウ、ライチョウ、シカ、オオヤマネコなどが暮らし、森と湖が彼らの生態を支えている。そして、古くからその地で暮らす人々がいる。
このNORTH WOODSで、20年にわたって自然の営みと、その生き生きとした生態を撮り続けた写真家の集大成ともいえる写真集である。手元に置いておきたいお薦めの一冊である。
(株)クレヴィス 刊  定価2,500円 + 税

『ドキュメント コロナ禍と山小屋』 ~山小屋の(未来)を展望する~

山小屋は登山者にとって、なくてはならない存在であると同時に、人が山に登らなければ存在の意味はない。コロナ禍はそんな山小屋と登山者の相関を浮き彫りにした感がある。
 本書は北アルプスや八ヶ岳などの山小屋、さらに営業を全面的に休止した南アルプスの山小屋関係者などを取材して、コロナ禍における山小屋の実相をレポートしている。
山小屋は登山者に食事と宿泊場所の提供だけにとどまらず、登山道の整備や遭難対策、遭難者の救助など、その役割は多岐にわたっている。コロナ禍で営業を自粛したり、感染対策に追われる山小屋が多く、本書はその実態をドキュメントしている。何かと制約の多い環境の中で、山小屋は、受付、宿泊室、食堂、厨房、共有スペース、スタッフルームなどの消毒と感染防止対策と清掃を念入りに行い、利用者に安心と安全を提供しようとしている。さらに、有症者の対応やトイレへの導線確保など、感染防止の作業は多くて深い。
山小屋の存在がコロナ禍でクローズアップされ、山小屋はまさに「公器」であることが、改めて示された。「山小屋エイド基金」が、予想の300倍もの金額が集まったのもその証左であろう。
山と溪谷社 刊 定価1,000円 + 税

北海道のヒグマは人を襲うが、本州のツキノワグマは襲わない。などと教えられたことがあるが、とんでもない間違いである。ここ数年来、人がツキノワグマに襲われて重傷を負ったり、亡くなる事故が頻発している。
本書は山菜採りだけでなく登山やハイキング、釣りなどで、クマに襲われた事例が数多く示されている。暖冬の年では、スキーでも襲われた事例があって驚く。また、子グマの親離れの時期は特に危険で、親グマが子グマの力を見ているので、小グマが凶暴になるそうだ。
本書はツキノワグマによる事故の例と、著者自身の研究から、事故の経緯やその実像、さらにクマの生態、そして対処法などを詳しく解説している。自然環境を考える上でも、大変参考になるお薦めの図書である。
米田 一彦 著  朝日新聞出版 刊  つり人社 刊  定価1,800円 + 税

『ジャーニー・ボーイ』 

明治の初期、イギリスから女性旅行作家のイザベラ・バードが日本を訪れ、東京から日光、会津、新潟などを経て北海道までの旅をした。その旅に通訳と警護、そして監視役も兼ねて一人の日本人が同行した。馬と徒歩による旅は、大久保利通が暗殺されて間もない頃で、とくに地方は外国人にとっては決して安全な土地とは言えなかった。幾度となく刺客に襲われながらも難を逃れたが、イザベラ・バードは知る由もなかった。本人が気がつかない巧みな警護が、昼夜を問わず行われている旅でもあった。また、蚤やゴキブリ、やぶ蚊などの襲来も受けながらも、イザベラ・バードにとっては、常に新しい発見と感動の旅であった。本書では新潟までの旅を綴っているが、人々の初めて外国人女性を見る好奇の目や、暮らしぶり、風俗も興味深い。歩く旅の道を通じて、日本の近代化ㇸ向かう社会状況もよくわかるお薦めの図書である。
高橋 克彦 著  朝日新聞出版 刊  定価1,800円 + 税

『空白の五マイル』 ~チベット、世界最大のツアンボー峡谷に挑む~

ツアンボー峡谷はヒマラヤ山脈を源流として西へ進み、チベット高原の東端からUターンして西へと進路を変え、インドへと向かう全長およそ3,000㎞の峡谷である。7,000級の高峰の谷間にあるツアンボーは、永年の間、世界中の探検家や登山家にとって謎の川であり地図の空白部でもあった。特に屈曲点は両側が垂直の壁に阻まれ、狭くなった峡谷は想像を絶する激流で挑戦する者を退けてきた。さらに「空白の5マイル」とされる、誰もがその概要さえ知りえなかった峡谷の核心部を、日本人の探検家が挑戦したノンフィクションである。ぜひとも読んでみたいお薦めの一冊である。開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞など、数々の受賞作品でもある。
角幡 唯介  著 集英社文庫 刊  定価 600円+税

『手塚治虫の山』 

手塚治虫が描いた山を舞台とした作品集である。登山だけでなく、山岳地や里山での人間や動物の営みを「生命の尊厳」を主題にして描いている。『魔の山』『山の彼方の空紅く』『雪野郎』『火の山』などの10作品がおさめられている。ぜひとも読んでみたいお薦めの一冊である。
手塚 治虫 著 山と溪谷社 刊  定価 1,000円 + 税

『PEAKS』8月号 特集「テントに必要なモノとコト」

COVID-19の広がりで、山ではテント泊が静かなブームとなっている。3密を避けソーシャルディスタンシングを確保するには、テント泊も方法の一つだ。中でもソロテントがいいとされる。そんなテント泊に最適なテント、スリーピングバック、炊事用具などの装備類が紹介されている。さらに、テント泊の計画の立て方、食事のほか、テント生活術のHow toなどがわかりやすく解説されている。テント泊を考えている人には参考になるだろう。
山ではテント泊が当たり前の時代があった。装備類も大人数を前提にしたものが多かった。が、いまはコンパクト、軽量、高機能がすすみソロや少人数用が増え、そして進化している。が、山での生活の基本は、昔もいまも変わらない。
枻出版社 刊  定価1,210円(税込)

『白い牙』 

『白い牙』は米国人作家ジャック・ロンドンによって、1906年に発表された作品である。オオカミ(犬と血縁関係の主人公ホワイト ファング)が、野生の本能と次々と変わる飼い主の人間や飼い犬などと、熾烈な葛藤と闘争の中で生き抜いていく物語だ。本能の中で、ほとんど消え去っていた愛にめざめていく姿に感動を覚える。発表されて100年以上が経過したが、少しも色あせることがないお薦めの動物文学である。
ジャック ロンドン 著 白石 佑光 訳 新潮文庫 刊 定価630円 + 税

『今、行きたい!日本の絶景大辞典1000』 

本の絶景を1000選定して、いま行きたい絶景として紹介している。自然、風景、遺跡、社寺仏閣、歴史的建造物、現代の建築物などだけでなく、動植物、花火大会、祭り、食べ物など生活文化も絶景として広く紹介している。日本にはこんなにも素晴らしい絶景があったのかと、あらためて国土と文化を見直すことができると思う。選定された1000の絶景の中で、果たしていくつ体感したか数えてみると面白い。また、すぐにでも出かけてみたい絶景はどこだろう。
朝日新聞出版 刊  定価2,200円 + 税

『関西発日帰り 駅からはじまるハイキングブック 1・2』 

関西地域の駅からはじまるハイキングコースのガイドブックだ。一般的にハイキングというと、近郊の山々がそのフィールドとなることが多い。が、このハイキングブックは里山だけでなく、駅から歩いて行ける社寺仏閣、古刹、名所旧跡、それにミュージアム、資料館などの観光スポットも詳しく紹介している。また、人気のお土産や名物なども画像で掲載されていて、ちょっとした旅の気分が味わえる。
駅からゆっくり歩いてみると、通勤や通学では見落としている、こんなところに名所がと、あらためて気づかされることも多い。「比叡山門前町を歩く」「遺跡と西国街道の茨木を歩く」「大化改新ゆかりの道を訪ねて」「栁田國男のふるさとを歩く」など、関西の2府3県の「とっておき」の48コース(1、2号で)を紹介している。これらのコースであれば、子どもたちと一緒に家族でも楽しめるだろう。ハイキングがさらに身近になるお薦めのガイドブックである。
交通新聞社 刊 定価 500円+税(各巻とも)

『黒部源流山小屋暮らし』 

黒部川源流部の山小屋で働く女性のお話である。6月の山小屋開きから、10月の山小屋閉めまでの生活と仕事ぶりが、折々の情景とともに綴られている。
雪で押潰れそうになった小屋を開けると、熊やネズミなどに保管してあった食料が、食い散らかされていることもある。水道パイプの設置も一苦労だ。源流部なので水の確保は他の小屋と比べれば容易だが、取水地からうまくパイプを引かねばならない。ヘリで運ばれてくる食料などの受け取り、布団干し、トイレの掃除など、登山客を迎えるための山小屋の仕事には休みがない。それに、登山路の整備も山小屋の重要な仕事である。
ときには小さな山小屋に、定員を大幅に超える宿泊者があり、夕食は4回転のフル稼働ということもある。また、遭難事故への対応や増水と鉄砲水の危機など、自然の脅威にまざまざと遭遇するのも、黒部最深部の山小屋である所以なのだろう。
山小屋の成り立ち、地勢と自然環境、生息する動植物のことなども、挿画をまじえて大変わかりやすく楽しく書かれている。
文中に「毎年、小屋閉めのときには、皆でそろって、小屋にありがとうございました、とお礼をいう。そして来年も無事建っていてくれることを祈る。」とあった。
やまと けいこ 著  山と溪谷社 刊  定価 1,300円 + 税

『石鎚山系ロングトレイル』 

石鎚山系の縦走路と山々を60kmのロングトレイルとして紹介する、全ページカラーのガイドブックである。愛媛県と高知県の県境の西は堂が森、石鎚山から始まり、途中の瓶が森、伊予富士、笹ヶ峰、東・西赤石山、三ツ森山などの秀峰を経て、野地峰に至る縦走路が、ロングトレイルとして設定されている。全ルートのトレイル断面図も登降の参考になる。また、各山域で見られる植物や樹木の解説も大変わかりやすい。このロングトレイルはスルーで歩く必要はない。それぞれの山域には特徴があり、難易度も記されているので、体力や経験度によってルートを選ぶ参考になる。38,000分の1のカラー地形図が付録としてついている。石鎚山系の縦走路をロングトレイルとして考えると新鮮であり、インバウンドにも可能性が見えてくる。
監修 石鎚山系連携事業協議会  株式会社エス・ピー・シー 刊  定価1,800円+税

図解『物理の話』 

物理と聞いただけで拒否反応を起こす人もいるかも知れない。そんな人にも「眠れないほど面白い物理の話」である。サブタイトルに「身近な生活のナゾは全て物理で解明!」とある。生活、自然、スポーツ、乗り物、光と音の4章から成り、身近な疑問に物理の視点からわかりやすく解説している。オーロラはどうして発生するのか、寒い朝に霜柱が立つ理由、湿度が高いとなぜ不快に感じるか、川の真ん中が早く流れる理由、スキージャンパーが着地でケガをしない訳・・・などなど。野外でも不思議に感じること、思うことの謎を解き明かしている。ときには視覚を変えて、物理的視点で自然を考えることも面白い
長澤 光晴 著  日本文芸社 刊  定価680円 + 税

『PEAKS』3月号 特集「登山者図鑑

登山専門誌の「いま気になる人に聞いてみました!」という特集である。国内外で活躍する登山やアウトドアズに関わる人達の、いまとこれからをフューチャーしている。ヒマラヤなどの高峰登攀するクライマーや、デジタルマップ作りに取り組むクリエーターなど多彩だ。ロングトレイルも話題のひとつとして取りあげられている。
枻出版 刊  定価 1,080円(税込)

『On Trails An Exploration トレイルズ』~「道」と歩くことの哲学~

アパラチアン・トレイルの全行程(スルーハイク)や世界各地のトレイルを歩き、さまざまなエピソードを綴りながら「トレイルとは何か」「道はいかに出来るか」「なぜ人は歩くのか」などについて、深い考察を行っている。 ハイカーの視点だけでなく、哲学、思想、歴史、遺伝子と生物、地質、観光と開発などを、学際的視角でも解き明かそうとしている。また、自然環境の保護とトレイル成立の関係などにも言及していて興味深い。
「ハイカーが探しているのは・・・抵抗の少ない道・・・。使うことで道ができる」、そして「使われない道は消滅する」など、示唆に富んだ指摘を数多く述べている。
ロングトレイルや「歩く」を考えるうえで参考になる、お薦めの一冊である。
ロバート・ムーア 著  岩崎 晋也 訳 A&F BOOKS 刊  定価2,200円+税

ヤマケイ文庫『山釣り』

渓流釣りと山旅のエッセイである。本書の釣り紀行や山旅は、昭和30年から40年代にかけてのものが中心となっている。戦後の高度成長期に各地の山地を旅して、渓流で竿をだした。旅先の宿をとなった山里での巷話・奇談には、ついつい引き込まれてしまう。
その時代とはいえ、すでに山や谷は開発や災害で荒れ、渓流魚は少なくなっていた。渓谷を釣り歩きながら旅をして、自然への深い愛情と憧憬が著者を渓流師だけでなく、作家としての地位を確立している。
「山の釣りに憧れをもつのは、そこに棲む渓魚だけでなく、自然のままの山野に心をひかれてゆく」は本書の一節である。
山本 素石 著 山と溪谷社 刊 定価890円+税

先人の足跡と名峰の歴史『日本山岳史』 男の隠れ家編集部 編

明治時代になって、お雇い外国人として、西洋から多くの科学者や技術者、あるいは宣教師などが日本を訪れた。彼らの中で登山家や自然愛好家などは、国内の山々を登った。そして、彼らの影響も受けながら、信仰登山からスポーツとしての登山、つまりアルピニズムの幕が開いた。本書はそんな日本の登山史を、北、中央、南アルプスの山域ごとにわかりやすく解説している。
また、そこに建てられ、いまなお営業を続けている山小屋の物語は大変興味深い。他に谷川岳、富士山の解説もあり、近代日本の登山史を知るために、読んだみたいお薦めの一冊である。
サンエイ新書 刊  定価880円 + 税

『山と溪谷』 ~1000th memorial issue~

登山専門誌「山と溪谷」の1000号である。ヤマケイは1930年に創刊されて以来、88年目にして1000号を迎えた。その間、日本の登山文化をリードし、支えてきたといえる。
アルピニズムの黎明期から、戦後のマナスル初登頂、植村直己の探検と冒険、数々の遭難事故など、社会的に大きな関心事となった事象と向かいあってきた。また、山岳科学、山岳文学、山岳写真など、登山のもつ文化的意味を追い続けてきた本誌の歴史は高く評価されよう。「山と溪谷1000号」の歩みは、日本の近代登山の歴史とほぼ同一の軌跡といえる。
特集の「日本登山ルート100選」は、日本の山々の奥深さと魅力を知る資料として参考になる。別冊付録の登山用語小辞典には、登山用語2000語が収録されている。
山と溪谷社 刊  特別定価 1,200円(税込)

『山と溪谷』7月号 ~創刊999号 旅する北アルプス~

国内で最も人気のある山域の一つが北アルプスだろう。日本の登山の黎明期には槍ヶ岳を舞台に、様々な歴史的なドラマが展開されたし、穂高連峰や剣岳などでは幾多の登山史に残る登攀が繰り広げられた。夏山といえば北アルプスという若者たちも多かった。
そんな北アルプスも夏期は、地球規模でみると絶好の山旅の道でもある。「日本の登山の源流」である北アルプスの歴史を旅するとともに、山旅の道という視覚が、時代のキーワードとして面白い。
山と溪谷社 刊  定価 1,028円(税込)

『CREA』JUNE6 ~OUTDOOR,BEST OF BEST アウトドアのいいもの150。~

女性誌によるアウトドアズの特集である。アウトドアファッションやギアなどは、いまやアウトドアライフスタイル市場ともいわれ、とくに若者たちに支持されている。中でも若い女性のファンが多くなった。これまでアウトドアズというと、登山や探検・冒険といったニュアンスが多く、とかくハードな登山が中核を占めがちであった。
しかし、ライフスタイルの自然指向とともに、旅の要素も加わって、アウトドアズはファッショナブルになり日常化しつつある。本誌はアウトドアズの衣食住、そしてアクティビティを女性の目線でとらえ、ドアの外はアウトドアライフと提唱している。アウトドアウェアをファッショナブルに着こなして、山小屋に泊まり、美味しく食べて、自然の旅を楽しむ。そんな時代がやってきた。ギア、ファッション、食、そして「そとあそびのBOOK LIST」なども紹介されている。最新のアウトドアズのトレンドを知るための一冊である。
文藝春秋 刊  定価780円(税込)

『ワンダーフォーゲル6月号』 槍ヶ岳パーフェクトガイド

北アルプスの代表的な名峰は槍ヶ岳だろう。鋭く尖がった山容は、遠くからでも槍ヶ岳とすぐにわかる。槍ヶ岳は日本の近代アルピにズムの舞台として、数々の登攀史と物語が繰り広げられた。その槍ヶ岳を登るためのコースや、登り方、必要な用具・道具類、さらには利用ができる山小屋やテントサイトなどが、詳しく紹介されている。梅雨が明ければ夏山シーズンが始まる。今年こそは槍ヶ岳に登ってみてはいかがだろう。
また、巻頭のWANGEL TOPICSに「ジャパントレイル構想発表!」の記事がNEWSとして紹介されている。
山と溪谷社 刊 定価1,000円(税込)

font style="color:#28508C;">■『Fine』 5月号/b> 〜特集 さあ冒険へ出かけよう〜

冒険という言葉をライフスタイル情報誌が解説すると新鮮だ。極地のほかアンデス、ネパール、サハラなど地球には心ときめく地は多い。
これらの地を旅し、攀り、冒険を行った、マゼラン、アムンゼン、ヒラリー、植村直己などの冒険家や探検家なども、その業績から名誉と賞賛が与えられ、語りつがれている。
その一方で、私たちにもできる冒険と旅がある。少しの好奇心とチャレンジ精神があればいい。冒険といっても肩肘張らず、海辺や山上の社寺仏閣を訪ねる旅をする。まずは「身近なところにある冒険」をすれば面白い。
『今までの人生でワクワクする気持ちになったことはあるか?』と、本誌は問いかけている。
日之出出版 刊  定価680円

『Fielder』 vol.38/b> 特集 有害外来種図鑑

外来種が問題になっている。よく知られているところでは、バスやカミツキガメ、ヌートリアなどだが、その種類は多く生息域も全国に及んでいる。外来種を有害としているのは私たち人間で、当の動植物にとっては迷惑なことかもしれない。とはいえ、人間にとっては困った存在ではあるので、有害とレッテルを貼られたものは駆除される。本誌では「誰でも釣れる外来種の食べ方」「美味しい有害・外来生物選」「食用外来植物」などが紹介されていて興味深い。有害外来種とされる動植物の見方が変わるかもしれない。
笹倉出版社 刊  定価750円+税

『ソトコト』NO.224 2018.2 〜関係人口入門〜

『ソトコト』によると「観光以上、移住未満の第三の人口」を関係人口という。地方へ移住や田舎暮らしも注目はされているが、実現するにはそれなりのハードルがある。しかし、その地域と何らかの形で参画したり、関わったりすることならそれほど難しくはない。都市に住みながら、地方で仲間と過ごしたり、特産物の生産に携わってみたり、廃校を利用してコミュニティを作ったりなどなど、これなら出来るという面白そうな取り組みは多い。
鳥取や鹿児島、あるいは瀬戸内の島での関係人口の取り組み、スキームなどを紹介している。地域との関わる人たちが増えれば、当該地も活性化して元気になる。
自然体験活動も地域社会との関わりが多く、関係人口の入り口の一つであるはずだ。本誌の特集は、自然体験活動の在り方を考える上でも参考になる。
木楽舎 刊  定価823円(税込)

『葉っぱのぐそをはじめよう』

日本は震災の多い国だ。地震、津波、火山噴火、豪雨などで大きな被害が出ることもしばしばである。災害によって避難生活を余儀なくされ、その上ライフラインが遮断されると、まず困るのが水とトイレの問題だろう。水洗便所の水は流れないし、紙もなくなりトイレはすぐに使用不可となる。そんな場合に備えて「のぐそ」を始めるのも一考だ。土の中では「うんこ」は菌類に分解され、植物は菌類が分泌する消化酵素を吸収して成長し、CО2を放出する。それを植物が取り込み、さらに植物が排出する酸素を人間や動物が取り込む。「うんこ」は地中では驚くほど速く菌に分解され、カタチも匂いもなくなるという。まさに「のぐそが救う地球の命」である。
また、お尻を拭くことに適した葉っぱなどを紹介して、使い方を説明している。フキ・フキノトウ、ヨモギ、エビヅル、タンポポ、シダ類など、四季別に適した「お尻で見る葉っぱ図鑑」は圧巻である。子どもたちに読み聞かせると、目を輝かせて聞き入ることだろう。「のぐそ」を通して環境問題を考察する、おすすめの一冊である。
井沢 正名 著 山と溪谷社 刊  定価 1,400円+税

『黒部の山賊』

山では科学や理屈では説明できない魔訶不思議なことが起こる。中でも北アルプスの最深部、黒部川の源頭部ではそんな怪現象がよくあると言われている。本書は戦後間もない頃、三俣山荘、雲ノ平山荘などの周辺を舞台にした、小屋主と山小屋を取り巻く人々、登山客、そしてそこに生息する動物たちが織りなす不思議な物語である。昭和20〜30年代の山の情景と「アルプスの怪」に、時代の世相を見ることができる。
伊藤 正一 著 山と溪谷社 刊   定価 1,200円+税

『日本百低山』

「山の日」の制定を記念して、この本が出版された。帯に「日本人には、ふるさとの山、心の山がある」と記されている。そういえば私たちのふるさとには、家族で登った山、小学校や中学校の遠足で歩いた山がある。そのほとんどは標高こそ低いが、いつも見えている親しみのある山々だ。そんな山々には神々が祀られ、昔から伝わる物語がある。
本書はふるさとにある100の低山ガイドブックである。日本山岳ガイド協会の編集だけに「ガイドの目」というコラムがあり、注意点やコースのポイントなどが記述されていて参考になる。ふるさとの低山だけでなく、全国にある有名低山を知るにもお薦めである。
日本山岳ガイド協会 編 幻冬舎 刊  定価1300円+税

『猟師の肉は腐らない』

渋谷の酒場で主人公と知り合いになった店長は、八溝山地の猟師だった。その猟師は酒場を辞めて山に戻った。誘われて主人公は、猟師が住む阿武隈山地に囲まれた八溝山地に出かけた。そこにあるのは茅葺屋根と板で造られた、電気も水道もない山小屋だった。天井からは竹串で刺された魚、野鳥、蛇、蛙などが、囲炉裏の煙で燻製になってぶら下がっていた。
猟師とともに山中で、カブトムシの幼虫やセミ、渓流魚やドジョウなどを獲りながらの生活を経験する。ヤマカガシに咬まれたり、アシナガバチにも刺されるが、山ではこのようなことはよくおこる、と猟師の知恵で事なきを得る。小屋の裏手にはイノシシやウサギなど、生き物の命への感謝の土盛りがあった。
農学博士でもある主人公の科学的な視点と、山中で自然の恵みに感謝しながら、たくましく生きる猟師の物語である。
小泉 武夫 著 新潮社 刊(新潮文庫) 定価 630円(税別)

『身近な自然の観察図鑑』

自然観察は大切な自然体験活動の一つだ。と書くと、少し身構えて、どこで、いつ、何を用意してなどと考えてしまう。しかし、私たちの生活圏でも自然の観察はできる。通学や通勤途中でも、見て、楽しむ自然観察の方法はあると著者は述べている。
道端の雑草にも食べられる草がある。タンポポも知れば知るほど奥が深いようだ。通勤路でのミノムシウォチングやイモムシの観察で、自然の変化に気づくかも知れない。
公園でセミの抜け殻を発見したり、テントウ虫の多様な斑紋に「なぜ」と思いを巡らせる。台所やテーブルの上にある、リンゴやバナナなどの果物、キャベツやレタスなどの野菜も身近な自然観察の対象だ。例えば、リンゴの実の断面の名称を、正しく知っているだろうか。
そのほか、数多くの身近な自然が、わかりやすくイラストとともに記述されている。
「これなら出来る」と思う『身近な自然の観察図鑑』である。お薦めの一冊だ。
森口 満 著 ちくま新書 刊  定価 860円 + 税

『PEN』6/15 〜列車で行こうどこまでも。〜

京都駅で東京行きの「特急つばめ」を初めて見た。当時は最新型の特急列車だった。赤く輝いていたテールランプが徐々に小さくなった。そして、銀色のレールがそのあとを追いかけるように伸びていった。このレールが東京まで続いているのかと思うと、胸の鼓動が高まった。昭和30年代の半ばのことだった。
昭和40〜50年代、毎年のように大きなキスリングを担いで、冷房のない夜行列車「ちくま」に乗り込んだ。アルプスに向かう登山者で寿司詰め状態の車内で、床に新聞紙を敷いて寝た。そんな時代が懐かしくもある。
いま、長距離列車は速く、快適で、豪華になった。かつてのように、単に移動する手段だけではなく、列車そのものを楽しむという要素が、大幅に増えた。快適な列車旅の情報が楽しい特集である。
CCCメディアハウス 刊  特別定価 680円(税込)

『アドベンチャーレースに生きる!』

かつて、ニュージーランドで開催されたアドベンチャーレースに参加した当地の知人が、「次回、もし、その気になって僕が再び参加したいと言ったら、君は止めてくれ!」と真剣に言ったことがあった。日本百名山の早回り記録をもつ彼が、二度と参加したくないと語ったほど過酷なのがアドベンチャーレースである。このレースに参加していた著者の田中正人氏率いるチームイーストウインドは、3人クラスで4位に入った。当時、アドベンチャーレースは国内ではさほど知られていたわけではない。しかし、著者のアドベンチャーレースにかける熱意と努力で、いまではTVなどのマスメディアでも数多く取り上げられ、広く認知されるようになった。
チームイーストウインドは、世界のアドベンチャーレースを転戦しながら、常に上位の成績をおさめ、国内でプロとしてこの分野を確立した。また、共著者の田中陽希氏など、世界レベルのレーサーを育成してきた。アドベンチャーレースとは何か、その目指すものなどが、チームイーストウインドのメンバーからも綴られている。
「自分以外の誰かのせいにしたり、言い訳をしたりするのではなく、自分の責任と決断、実行力でやりたいことを実現していかなければならない。」という一節がある。どの分野でも通じる格言である。
田中 正人  田中 陽希 共著 山と溪谷社 刊  定価1,300円+税

『Discover Japan 3』 特集“積極的”移住のススメ』

一時、SOHOとか、田舎暮らしなどがもてはやされた時期があった。それはライフスタイルというより、カタチが注目されたようで、さほど盛りあがりはなかったようだ。特に若い人たちの関心が低かったように見える。しかし、ネット環境の飛躍的な発展や、交通アクセスの利便性が向上して、ライフスタイルの変質が発生しはじめている。その結果、生活の価値観が多様化して、若者たちの地方への移住も積極的に行われている。それは、移住をささえる「仕事」の環境が画期的に変化し、「職業」の場所と選択肢が大きく広がったからだあろう。
長崎県平戸、山形県鶴岡、奈良東吉野、宮崎県青島、滋賀県高島など、全国的に広がる「最先端移住スタイル」の特集である。より自然に近い日常のある生活を、考えてみる参考になる。
枻出版社 刊  定価780円(税込)

『ニッポン2百名山ひと筆書き』 

日本2百名山を222日間で完全踏破したドキュメントである。ひと筆書きで歩いた距離は、およそ8000㎞にもなった。この踏破の様子はNHKでも放映されたので、多くの人たちが知ることとなった。
出発地の宗谷岬や暑寒別岳、津軽海峡、東北の姫神山、アルプスの山々、びわ湖西岸の武奈ヶ岳、四国山地、中国地方の山々・・・そしてゴールの佐多岬でも応援する人たちが駆けつけた。が「百名山の時と違い、2百名山は情報が少なく・・・」かなりの苦労があった。また、途中で体が不調になって、病院に駆け込んだことなど、想像を超える苦難が本書で読みとれる。
しかし、子どもたちの応援が何よりも励みになり元気の素にもなった。「フレーフレーようき!フレーフレーようき!」と子どもたちの声が響いたことだろう。
「僕のチャレンジで山と地域に暮らす文化は、とても美しく魅力に溢れていることを伝えたい」という趣旨の一節がある。著者の日本200名山踏破の目的のひとつであったように思う。お薦めの一冊である。
田中 陽希 著 NHK出版 刊  定価1,700円 + 税

『岳に抱かれ生涯極楽スキー』 

戦後、日本のスキーは高度経済の発達とともに、国民的なレジャーとなった。しかし、その陰には、スキー界を支え、スキーをこよなく愛する人たちの存在があった。その一人が白馬村八方で生まれ育った著者である。競技スキーで活躍し、現役引退後は世界選手権をはじめ、内外の競技会などで、若い選手の育成やアジア諸国のアルペン競技の選手強化にも力を注いだ。また、長野オリンピックのスキー競技の開催に尽力し、日本の実力を世界に示した。
その一方で、次世代の育成にも情熱をかけ「子供のときにスキーを体験させてほしい」と、子育てや教育におけるスキーの有用性を説いている。
本書は伝記という読み物ではなく、戦後のスキーの軌跡と、社会で果たす役割やその在り方を示した教書ともいえる。インバウンド、地域の活性化、子どもたちの体験活動、生涯学習など、社会事業に携わる人たちにも、ぜひ読んでほしいお薦めの一冊である。
丸山 庄司 著 スキージャーナル 刊  定価2,300円 + 税

別冊宝島『日本の古道』 

日本には信仰の道として歴史に刻まれた古道がある。本誌は、その中から10の古道と170美しい景観を選び掲載している。歩けば古道を取り巻く自然や社寺仏閣などから、歴史に思いを巡らせ、人々のいにしえの暮らしが垣間見える。ルートマップも掲載されているので、行程もわかりやすい。
掲載されている古道は、萩往還、山野辺の道、熊野古道、葛城古道、伊勢本街道、柳生街道、秩父巡礼古道、金沢街道と鎌倉五山巡り、箱根旧街道・湯坂路。
宝島社 刊 定価1000円 + 税

『知識ゼロからのロングトレイル入門』 

ロングトレイル、つまり歩く山旅の入門書である。この国は70%が山岳地帯で占められ、歩けば山に突き当たる。そのため欧米のように平坦な地形のロングトレイルは少なく、多くが山岳丘陵地帯にある。したがってロングトレイルを歩くには、山歩きの基礎知識が必要となる。コースの選び方、必要となるウェア、トレイルを安全に歩く方法、食料の選択、宿泊など、ロングトレイルを歩くためのノウハウが、イラストや画像を用いながら、わかりやすく解説されている。また、国内の主なロングトレイルも紹介されているので、特にこれから始めようとする初心者にはお薦めの入門書である。
特定非営利法人日本ロングトレイル協会監修 幻冬社 刊  定価1,300円+税

『極北の動物誌』 ウィリアム・ブルーイット 著   岩本 正恵 訳

北極圏に生息する動物たちの生態が、嬉々として綴られている。キツネ、ハタネズミ、ノウサギ、オオヤマネコ、オオカミ、ムース、カリブーなどが極北の地で、たくましく生きていく様子が、彼らの目線で、まるで詩のように描かれているのが感動的である。また、そこには北極圏で自然を享受し、狩猟を糧として生きる人々の暮らしがある。が、突然押し寄せる文明が北極圏の自然をむしばみ、動物たちの生態系をずたずたにして、人間の暮らしも破壊していく。極北の動物の生態や人間の営みを通して、環境保護に警鐘を鳴らしている名著である。
新潮社 刊  定価1,700円(税別)
※本書は絶版となっていますが、古書で購入が可能な場合があります。

『POPEYE』8月号 〜夏の旅は冒険を、そして弁当を。〜

旅の楽しみのひとつは、何と言っても食べることだろう。川や海、山でのアクティビティでもお弁当は格別だ。高知の「鮎弁当」、上田の「カツサンド」、松本駅「山賊弁当」、敦賀駅「鯛の舞」、小浜「焼き鯖すし」、鳥取「かにめし」、米沢「牛角煮弁当」などなど、全国至るところにおいしそうな弁当がある。また、各地にはご当地名物の「そば」「うどん」そして、ラーメンも多い。
お弁当がこれほどの名物となり、種類が豊富なのも日本ぐらいだろう。どのお弁当を食べるか、夏旅の楽しみの一つだ。お弁当にまつわるエッセイや「絶景弁当旅行」も楽しい。
旅の前に、目を通してみたい一冊である。
マガジンハウス 刊  定価780円(税込)

『ランドネ』8月号 〜特集 友だちを山好きにする方法〜

もうすぐ夏山シーズンがはじまる。そして、今年の8月11日は、国民の祝日「山の日」の日の最初の年でもある。山歩きや登山がさらに注目されると言われている。
山登りは単独行より、仲間がいたほうが楽しいという人も多い。しかし、山好きの友人は案外少ないものだ。本誌の特集は、そんな状況をとらえて「友だちを山好きにする方法」である。それには、①花や景色を見るなど、何を楽しみたいか調べる。②山を選ぶことが大切。③無理のないスケジュール。④忘れ物がないように。⑤スケジュールを伝え、自分の責任で行くように促す、といった5つのステップが友人を誘うために必要だという。
そのほか、ファーストエイド、装備、ウェアなど初心者が知っておきたい、山歩きのABCがわかりやすく紹介されている。この夏、友人を誘って山に行きたくなる一冊である。
枻出版社 刊  定価880円(税込)

『ソトコト』6月号 〜特集 コミュニティのつくり方〜

人が人を、グループが人を呼び込み、そこにコミュニティが生まれ、未来に向かって進んでいく。そんなコミュニティの事例とつくり方を、全国各地から集めた特集である。
東京のとんかつ店がつくるコミュニティのこと。瀬戸内海の高齢化がすすむ小さな島で、古民家を図書館にして、生まれたコミュニティから様々な事業が誕生して、若い家族の移住も増えだした事例。
福岡県では共同住宅を複合施設にリニューアルして、そこに誕生したコミュニティを紹介。ヘンタイさんたち(面白い人)を集めて風景を守るコミュニティ。
岡山県の廃材を蘇らせリユースし、地域コミュニティの形成にも役立てる活動など、全国の元気の出る活動や暮らしが紹介されている。
コミュニティづくりのノウハウと、ソーシャルリーダーたちの活動は、地域の活性化やこれからのライフデザインに大変参考になる。
木楽舎 刊  定価823円(税込)

『Discover Japan』2016.4 〜特集 日本を沸かせる100のこと〜

地方へ移住を希望する人たちの半数以上が、若い人だという。少し前の定年後は田舎暮らし、とは違ってきたようだ。地方には自然とともにある暮らしや、人と人とのコミュニケーションがある。これに地方創生というトレンドが、背中を押しているのかもしれない。
モノづくり、観光、食事・料理、芸術、デザイン、ファッションなどをテーマに「日本を沸かせる100のこと」を紹介している。
また「インバウンドをひも解くキーワードは、LCC, Wi-Fi,着地型観光、FIT,SNS,DMO」なのだそうだ。地方の空港へ海外から直接やってくる。情報がすぐに発信できる。個人旅行者が増えるなどだ。地方の活性化が、私たちのライフスタイルを大きく変えるかもしれない。
枻出版社 刊  特別定価880円(税込)

『HUNT』Volume11.2015.spring〜特集 狩猟とジビエ〜

日アウトドアライフスタイル誌のハンティング特集である。現代の都市生活者には、狩猟はけっして身近なものではない。しかし、鹿やイノシシなどの野生生物による被害の報道で、関心は高くなりつつある。そして、ジビエが静かなブームになっているのも事実だろう。
狩猟とは何か、ジビエ料理とはどういうものかをわかりやすく紹介している。7人の猟師への質問の回答では、獲った獲物への感謝と環境保護への信念が共通していたのも興味深い。
ネコ・パブリッシング 刊  定価1,176円 + 税

『PEN』3月1日号〜特集 ニッポンの世界遺産。〜

日本には19の世界遺産が登録されている。世界には1000余りの世界遺産がある。この登録数で見る限りまだまだ少ないようだ。日本の歴史は古く、各地に文化遺産が数多くあるので、世界遺産への国民の関心が高くなると、さらに増えていくのではないかと期待したい。
本誌は日本の19の世界遺産を、わかりやすく紹介している。一度は訪れてみたい日本の至宝ばかりである。
CCCメディアハウス 刊  定価700円(税込)

『POPEYE』3月号〜仕事とは〜

仕事は人の人生の大半を占めると言っても過言ではない。仕事を通して生き方を見つけるか、自分の生き方に仕事を組み込むかは、職業を考えるうえで重要なことだと思う。
中でも、生き方に仕事を組み込む、つまり自分のライフスタイルを大切にするというのは、理想のひとつかも知れない。そんな「仕事」をしている人たちの特集である。
スポーツカメラマン、デザイナー、バーテンダー、ギター製造、映画監督、アナログレコード製造、料理人、山小屋の主人、龍笛奏者、オーナーシェフ、アングラー、本屋、メガネ製造・・・素敵な仕事とライフスタイルが、数多く紹介されている。
「これが私の選んだ仕事」だと胸がはれれば素晴らしい。
マガジンハウス 刊  定価780円(税込)

『ソトコト』2月号〜特集 あたらしい移住のカタチ〜

いま、地方へ移住するライフスタイルが注目されている。一昔前は、SOHOが脚光を浴び、数年前までは団塊の世代のリタイアに合わせた、田舎暮らしがもてはやされた。が、すぐにブームは萎んでしまった。
「あたらしい移住のカタチ」は、自然とともにある暮らしと仕事に、必然性と価値が置かれるようになったのが面白い。
特集の移住の特徴は、何といっても若い人たちが多いことだ。そこには何らかの形の生業がある。全国各地で農園、ピザ屋、アート工芸、陶芸、紙漉き、古本屋など、数多くの起業がある。若者たちが都会を離れて、地方で新たな生き方に肩肘張らずにチャレンジする。新しい暮らしと、ライフスタイルに夢をかけることが出来れば素晴らしい。
木楽舎 刊  定価823円(税込)

『北緯66.6° 北欧ラップランドの歩き旅』

北欧のロングトレイルを歩いたエッセイで、大変興味深く楽しい。スウェーデンやノルウェイの北極圏には多くのロングトレイルがある。しかし、情報は非常に少なく、私たちには馴染みはない、と言っていいだろう。
観光客が訪れるところもあるが、多くはトナカイやオオカミが生息する極北の地であり、そこにトレイルがつくられている。そのトレイルを歩き、人や野生生物と出会いが生き生きと綴られている。ラップランドのロングトレイルの荒涼たる風景が、目の前に浮かんでくるようだ。思わず引き込まれ歩きたくなってしまう。
「もっと、山へ、山へ。自然へ行け」と本能が叫ぶ。(中略)ラップランドでは一日歩いただけでその胸騒ぎは収まり、この地球に生きる生命体のひとつとして認められたような気になるから不思議である。」とある。焚火の前でゆっくり読んでみたくなる、ラップランドの旅の本である。
森山 伸也 著 本の雑誌社 刊  定価 1500円+税

『ソトコト』12月号〜特集 山、海、里の仕事〜

最近、中高年のリタイヤ組だけでなく、若い人たちの田舎暮らしが、静かなブームとなっている。本誌はその特集である。高知や新潟など、山、海、里での仕事と暮らし方の紹介。米とワインや塩づくりなど、仕事とその土地での働き方の事例は参考になる。里山には鍛冶屋などにも仕事のニーズはあるし、海辺には漁師と漁協をつなぐことで、ビジネスの可能性を見出す若い人たちもいる。山、海、里でいかに仕事を見つけ、遊び、楽しむかのヒントが数多く示されている。
木楽舎 刊  定価823円(税込)

『百万人の山と自然 登山 <基礎>増補改訂版』〜安全のための知識と技術〜

これから山登りをはじめる人への基礎講座である。第一線で活躍する山岳ガイドなどが執筆したもので、実践に裏打ちされた登山の入門書となっている。第1章の「山登りを始めるために」からはじまり、計画、歩き方、地図、天気、安全登山など全9章で構成されている。「山登りを楽しむコツ」「自分にあった登山計画とは」「歩き方のコツをつかむ」「山の天気の捉え方」など、親しみやすい記述も多く、自然体験活動の指導者にも参考になる。
全ページカラーで、大変読みやすい基礎編登山講座で、登山の入門マニュアルとしてお薦めである。
公益社団法人日本山岳ガイド協会 刊  定価1,400円 + 税

『わたしに会うまでの1600キロ』

メキシコからカナダとの国境まで、米国西海岸の山脈に沿ってつくられた5000㎞の自然歩道が、パンパシフィック・クレスト・トレイル(P.T.C)だ。ハイクの経験がほとんどない若い女性が、PTCのカルフォルニアからオレゴンまでの1600kmを、一人で歩き通したドキュメントである。
ふとしたことで、このロングトレイルを知った著者は、母親の死や自身の離婚と薬物などで乱れた生活を断ち切ろうと、PTCを歩き始める。炎熱の荒野や残雪の山を、幾度となく挫折しそうになりながらも歩き続けた。ルートを見失い森の中でさ迷ったり、野生の牛や熊にも遭遇するというハイクであったが、歩く距離に比例するかのようにPCTは、彼女を逞しくしていく。トレイルを歩くハイカーやトレイルエンジェル(サポーター)との交流もドラマッチックだ。
荒野にいるという感覚だけで、果てしなく続く風景を見る以外に目的はない。歩くということはどういうことかを感じ続けることだ、という趣旨の一節がある。なぜロングトレイルを歩くか、という問いにヒントを与えている。
また、トレイルを歩くハイカーの情景から、アメリカンアウトドアズの一端が、垣間見られるのも興味深い。
本書は全米でベストセラーになり映画化され、アカデミー賞にもノミネートされた。8月末から全国で公開されている。
シェリル・ストレイド 著   雨海 弘美・矢羽野 薫 訳 静山社 刊  定価 1600円 + 税

『mono』モノ・マガジン情報号 9-16 〜家族を守る 安全のカタログ〜

首都直下型地震の経済被害は約112兆円、一人の水分量は2.5Lだそうだ。災害は忘れた頃にやってくる、といわれる。家族や自分を守るために必要な道具・用具は何か。常備する必要がある防災用品の特集である。アウトドア用品は防災グッズとしても利用できるものが多いが、最近ではその傾向も少し変化がみられる。車もプラグイン・ハイブリッドであれば電源の供給も可能だ。スマホも緊急事態には必携のアイテムになった。
また、飲み水やインスタント食品類のストックも必要だが、その選択肢は広がった。防災の日もあったことだし、「家族の防災スタイル」も考えておきたい。
特集の最後に「最終手段は神頼み!不安なときの心のよりどころ」と、防災にご利益のある神社などの紹介がある。
ワールドエクスプレス 刊  定価637円(税込)

『ドキュメント 御嶽山大噴火』

平成26年9月27日御嶽山が大噴火し、死者57名、行方不明者6名、負傷者69名にのぼる大惨事となった。本書はこの大噴火をドキュメントとしてまとめたものだ。第1章は新聞記事などを追いながら、噴火から避難、救助、捜索の模様を記録している。第2章は、この日御嶽山で噴火に遭遇した、研究者、山岳ガイド、カメラマン・写真家、一般登山者などの証言。第3章は、火山学の専門家による、噴火の科学的考察。そして、第4章の自衛隊、警察、消防、医療関係者、山小屋経営者など、救助現場からの報告で構成されている。
日本は火山大国で、ここにきて各地の火山が活発に活動し始めている。火山も活動のフィールドの一つである以上、御嶽山の噴火を教訓として生かすことが求められる。是非とも読んでいただきたい火山噴火のドキュメントである。
山と溪谷社 刊  定価800円 + 税

集英社新書『ニッポン景観論』

外国から帰国すると、日本の風景や景観が何かおかしいと感じるときがある。電線や電柱がやたらと多いし、最近では携帯電話の基地局が増え、ケーブルが無秩序に増殖しつつあるように思う。看板類に至っては、言うまでもない。ヨーロッパなどでは、まず見られない風景だろう。ただ、私たちはそれに慣れてしまい、ともすれば無感覚な状態になりがちだ。風景を撮影しようとカメラを構えると、電線や看板が邪魔になることをしばしば体験するが、すぐに忘れてしまっている。
本書は、外国人の目線でとらえた、日本の景観論である。この美しい国の風景が電線や看板類、さらにはコンクリートなどで、いかに壊されているかを鋭く説いている。景観の批判だけでなく、いかに再生すればいいかも提言している。
アレックス・カー 著  集英社 刊  定価 1,200円 + 税

『BRUTUS』6月15日号〜CAMP!〜

山登りのためのキャンプ。ロングトレイルのためのキャンプ。車で行くキャンプ。テントで寝るのが目的のキャンプ。パドルスポーツのためのキャンプ。クッキングを楽しむためのキャンプ。そして、家族や仲間と楽しむためのキャンプ。キャンプの形態は様々だが、テントで寝るという行為は同じである。
多彩なキャンプを最新のギアとファッションとともに紹介している。キャンプを目的にするか、手段とするか・・・。この夏の「うらやましくなるキャンプのすべて」が詰まった特集である。
マガジンハウス 刊  定価650円(税込)

『Tarzan』6月11日号 No.673〜山=大自然のエンタメ型ジム〜

「歩けばヤセる!登ればタフに!下れば筋力アップ!やっぱり凄い『歩く』&『走る』の効果!山がカラダに効く理由。」と表題にある。登山はこれまでどちらかといえば、中高年が主流であった。そのため専門誌では、安全や健康登山の特集がよく組まれていた。
 本誌の特集は「山=エンタメ型のジム」ととらえ、登山、あるいはトレランがカラダに効く理由をコンセプトに、ダイエットや筋トレなどの方法などを紹介している。もちろん環境保護やマナーについての記載もある。「山岳行動学」での「雨が降ったら走らない、大会は中止にするべきだ。」は非常に重い提言であり、トレランの基本的なマナーだろう。
マガジンハウス 刊  定価500円(税込)

『外国人だけが知っている美しい日本』

大雪山のトレイルを歩いて「外国人とっての日本のイメージは全部『街』・・・中略・・・こんな自然があるとは、想像もしていないでしょう。」と、著者は記している。カナダの大自然に比較すると小さいが、こんなにも素晴らしい自然があるという。
2020年の東京オリンピック開催時には、訪日外国人観光客数を2000万人にすることが目的だ。TVなどでは、東京の渋谷や京都の名所などを訪れる、外国人観光客の姿が映し出されているが、私たち日本人が知らない名所を訪ねる外国人も多いようだ。そこには日本人とは異なる視点で描かれる光景がある。
「誰もが誠実で一生懸命な日本」「紅葉の山と禅ガーデンが教えてくれた、わびとさび」「自転車で、もっと日本を走りたい!」・・・などなど、面白く興味の尽きないテーマが、外国人の目線で記されている。日本のこれからの観光を考える上で、数多くのヒントが示されている。
ステファン シャウエッカー 著 大和書房 刊  定価1,300円 + 税

ヤマケイ文庫『今そこにある山の危険』 〜山の危機管理と安全登山のヒント〜

かつて山岳遭難は、岩登りや沢登り、あるいは雪山でその多くが発生した。いま、山岳での事故は、一般登山道での転倒による骨折や捻挫、それに道迷いが大半といわれる。事故原因の多くは、登山者の体力不足や勉強不足だと、著者は指摘する。
昨今の登山ブームで、多くの人たちが山に登るのは素晴らしいことだが、それだけに、事故発生の危険性はすぐそこにあるとも言える。様々な事故や山での体験を例にあげながら、安全登山のための基礎知識とヒントを提示している。山で事故に遭わないためには日ごろのトレーニングと、ゆっくり歩きに、山の自分発見が必要であると、登山指導の第一人者である著者は説く。指導者にもぜひ読んでほしい、お薦めの一冊である。
岩崎 元郎 著 山と溪谷社 刊  定価760円 + 税

CASA BRUTUS 5月号『Made in USA catalog 2015』

1975年に「Made in USA catalog」が出版された。そこには当時のアメリカ人のライフスタイルとともに、さまざまなアウトドアウェアやギアが紹介され、アウトドアブームが発生した。バックパッキング、フライフィッシングなどアメリカンアウトドアズドアズが、若者たちを虜にした。国内の至るところにフレームパックを担いだバックパッカーが登場した。
本誌の特集は、さらに進化した最新のアメリカ製の生活用品を、アウトドア用品とともに「暮らしを変えるUSAブランド425」として紹介している。
マガジンハウス 刊  定価 880円(税込)

■〜楽しく学べて、すぐに役立つキャンプの基礎知識と技術〜『はじめてのキャンピング』

自然体験活動の神髄は、野外で眠ることだろう。キャンプは自然体験の原点のひとつだ。本書は安藤財団が過去30年間にわたって培ってきた、トム・ソーヤースクールでの様々な野外活動のノウハウが凝縮されている。
タイトルが「はじめてのキャンプ」とあるように、初心者や家族向けに編集され、全編の多くがコミックで構成されている。動機、準備、道具、楽しむ方法、観察、安全対策など、キャンプに必要な知識が分かりやすく解説されている。ベースキャンプから大自然の中へ、そしてキャンプの先にある山登りへのアプローチの提案もある。
全編カラーページで、楽しみながら読めるキャンプの基礎知識が詰まっている、おすすめの1冊だ。
久保田 鉄/画 中村 昌之/構成 長谷川 哲/解説
安藤スポーツ・食文化振興財団 刊 山と溪谷社 発売 定価 1,600円(税込)

『一生ものの、山道具』

サブタイトルに「愛着をもってずっと使える外遊びの良品63」とある。山の道具、アウトドア用品は基本的に丈夫で長持ちのものが多い。素材が劣化したものは無理だが、メンテナスさえしっかりすれば、一生使えるものも珍しくはない。バーナーやランプ類はパッキンを交換すれば、驚くほど寿命は長い。また、私が愛用している小さな鍋は、学生時代に手に入れたものだ。アルミのボトルは30数年も使っている。ただ惜しむらくは、このボトルのパッキンが入手できなくなった。
そんな山の道具が63アイテム紹介されている。エッセイとして読んでみても楽しい。
ホシガラス山岳会 著  (株)パイインターナショナル 刊  定価 1,600 円 + 税

ヤマケイ新書『山の名作読み歩き』

はじめに「・・・先人たちはとても豊かな世界を書き残してくれました。その人たちが味わい深い山登りをした結果です。・・・」と書かれている。本書は山の名著といわれる50数編の作品を紹介している。サビの部分や抄録などで、山の名作に容易に近づける。
松尾芭蕉「奥の細道」、武田久吉「初めて尾瀬を訪う」、深田久弥「山頂」、冠松次郎「黒部探検の頃」、辻村伊助「高瀬入り」、尾崎喜八「山頂の心」、桑原武夫「積雪期の白根三山」、今西錦司「山への作法」・・・などなど、どれも一度は読んでみたい山の本である。山岳図書や山岳紀行といわれる分野は、このような先人達が切り開いたともいえ、子どもたちや次代にも引き継ぎたい名著ばかりである。本書を読み歩いて、素晴らしい山の世界に触れてみてはいかがだろう。
大森 久雄 編  山と溪谷社 刊  定価 880円 + 税

『魚の基本』

私たちにとって魚は、食生活に欠かすことができない存在だ。しかし、海、川の魚に限らず魚の基本を知る機会は非常に少なくなった。スーパーなどに並んでいる魚は、多くが切り身であり、その魚がどんな形状をしているのか知ることは少ない。切り身だけで、魚の名前を言い当てるのは至難の業でもある。
本書は魚介を楽しむ8つのキーワード、魚料理の基本、魚をさばく8つの方法などを、カラー写真を使って、わかりやすく解説している。そして、青魚、白身魚、赤身魚、川魚、イカ・タコ、カニ・エビ、そして貝類までの、産地、旬、さばき方、レシピなどを紹介している。魚を知るために役に立つ一冊である。
枻出版 刊  定価552円 + 税

『命を救った道具たち』

サハラ砂漠を探検中の著者は、凶暴な犬に取り囲まれた。その時、命を救ってくれたのが、ミニマグライトという電灯だった。小さな電灯だが強力なスポットライトを犬たちに照射して追い払い、危機を脱した。
探検家である著者の窮地を救ってくれたり、助けてくれた道具にまつわるエッセイだ。衛星携帯電話、スキットル、ライカM9、短波ラジオ、まき尺、バンダナ、モスキートネットなど、45の道具たちの物語である。
高橋 大輔 著 アスペクト 刊  定価1,600円 + 税

『ソトコト』 3月号 〜特集 アイディアあふれる社会貢献プロジェクト〜

社会貢献や社会参加に関心があるが、その方法やアプローチがわからない人も多いのではないか。この特集は、多様な社会貢献プロジェクトを紹介している。街づくりや子どもたちの体験活動などを、わかりやすく例示しているので自分にあった社会貢献活動が見つかるかもしれない。廃校を酒造りの場としたり、劇場の再生、市街地の空き地の再生など、楽しそうなプロジェクトが数多くある。高齢社会化で過疎化がすすむ地域の再生などにも、ヒントが示されているように思う。
木楽舎 刊  定価823円(税込)

『PEAKS』 2月号 〜特集 山の話題2015〜

2015年に予想される「山の話題」について、特集が組まれている。「山の日」「ロングトレイル」「グレート・ヒマラヤ・トレイル踏査」「北陸新幹線の開業」など、今年も注目の山のイベントやトピックがたくさんある。また、「地理院地図の3D」の使い方なども参考になる。素材やギアなどの紹介も興味深い。
枻出版社 刊  定価905円(税込)

『BE-PAL 2月号』 〜特集 2015野遊び年鑑〜

2015年の年間を通した「野遊びの年鑑」である。海、山、川、森などでどう遊ぶか、学ぶかを数多く列挙している。こんな過ごし方、遊び方、楽しみ方があるのかと参考になる。「弘法大師の道」を歩いてみたい。紅葉の森をドローンで空撮も体験してみたいし、流星群のごろ寝観察も楽しそうだ。無人島でのサバイバルキャンプにアジアキノコ旅も、好奇心を刺激する。
また、「災害多発時代」の特集では、火おこしの道具や非常用持ち出しバッグの中味には、アウトドアや登山用具が多く、今さらのように納得である。
昨年11月に安藤百福センターで開催された「秋の収穫祭」もレポートされている。
小学館 刊 定価620円(税込)

『Fielder』 Vol.19

昨年は各地で災害が多発した。災害が起こるたびに、そのときどう生きていくかが私たちに問いかけられているように思う。本誌の特集は、その時の「自足自給技法」だ。狩猟やビバークなど、さまざまな技法が紹介され、危険生物のカラーページもあり基礎知識として役に立つ。もちろん、これらはすぐに取得できるものではないし、実際に使う機会も非常に少ないだろう。しかし、ここに紹介されている技法は、登山やフィッシングなど、アウトドアズや自然体験活動などの原点でもある。自給自足野営完全マニュアルのDVDが付録で付いている。
笹倉出版社 刊 定価750円 + 税

岩波文庫『山の旅』 〜大正・昭和篇〜

解説に「明治十年代から七、八十年のあいだ日本人はいかに山にむかいあってきたか、山に何を感じとって、いかに山を描いてきたか、その一端がわかると思う」とある。本書は、日本の近代登山の初期、国内外の山々に足跡を残した登山家、探検家、作家、紀行小説家、学者などが著した、不朽の名作といわれる著作の抄録である。槇有恒の「アイガー東山稜の初登攀」、長谷川伝次郎の「カイラース一周」、浦松佐美太郎の「頂上へ」、斉藤茂吉の「遍路」、今西錦司の「マナスルの印象」など37編が紹介されている。この抄録で作品の一端に触れ、著者の生き方、自然との向かい方、そして、なぜ人は山に登るのかを考えてみるのもいいだろう。
近藤 信行 編 岩波書店 刊  900円 + 税

『POPEYE』12月号 〜The Complete Walker’14 ポパイの遊歩大全‘14〜

1968年にコリン・フレッチャーによる『The Complete Walker』が出版された。その後1978年に『遊歩大全』(芦沢一洋 訳)として日本で上梓された。この『遊歩大全』がきっかけとなってバックパッキングブームが起こり、若者たちがフレームパックを担いで旅をする姿が数多く見られた。『遊歩大全』は、歩くためのすべてが書かれたもので、同時にアメリカンアウトドアライフスタイルが解説された。
本誌の特集は『The Complete Walker』のいわば現代版として、最新の歩くためのコンテンツが、画像やイラストなどとともにわかりやすく解説されている。
マガジンハウス 刊  定価960円(税込)

『男の隠れ家』12月号 〜特集「異邦人が見た近代日本」〜

幕末から明治の初期にかけて、多くの外国人が日本を訪れた。宣教師、外交官、科学者、建築家、実業家などである。本誌は彼らの業績や足跡をたどった特集である。
初代駐日アメリカ合衆国公使のハリスや貿易商のグラバー、医師であり植物学者でもあったシーボルトなど歴史的にも著名な人たちが多い。その中に探検や登山家なども含まれていた。
その一人が英国人登山家ウェストンだ。宣教師でもあったウェストンは、日本各地の山を登り、名著『日本アルプス登山と探検』を著し、のちに「近代登山の先駆者」と呼ばれるようになった。また、紀行作家の英国人女性イザベラ・バードは、東京から山形、秋田、青森そして北海道まで旅をして、日本の風景や風俗などを『日本奥地紀行』として綴って世界に紹介した。近代文明の創世記に思いを馳せて読んでみたい一冊である。
三栄書房 刊  定価680円(税込)

『Fielder』vol.18 〜大特集「野生食材図鑑」〜

少し郊外に足を向ければ、そこは里山であったり中間山地が広がっていたりと、自然がまだまだ豊かなことを実感する。そこは食材の宝庫でもあるといわれる。本誌は『野生食材図鑑』として「いざ天然の食料庫へ。野山を駆け、獲って食う。」が特集である。「野生の高級食材」としてスッポンやカニ、蜂の子獲りなどを冒頭で紹介している。
「食肉は川にある」として旨い川魚ベスト3、「レアだが旨い魚」も興味深い。「バッタの食べ方」では、食べられる虫カタログのページもあり、虫の見方が変わってくる。また、山菜や食べられるキノコの紹介など、役に立つ秋満載の特集となっている。
笠原出版社 刊 定価600円 + 税

『BE-PAL』11月号 〜特集 オトナのキャンプは夜が本番!〜

秋のキャンプが静かなブームだ。星空、夜のキャンプの過ごし方、灯り、焚火など 秋の夜をキャンプで過ごすための特集だ。
新潮社 刊 定価1,200円(税込)

2) 『IN THE LIFE2 遊びの百科事典』

全480ページと分厚い遊びの百科事典で「子どもと一緒にすごすが楽しい家」「ミラーレス一眼」「ヴィンテージラジオ」「旅」などをキーワードに、100の趣味と遊びを掲載している。
小学館 刊  定価780円(税込)

『SINRA』11月号 〜特集 クマとシカが教える森の未来「森のいのち」〜

クマとシカが教えてくれる森の未来が特集である。この秋は、ブナやドングリの実が不作といわれ、クマの出現が相次いである。人家のある里山やトレイルにも、クマに注意するようにと、立札や看板があちこちに立てられている。
本誌の特集は、クマが、なぜ山から下りてきたのかをテーマに、「怖いクマ、かわいいクマ」「里グマの言い分」「ツキノワグマ、ヒグマ」など、大変わかりやすく書かれている。また、シカ害を減らすために「ハンターが森を救う」「日本の森にオオカミを放て!」など、興味深い記述も多い。クマとシカの生態を通して、「森をいのち」を考えるための一冊である。
新潮社 刊 定価1,200円(税込)

『モノ・マガジン』9−16号 大特集/リスクマネージのためのモノ選び 防災大作戦

震災があるたびに防災用具への関心が高まるが、しばらくすると忘れがちになる。震災は、いつでもどこでも発生するものと覚悟した方がよさそうだ。
備蓄用の水や食品は公的支援がはじまるまでの3日間分は、最低限確保したい。特集では日常食にも非常食にもなる乾燥食品や缶詰などを紹介している。コンロなどの調理器具や省電力の情報機器などのコーナーもある。
それにしても、防災用品にも転用できるアウトドア用品や登山道具が多いことに、いまさらながら驚く。ただ、このような道具類は使い方に慣れておくことも大切だ。特にアウトドア用具類は、実際にフィールドで使ってみることをおすすめしたい。
ワールドフォトプレス 刊  定価637円(税込)

『BE-PAL』9月号 〜オレの山道具がイチバン〜

「山を極めた人の『現役ギア』・・・」と表題にあるように、登山家、猟師、カメラマンなどが使用している山の装備や道具類を解説している。「日清カップヌードル型チタンクッカー」も「山食の最高峰カップヌードル・・・」として紹介されている。ただし、限定200個で、すぐに完売してしまったようだ。
また、「いきものNEW門」はクワガタの特集で、夏休みの観察にまだ間に合うかも知れない。
小学館 刊  定価620円(税込)

「BRUTUS」〜ブルータスのアウトドア大全〜

自転車キャンピング、昆虫採集、カヤック散歩、パックラフティング、聖地トレッキング、シャワークライミング。スウェーデンの夏のアウトドアライフなども紹介されている。一味違う夏休みのアウトドア特集。
マガジンハウス 刊  定価650円(税込)

Fielder Vol.16 大特集「無人島体験」

無人島特集である。無人島体験、無人島へと進路を舵れ!・ウルトラライトな装備で行く無人島キャンプのABC、など興味津々だ。トム・ソーヤーの気分を味わうことができるかもしれない。
日清食品グループの「“骨太の管理職”を育成するために」も紹介されている。
笠倉出版社 刊  定価 600円 + 税

まだまだ間に合う「夏休みの過ごし方に参考になる専門誌」

『POPEYE』8月号 「GO ADVENTURE!」
マガジンハウス 刊 定価 760円 (税込)

『PEN』8月1日号 「まだ間に合う旅のプラン みんなの夏休み。」
阪急コミュニケーションズ 刊 定価650円 (税込)
『Goods Press』8月号  『冒険旅行に出かけたい。』
徳間書店 刊 定価 690円 (税込)

『HUNT』Volume04 2014SUMMER 〜大人の山遊び〜

国内でアウトドアのフィールドといえば「山」であることが多い。国土の70%が山だから必然的だ。だから「大人の山遊び」には、山暮らしの衣服や道具にも関心がある。本誌は「山」での暮らしや遊びを、少し憧れと、これなら出来る、これはほしいを紹介している。
ネコ・パブリッシング 刊  定価1,176円(+税)

『BRUTUS』6月1日号 〜親と子〜

特に子育ての時期は、ほとんどの親が、親と子のありかたに思い悩むものだ。子育てについて、悩むのはいつの時代でも、どんな親でもおなじだろう。各界で活躍している人たちが「こう育てられた。」「こう育てている。」などをコメントしている。
「親と子、田舎で暮らす。」も、憧れの形ひとつとして参考になる。文人や俳優などの「偉人の子育て」は、そうだったのかと、納得する記述も多い。子育て、親と子、教育、恋愛、勉強などをテーマにした、映画の紹介コーナーもある。
読んでみたい「親と子」の特集である。
マガジンハウス 刊  定価650円(税込)

徳間文庫『神去なあなあ日常』

高校を卒業しても進路が決まらない主人公に、担任の先生が応募しておいたのが「緑の雇用制度」だった。林業に就職することを前提とした、国の助成制度だ。何も知らないままに、研修を受け入れてくれる紀伊山地の、とある山村に向かった。
携帯電話も通じず、公共の交通機関もほとんどない過疎地域の村で、厳しい林業を体験する。あまりの過酷さに何度も脱走を試みるが、連れ戻される。しかし、村人に少しずつ受け入れられ、同時に、山の仕事のやりがいや、自然の素晴らしさを学びながら、主人公が成長していく物語。
日本の林業は衰退の一途を辿っているといわれる。林業の重要性と、自然を敬いながら森をいかに守っていくかを問いかけている。
三浦 しをん 著 徳間書店 定価 619円 + 税

『サライ』6月号 〜大特集 「富士山を知る」からはじめる登山の楽しみ〜

昨年、富士山が世界文化遺産に登録されてから、富士山の報道や雑誌などの特集が増えた。「富士山には神が宿る」として、1000年以上も前から登拝が行われていた。
「富士山を知る」からはじめる登山の楽しみが、6月号特集のテーマだ。すそ野から5合目までの古道を歩くのも楽しい。
5合目から山頂への、ポピュラーな4つのルートとその楽しみ方も、それぞれ熟練のガイドが解説。また、登山のための体力づくりと、最新の登山用具もわかりやすく紹介されている。
「よし、この夏は富士山に登ろう」という人には、手に取ってみたい一冊だろう。
小学館 刊  定価 700円(税込)

『ソトコト』6月号 〜特集 日本のトレイル〜

ロングトレイルを歩くのがトレンドになりつつある。『ソトコト』6月号は、「歩く旅」の特集である。
いま、各地にロングトレイルが誕生している。自然や歴史を堪能する道を歩くことは、「素晴らしい遊び方だ」と提唱している。整備されたばかりの大分県「国東半島峯道ロングトレイル」135kmや、「海も人も歴史も楽しめる」里山を歩く「南房総ロングトレイル」65kmのほか、東北東海岸の「みちのく潮風トレイル」や八丈島のトレイル、北根室ランチウェイなども紹介されている。
ロングトレイルがアウトドアズや登山専門誌だけでなく、本誌のようなエコ・マガジンやトレンド誌などでも取りあげられ、すそ野の広がりを見せはじめている。
木楽舎 刊  定価 823円(税込)

『BRUTUS』5月1日号 特集「一世一代の旅、その先の絶景へ。」

私たちが憧れる旅先はどこだろう。それも一世一代とすれば、どのような旅になるのだろう。そこでどんな体験を期待するのか。本誌の特集は、そんな旅を各界の人たちから、また、「本と映画」からも憧れの旅先が数多く掲載されている。ロブ・ノールへもサンティアゴ・デ・コンポステーラへも出かけてみたい。一生のうちにどれだけ行けるか、知らず知らずの間に、指を折って数えてしまった。
果たして、極寒の南極へのエクスペディションと、灼熱のエチオピアダナキル砂漠の旅では、どちらを選ぶか。あるいは選択肢に入らないか、これまでのライフスタイルが問われるようだ。
マガジンハウス 刊 定価669円(税込)

『勝つまでやめない!勝利の方程式』

日清食品が世界一になるための戦略本である。本来ならこの種の企業戦略は非公開が原則だろうが、あえて「プレゼンテーションノート」として公開し、手の内を開示しているのが本書のコンセプトだろう。『「安く作って安く売って儲ける」ビジネスモデルとは。』という同社のビジネスの基本から、「マーケティングはアートである」と、戦略の方程式を示して、答は「ドットコム」でグローバルに世界を制すると解いている。 そして、「先進国の肥満を解消するために肉食を抑制し、菜食に移行する。余剰のカロリーは途上国の栄養不良の人たちに振り向ける。」と、方程式の解答の先に、同社の理念ひとつを提起している。
アウトドアズや自然体験活動の指導者は、マーケティングとは縁が薄いように考えがちであるが、普及啓発活動にはグローバルな視点や視野が必要となる時代になった。自然体験活動にはいまやマーケティングは、必要条件だろう。ぜひ手に取ってみたい、おすすめの一冊である。
安藤 宏基 著 中央公論新社 刊  定価1,500円 + 税

『mono モノ・マガジン4-2特集号』〜ロングトレイルデビューの春〜

巻頭にロングトレイルとは「そこには自然との出会い、歴史との出会い、人との出会いがある。」と記されている。それは歩く旅の道でもある。この特集では、レイヤリング、シューズ、バックパック、それにデジタル機器など、ロングトレイルを歩くための最新のモノが紹介されている。
本誌のようなモノ雑誌やトレンド誌に、ロングトレイルの特集が組まれ、特に若い読者に支持されていることは、この国のアウトドアズにとって大きな意味がある。歩く旅の「デビューの春」となることを願う。
ワールドフォトプレス 刊  定価 3月31日まで650円 4月1日以降669円(税込)

■EXPERT COMPAINONS『アウトドア大百科』〜野外活動のスキルとテクニック〜

本書の著者はオーストラリア人の冒険家で、世界中で翻訳され売れているという。タイトルにあるように、野外活動のスキルとテクニックの教本である。Hiking、Camping、Climbing、Coking、Fishing、Canoeing and Kayakingなど、アウトドアアクティビティを網羅している。またWeather、Map and Navigation、Danger and Emergenciesなどの、アウトドアでの基礎知識も大変わかりやすく書かれている。
全編イラストとともに詳しく解説されているので、見ているだけでも参考になる。ただ、米国のフィールドがベースになっているので、地形、植物や動物などの記述が国内の状況とはやや異なる。また、食生活などにも違いがあるが、外国のアウトドアズを知るという意味からも参考になる。フィールドが異なっても、野外活動のテクニックや知識の基本は変わらない、ということも教えてくれる「役に立つ」アウトドア大百科である。
Lachlan McLaine 著 成美堂出版 刊  定価1,200円 + 税

■日本ロングトレイル協議会推薦『日本ロングトレイルガイドブック』

すべて実踏査した、本格的なロングトレイルのガイドブックである。
ロングトレイルがトレンドだ。いま、全国各地にロングトレイルの整備や計画が進んでいる。中でも本書に取り上げられた北海道から九州までの8つのトレイルは、先進的な事例であるとともに、それぞれ特徴と個性がある。
ロングトレイルの魅力は、日帰りから、全行程を宿泊しながら歩くスルーハイクまで、自由に選択できることだろう。都市近郊のハイキングや山旅を楽しむものなど、トレイルによって楽しみ方が異なる。本書では主なロングトレイルのコースと歩き方、地図、宿泊施設、交通機関などを詳しく解説し、必要なデータも収録されている。写真などもカラーで掲載され、大変わかりやすいガイドブックになっている。
山と溪谷社 刊  定価 2,300円 + 税

『孫の力』16 特集〜東京五輪を観てから死ね。〜

団塊の世代も先端は、70歳に届いた。開催が決まった東京オリンピックまで生きていられるか?孫と一緒に見られるか?と思った人たちも大勢いるのではないか。
本誌の特集である「東京五輪を見てから死ね」というタイトルで、少なくともそれまでは生きていなければと、意を強くした賛同者も多いと思う。あと6年半を生きるアスリートの「金言集」や、笑って健康に生きる「迷言集」で勇気が出る。果たして孫に伝えるべき体験は、東京オリンピックまでに終えることができるかどうか。それともまだまだ続けられるか、ライフスタイルとそのデザインが問われる時代になった。
木楽舎 刊  定価880円 + 税

『TooLs 2012』

道具の本である。日本製はもとより、米、独、フランス、イギリスなどの衣食住に役に立つ道具・用具類が365点紹介されている。道具は持つ人、使う人のライフスタイルによってそれぞれ物語ができる。子どもたちも自然のなかで遊ぶために、生活するために欠かすことのできない道具を見たり、触れたり、ときには使ってみることも必要だろう。道具を選ぶと、グローブ、パーカー、ブーツ、パック、テントなどアウトドアモノが多くなるのが面白い。道具の向こうにフィールドが見えてくる。そんな定番道具が紹介されたTooLsの第2弾である。
講談社 刊  定価 1524円+税

ヤマケイ文庫『大人の男のこだわり野遊び術』

3人の野遊びの達人が、野外での経験と知識をまとめあげた野外読本。
「いざ、野山へ」から始まり、道具、体験、焚火、野宿などが体験的に綴られて、単なる技術書ではなく読み物としても楽しい。野外での技術本やハウ・ツー本とは少し異なり、画家、カメラマン、フィッシャーマンなど3人の著者のアウトドアライフスタイルが、けっして押し付けがましくなく記述されている。巻末の、「野遊び三九の訓戒」の三九は、「野遊びは一日にしてならず」とある。
本山賢司 細田充 真木隆 著 山と溪谷社 刊  定価930円 + 税

『Casa BRUTUS』12月号 〜読み継ぐべき絵本の名作100〜

ネット時代で、子どもたちに絵本を読み聞かせる機会が減ったように思う。子どもたちに読み継ぐべき絵本は数多くある。森のこと、木々のこと、虫や動物たち、そして子どもを主人公にした物語は、世代を超えてそれぞれの年代に、学びや教えを与えてくれる。絵本は決して子どもだけのものではない。私たちの生き方を問いかける絵本も多い。本書は名作といわれる100冊の絵本を、わかりやすく紹介している。手に取ってみたくなる絵本がきっと見つかると思う。
定価880円(税込) マガジンハウス 刊

『日本のロングトレイル』PEAKS特別編集

ロングトレイルが注目されている。ブームというには利用者より、ややトレイルの設置や整備が先行しているきらいはある。多くの人たちが歩き始めるには、少し時間が必要だろう。しかし、高齢社会や自然志向のニーズの台頭で、「歩く旅の時代」が到来しつつあるのは確かだ。本誌では古道として知られている巡礼街道や、いま整備中のものまで全国の20余りのトレイルが紹介されている。ハイキングとして気軽に歩けるものから、本格的な山登りの要素が含まれるものまで、トレイルには特徴がある。ロングトレイルの定義や言葉の意味はまだ明確ではないが、少なくともスルーハイクには数泊は必要で、長いというのが共通している。
本誌のサブタイトルは「歩いて旅して、日本を再発見!!」とある。ロングトレイルは、まさに旅の道として進化してくのだろう。
枻出版社 刊 定価 1,200円 + 税

BRUTUS 「あたらしいふるさとを、見つける旅 美しい村へ。」

レジャー行動で、もっともやってみたいのが旅である。それも自然を求める旅のニーズが高い。自然への旅をしたいと考える家族も多くなった。また、大人にとっての自然体験の方法の一つが旅だろう。
日本には184もの村が存在するそうだ。そんな中で本誌は、熊本県の南阿曽村、秋田県の上小阿仁村、高知県の三原村、奈良県の十津川村、岡山県の新庄村、高知県の馬路村などを取り上げて、自然、習俗、地場産業、人々の暮らし、伝統文化などを紹介している。そこには、豊かな自然と私たちが忘れかけていた、地域に根差した伝承すべき原風景がある。子どもたちにも、美しい村を見せたいと思う。
マガジンハウス 刊 定価 630円(税込)

『モノ・マガジン 8-16.9-2 合併号』海モノ、船モノの大図鑑

自然体験やアウトドアズでは、海や船について知る機会は少ない。この特集では灯台、漁船旗、クルーザー、船乗りのユニフォーム、海洋丸、豪華客船のことなどが、詳しく掲載され興味津々だ。焼津漁師の昔と今では、焼津漁業資料館に足を運びたくなった。船上での基本ロープ術はぜひ覚えておきたい。
「小さな船旅を楽しむ」では、瀬戸内エーゲ海の前島フェリー「第7からこと」、答志島への「第28鳥羽丸」、富山湾の鉄道連絡船「こしのかた」、千葉港工場めぐり観光船「あるめりあ」などが紹介されていて、まだ夏休みに間に合いそうだ。
海と船のトリビアでは、以前から知りたかった船の様々な疑問に答えてくれていて、読み物としても楽しい。親子でも十分楽しめる、海モノ船モノの大図鑑である。
ワールドフォトプレス 刊 定価650円(税込)

日本百名山を再発見『あの山はもっと遊べる』 Sports Graphic Number Do

作家深田久弥さんが選んだ「日本百名山」で、山と自然を楽しむ方法を紹介している。いま、トレンドンのトレランや、自転車でのヒルクライム、沢登りやボルダーリングなど、百名山での遊び方は限りない。一時は百名山登山ブームだったが、百名山の登り方だけでなく、遊びや楽しみ方を多角的に例示している。八ヶ岳の山小屋の楽しみ方や、下山後に楽しめる「山の街」の視点は面白い。山岳部・ワンゲルの伝統山メシ考は、学校での活動が活況さを取り戻したことがわかる。「子連れ登山」の「一緒に登って学ばせる」は、自然体験の原点だろう。外国人の目線での日本の山の楽しみ方もユニークで、私たち日本人には再発見だ。
また、山を超軽量化した装備で登るウルトラライトは、子連れ登山の参考になる。富士山を10倍楽しむ方法は、これから登頂を目指すなら一読をおすすめする。数多い登山・アウトドア誌とは少し視覚が異なった、ユニークなムックである。
文藝春秋 刊  定価 880円(税込)

『日本山岳史』 男の隠れ家特別編集 時空旅人VOl.14

 見出しにあるように、先人たちの足跡をたどった『日本山岳史』である。かつて戦後の登山ブームのころは、学校山岳部や社会人山岳会が盛んで、部室やクラブルームには登山史や記録の図書が数多く並んでいた。昨今の登山ブームは未組織の登山者が多く、先輩から山岳書の推薦や紹介で、登山史などは読む機会も少なくなった。
そんな中で本書は、日本の山岳史を写真や図を数多く用いて、わかりやすくまとめている。「新宿発登山列車の追憶」は思いで深く、満員の夜行列車は昔日の感がある。北アルプスの開拓史、立山信仰登山、富士登山の歴史などは知ることで、登山がより深いものになる。山小屋の物語も、利用する前に読んでおくと趣が増してくるだろう。登山の用具、食料なの歴史も、大変興味深く、登山とその時代背景がよくわかる。登山ブーム、アウトドアブームのいまだからこそ、先人の記録を教えとしたい。そして、夏山登山の前に読んでおきたい一冊である。
三栄書房 刊  定価 780円(税含む)

『BE-PAL』2013年6月号

ロングトレイルという言葉が、広く知られるようになった。そして、ロングトレイルの概念のひとつが「歩く旅」だとの認識も、徐々に深まってきたようだ。ピークを目指すことだけでなく、自然への旅と考えると身近なものになってくる。
本号の特集が「ロングトレイルを歩く旅」である。歩くとは何かを『遊歩大全』の著者コリン・フレッチャー氏との1997年のインタービューを再掲載し、ヒントを得ようとしている。
また、「ロングトレイル」とは何か、歩く旅の基本の装備、道具、ウェアなどが詳しく解説されていて、これから歩いてみようと考えている人には大変参考になる。 国内の主なロングトレイルを、10か所選定したガイドブック『LONG TRAIL in JAPAN』が、別冊付録となっている。
小学館 刊 定価 680円税含む)

『LONG TRAIL HIKING』

いま注目されているロングトレイルを歩くためのMOOK本である。ロングトレイルとは必ずしも山頂を目指すわけではない、山旅の道といったところだろうか。国内でブームとなっているウォーキングは、「健康」がコンテンツのひとつであるが、その延長線上に歩く旅があると考えたい。
本書は米国やニュージーランドの代表的なロングトレイルを紹介しながら、トレイルで出会う風景を通して、ロングトレイルが存在している意味を解説している。また、ロングトレイルを歩くためのスタイル、装備、ウェア、シューズ、パック、アクセサリーなどが説明されていて、ハイキングの入門書としても参考になる。アメリカンアウトドアズのテイストにあふれたムック本でもある。巻末には日本のロングトレイルも紹介され、その広がりを感じ取ることができる。
講談社 刊  定価1,050円(税含む)

『誰も知らなかった英国流ウォーキングの秘密』

 イギリスにはフットパスというトレイルがある。国中に網の目のように張りめぐらされたフットパスの総距離は、22.5万キロともいわれている。その歴史は産業革命にさかのぼるが、国民の歩く権利、いわゆるright of wayが法律で定められたのは比較的新しい。
このフットパスを歩き、その歴史、風景、人々の暮らし、出会うランブラー、ハイカーなどの情景を綴ったのが本書である。
英国はアルピニズムを発展させる一方で、目的をもたない、ぶらぶら歩きのウォーキング文化も進化させた。また、美しい田園風景の整備が、イギリスのウォーキング文化の基盤となっていると書いている。そして、人々が歩くことを呼びかけられたわけでも、地域の活性化のためでもなく、歩く文化は、歩く権利を欲求しながら、歩く環境をつくることに努力してきた結果の産物だと指摘している。
本書は残念ながら絶版となっているが惜しまれる。
市村 操一 著 山と溪谷社 刊  定価 1,600円 + 税
※本書は絶版ですが、中古本として手に入る場合があります。

『アウトドア教程 技術編』

巻頭に、ウィルダネスを目指す人の技術書である、と記されている。本書の発行は1981年4月で、すでに30年以上も前だが、内容はいまも遜色ない。もちろん道具や用具、ウェア類については各段に進歩はしているが、アウトドアへ向かうための準備やアウトドアでの技術などは、現在でも基本は同じである。アウトドアの生活学、行動学、情報学、写真・図解、その他総合的な事柄に整理・分類されていて、大変わかりやすい。特にアウトドアでの基礎技術について、多くのページが割かれていて現在でも十二分に役に立つ。
本書はアメリカンアウトドアズをベースにしたもので、当時としては新鮮であった。先端技術とアウトドアズの関係、エコロジーについての考え方などは、いつの時代にあっても通用する。
アウトドアズの技術書は数多く出版されているが、本書はその中でも秀逸作の一冊だろう。いつも手元に置いておきたい、アウトドアズの教本である。
JICC出版局 刊  定価800円
※本書は絶版ですが、中古本として手に入る場合があります。

『ブルータス』4月号 特集 優しき場所へ、幸福な旅。

自然体験・アウトドアズのひとつのかたちが、旅である。混雑する観光地ではなく、豊かな自然に包まれた、かの地への旅をしてみる。そんな地へ、家族と、子どもたちと一緒に出かける旅は、アウトドアズの原点のひとつといえる。
本号は「旅に行きたくなる」をテーマに、国内外の旅で出会う人々生き方、暮らし、風景などを、文化人・芸術家の視点もまじえて紹介している。
ヒマラヤ山脈を越えて、チベットラサへ入国した河口慧海、ウェストンの日本アルプスの山旅、四国の原風景段々畑の旅、ノルウェイオスロ郊外の森の暮らしなど、幸せな旅のかたちがある。そんな旅に出かけたくなる一冊である。
マガジンハウス 刊  定価 650円(税込)

『ソトコト 3月号』〜社会を変えるNPOのアイディア集〜

秘密公開!社会を変えるNPOのアイディア集、ソーシャルNPO100団体の特集号である。国内外で地域の活性化や社会貢献をおこなう、NPOが紹介されている。都市と地方を結ぶ取り組みや、地元で楽しむアイディアを模索するなど、多彩な活動をおこなっている団体が多い。
NPOというと、災害時や介護などのボランティア活動を想起しがちだが、その活動は幅広い。中でも地域の活性化や、環境問題に取り組む団体が増えてきている。芸術や農業などの活動も目立つようになった。
また、NPOの活動そのものとは別に、そこで働くライフスタイルや、自分のデザインを模索する若者たちが増えてきた。お金やモノだけでなく、自分にあった暮らしや生き方を求めている。そんな人たちに参考となる、NPO活動を例示している。
ボルネオでの森林保全、ヒマラヤでの人工氷河の取り組みなど、海外での活動も紹介されていて興味深い。
木楽舎 刊  定価 800円(税込)

『ワンダーフォーゲル 2.2013』特集 山の新基本200

最近、登山ブームもあって装備類やウェアも、種類やブランドが増加している。消費者としては何を基準に選択すればいいのか、迷うことが多くなった。それだけに、登山やアウトドアでの用具やウェアの基礎知識は、しっかり身につけたいと思う。
本書は「山の新基本200」として、この時代の新しい山の装備、歩き方や方法を紹介している。まず、バックパック(リュックサック)とブーツ、雨具をそろえて近くの山を歩いてみることから始まる。最新のバックパックや雨具の選び方、アンダーウェアの種類などを、わかりやすく解説している。また、デジタル機器の活用方法や、ブームのテント泊についても、装備やノウハウを紹介している。
ほかにも食料計画、山の歩き方、山小屋に泊まる方法、天気、緊急事態の対処方など盛りたくさんだ。山の基礎知識の保存版として、手元において置きたい一冊である。
山と溪谷社 刊  定価 1,000円(税込み)

『ポパイ2月号』〜SKI BOY ! スキーブームの復活〜

今シーズンはどこのスキー場も、たっぷり降雪があって滑走可能となっている。スキー場はひとりでも多くのスキーヤーに来てもらおうと、子どもはリフト代無料、19歳は無料であるとか、レストランの割引サービスなどなど、さまざまな工夫に知恵を絞っている。スキー産業界は決してよくはないといわれているが、スキーヤーやボーダー人口は、どうやら下げ止まった感がある。
本書はそんな状況の中で「さあ、スキーへ行こう!」と、小難しい理屈は抜きにして、楽しいスノーライフスタイルを紹介している。「やっぱりスキーって旅だ」は同感で、「むずかしいことを考えないで、自由に」は、大変わかりやすい。こんなフレーズがスキー界にほしかった。スキーのクロニクルは懐かしくて、思わず読み入ってしまった。インゲマル・ステンマルクや映画「私をスキーに連れてって」は、スキー華やかなりし時代の思い出である。
スキーを単なるウィンターレジャーとしてとらえるのではなく、冬のアウトドアズという視点が必要だ。冬の米国ポートランドのスキーライフも紹介されているが、まさにアウトドアライフそのものだ。ライフスタイルが楽しそうで、すぐにスキーに行きたくなる一冊である。
マガジンハウス 刊  定価 680円 (税込)

『野宿入門』

本書は野宿のマニュアル本ではない。1970年ごろバックパックキングが、若者たちの間で流行った。おおぜいの若者たちがパックを担いで放浪の旅に出た。まさに「青年は荒野をめざす」時代だった。そんな時代、野宿は当たり前のように行われていた。しかし、野宿という言葉も行為も、時代とともに忘れ去れてしまった感がある。
そんな中で、著者は野宿を日常生活の延長線上でとらえ、駅舎や公園、ときにはコンビニの前やコインランドリー店で寝たりと、ふだん目線で「野宿」を綴っている。
野宿の要素として筆者は①安全②よく眠れる場所③怒られない場所をあげ、無事に朝が迎えられることが、もっとも大切だと述べている。駅で寝ることをSTBというらしい。Station bivouac という言葉も、本書ではじめて知った。また、全国900箇所にある道の駅が「一大野外物件」として推奨されている。
著者は最後に「野宿はなんでも面白がり、愉しむ力を育ててくれる」と述べている。野宿は野外活動の原点のひとつだと、いまさらのように思い知らされる一冊である。
かとう ちあき 著 木草思社文庫 刊  定価 560円 + 税

『ソトコト』2012年7月号 特集 楽しい海と山の滞在計画

夏休みを直前にして、どこへ行こうかと思案している人も多いことだろう。最近では、環境に配慮してエコな旅がトレンドだが、計画し実行に移すのはそれなりに下調べをする必要があるし、ライフスタイルについても少しは考えなければならない。
本誌の特集では、楽しい海と山の滞在計画をキーワードにして、世界遺産に登録された小笠原諸島をはじめ、上高地、八ヶ岳などのほか身近な房総半島や、近隣の島々などを紹介している。が、単なるガイドではなく、その地域の人々と暮らしや文化に、いかに接していけばいいのか、環境を配慮しながら自然を楽しむにはどうすればいいか、などをわかりやすい例示している。自然とともにある旅のライフスタイルを考えるヒントが、たくさんある。
木楽舎 刊  定価 800円(税込み)

『アウトドアで遊ぶ・学ぶ 元気な野外学校80』

国内には推定でおよそ4,000もの自然学校や野外活動団体があるといわれている。そんな全国の野外学校から「元気な野外学校80」として、80の学校や野外活動団体をピックアップしたガイドブックである。野外学校の沿革、活動のコンセプト、おすすめの体験プログラム、得意とするプログラム、スタッフ、そして年間プログラムなどを詳しく紹介している。
野外学校とは何か、どんな活動をしているのかが、大変わかりやすく構成されているので、学校選びの参考となる。キャンプを得意にしている学校から、カヌーやスキー、さらに登山やクライミングを主な活動としているところまで、野外活動の裾野とバリエーションは幅広い。子ども達やスタッフの笑顔が「元気な野外学校」を支えている。
アウトドアで遊ぶ・学ぶ制作委員会 編 山と溪谷社 刊  定価2,300円(税込)

『装丁昧』

山岳図書という分野がある。書店のコーナーでも登山やアウトドア関連のスペースは、他のレジャーやスポーツに比べて、大きくとられているところが多い。山を舞台とした小説、登山に関する記録、紀行、歴史、技術、そして写真集などの出版物は膨大である。それに動植物の図鑑なども加わる。
本書は「山の本」のデザインを一筋に手がけてきた著者の作品の装丁集である。田中澄江さんの『私の好きな山の花』も、不破哲三さんの『私の南アルプス』も、ガストン・レビュファの『山こそ我が世界』も、坂倉登喜子さんの『エーデルワイスの詩』などの装丁も、著者の手によるものであったと、初めて知る人も多いことだろう。山の本好きなら、記憶に残る名著のデザインが多い。図書はカバーや表紙のデザインで内容がわかるといっても過言ではなく、装丁は図書の売れ行きを左右する大きな要素のひとつといわれる。デザインがいいと、思わず手にとってしまうことがある。
「紙のアルピニスト」と称される著者の「山の本」に込める想いと愛情が伝わってくる好著である。
小泉 弘 著 山と溪谷社 刊  定価2,400円 + 税

『回復の森』

森林セラピーがブームである。地域活性化のひとつとして積極的に取り入れている自治体も増えている。
『森林療法とは、森林を活用して病気になりにくい身体や心をつくる自然療法のひとつである』と本書は解説している。一方で、森林が人々の健康や心に本当にいいのか、そのデータが少ないのが現状である。『森林療法は、いまだにファジー要素の多い自然療法の一つである』とし、さらに森林保健活動はまだ研究の段階にあり、臨床における研究データが大きく欠落しているとも、本書は指摘している。
しかしながら、森林のもたらす多様な効果や効用を、医療はもちろん、福祉、教育さらには地域活性化にまで、各地での取り組みを例示しながら、森林のもつ可能性を検証している。村の診療所の取り組み、認知症患者の症状改善、知的障がい者施設での野外教育、森の幼稚園、超高齢社会と森林保健活動など、数々の事例が紹介されていて非常に興味深い。
実践編の「森林ウォーキングのすすめ」では、ボランティアを募った実験を行い、森林ウォーキングが、血圧に効果があるのではないかとの結論を引き出している。森林ウォーキングプロトコールや記録ノートは、取り組みの参考になる。また、「森の幼稚園」の項では『森は想像力と創造力を育てる絶好の場所』と、まさに自然体験活動のテーゼが、しっかり提言されている。
上原 厳 監修  日本森林保健学会 編 川辺書林 刊  定価1,600円 + 税

『ロングトレイルという冒険』

「旅こそ人生」であり、「人間は本来、社会人である以前に自然人であったはずだ」。これが著者のフィロソフィーであり、バックパッカーとしての基本姿勢でもある。この姿勢は、3,500kmのアパラチアントレイルを6ヶ月かけて踏破した「スルー・ハイク」で、しっかり具現化されている。本著はこのアパラチアントレイルをはじめ、米国の主なロングトレイルでの経験を「好奇の宝」として、バックパッカーの理想を凝縮している。国内外のロングトレイルを歩き通した経験から、バックパッカーを目指す、中でも、若い人たちに著者の想いを伝えようとするバイブルでもある。著者の理念を実現した信越トレイルや、国立公園内の自然歩道なども紹介しながら、日本の旅ほど贅沢なものはないと「人と森とのハーモニー」を綴っている。
また、「ぼくのバックパッキング術」として、数々のエピソードを紹介しながら、必要な装備やウェアなどを、そのブランドの歴史にも触れて興味深く解説している。
トレンドになりつつあるロングトレイルを歩くためにも、ぜひ読んでいただきたい好著である。
加藤 則芳 著 技術評論社 刊  定価 1,580円 + 税

『スリーカップス・オブ・ティー』

米国の登山家がカラコルム山域(パキスタン)に、子どもたちの教育のために学校を建設する、ノンフィクションドキュメンタリー。全米でベストセラー(N.Yタイムズ紙30週間1位)になった、
K2の登頂を断念し、失意の中下山する途中、バルトロ氷河の上でポーターたちと逸れてしまう。ほうほうの定で、ようやくたどり着いた麓の村で、村人に助けられた。だが、その村は予定のコースから外れた貧村だった。 滞在中に学校もなく、乳幼児の死亡率も高いこのような村では、教育こそ人々を幸せにする方法だと考えるようになった。帰国後、自分の生活費を切り詰めながら、学校建設のための資金集めに奔走する。やがて、宗教の壁を乗り越えて、カラコルムに学校が続々と建設される。
その後、9.11の同時多発テロが発生し、イスラム圏のパキスタンやアフガニスタンに、学校を建設するという運動にも、非難が向けられた。しかし、「教育によってテロはなくなる。テロとの戦いは武器ではなく、学校をつくることだ」という著者の強い信念と熱意は、やがて人々の共感の輪となって、大きく広がっていった。
途上国の子どもたちの教育には何が必要か、民族や宗教の違いを超えて、どのような支援がふさわしいのかなど、数多くの示唆を与えている。
グレッグ・モーテンソン、デイヴィッド・オリバー・レーリン 共著
藤村 奈緒美 訳 サンクチュアリ出版 定価 1,900円 + 税

『湖のそばで暮らす』〜インディアンの友だちから教わったこと〜

 著者が小さな女の子だった頃、米国ウィスコン州の小さな湖のそばに住むインディアンと友達になった。そのインディアンの友達から数々の野外技術を教わった。
野外生活の知恵には大切な習慣が二つある。ひとつは「目に入るものすべてをよく『見る』」。つまり、知ること、状況をよく観察すること。もうひとつは「備えよ」。備えるとは、野外では用具や道具などを、しっかり準備しておくこと。インディアンは誰よりも、この習慣を身につけているという。まさに、インディアンの生活技術や知恵は、私たちにとって野外技術そのものである。ひも結び、ブランコロープ、石垣つくり、草木染、簡易テーブルの作り方など、米国の生活文化やライフスタイルの違いを差し引いても、アウトドアで役に立つ知恵と技術が溢れている。イラストもきれいでわかりやすく、読み物としても楽しい。
1994年「本の雑誌」ベスト10に選定されている。
M・ウィルキンス 著  蓮尾 純子 東 馨子 訳 筑摩書房刊 定価 1,560円 + 税

『メインの森をめざして』~アパラチアントレイル3500キロを歩く〜

米国ジョージア州のスプリンガー・マウンテンから、メイン州のマウント・カタディンまで、アパラチアン山脈沿いに南北3500kmを縦貫する「山道」が、アパラチアントレイルである。この長大なロングトレイルを踏破した人のみが、手にすることができるワッペン(Appalachian trail Georgia to Main 2000 miler)を「ぼくはそのワッペンをもらうための目的で歩くことに、子供のように単純な喜びを感じていた。」と、著者は正直にその動機を述べている。
本書は2005年4月3日から10月6日までの187日間にわたる、アパラチアントレイル踏破(thru-hiker)の長編記録である。出会うバックパッカーとの友情や数々のエピソードは、まさに人と自然の物語である。639ページという分厚い本書であるが、ページを追うごとに、あたかもトレイルを歩いているような錯覚に陥ってしまう。そして、バックパッカーは、なぜ歩くのか、という答えが見えてくる。
アパラチアントレイルとその山麓には、緑豊かな自然と、先祖が培ってきた生活文化がある。南北14州にまたがる文化、宗教、政治など、米国の建国の歴史とオーバーラップさせながら、トレイルの社会学的な考察も大変興味深い。著者のネイチャーライターとしての視角が随所に表現されていて、優れた作品になっている。アウトドアファンには、是非とも読んでいただきたい好著である。
加藤 則芳 著 平凡社 刊 定価 2,800円 + 税

『BE-PAL 5月号』緊急特集 いざというときに役に立つアウトドア用具の選び方と野外生活マニュアル

「『生活技術』は、誰もが身につけておくべき基本スタイルです!」いうメッセージが、この特集のコンセプトだ。「生存技術」は、いまや私たちにとって身につけておかなければならない必須事項になった感がある。また、遊びで使う数々のアウトドア道具は、いざというとき身を守ってくれる重要な用具となる。東日本大震災で、緊急時に対する私たちの意識も、大きく変化したように思う。知っているようで知らないアウトドア用具や生活技術が、緊急時の対応という視点で紹介されている。「外出中の事態に備える」などは、すぐに参考になる。こんな時期だからこそ目を通してみたい特集である。『正しいナイフの使い方』が付録になっている。
小学館 刊 定価580円(税込み)

『fly Fisher』5月号 特集 釣りとカメラ

 釣りに出かけるとき、いまや、デジカメは必携である。コンデジの性能や機能は飛躍的に向上したが、釣りをしながら写真を撮るというのは難しい。狙っていた魚がヒットすると、アドレナリンが分泌して、撮影どころではなくなりがちだ。釣り上げた魚をリリースしてから、撮影するのを忘れていたことに気づくこともしばしばである。また、重くなりがちな機材を、釣り道具と一緒に持ち歩くのも大変で機材選びも難しい。さらに、水辺での撮影は露出補正のテクニックも必要で、とかく釣りと撮影には苦労がつき物である。
本誌の特集は、釣り人の目線に立って「コンデジは、数打てば、の精神で」や「魚をきれいに撮るベーシック」などのハウ・ツゥが紹介されている。また、水辺の撮影についてのエッセイなども掲載され、読み物としても面白く、写真も美しい。巻末の「In the Middle of No-When 」や「イーハートーブ野遊び手帖」などのエッセイは、渓流へと足を向けさせてくれる。
つり人社 刊 定価 1,200円(税込み)

『ウルトラライトハイキング 〜Hike light, Go simple.〜』

 欧米にはロングトレイルが数多くある。米国の東海岸を南北に縦断するアパラチアントレイルは35,000kmにおよぶ。ロングトレイルを踏破するには、数ヶ月から半年を費やさねばならないこともある。このような「トレイルを踏破する『スルーハイカー』によって生みだされた」のがウルトラライトハイキングだ。リュックサックに入れる荷物を極力おさえ、できる限りシンプルなスタイルにしておかないと、トレイルを長期間にわたって歩くことはできない。本書は「ウルトラライトハイキング」について、発祥の歴史、哲学から装備や食事、さらには「気遣い」にいたるまでを、わかりやすく詳細に記述した、日本でははじめての解説書である。ウルトラライトにすることで自然がより近くなり、ロウインパクトにもつながる。国内でも新しいハイキングスタイルとして注目されていく予感がある。
自然体験活動の指導者だけでなく、中高年登山者、さらには山ガールにも読んでいただきたいお薦めの一冊である。
土屋 智哉 著 山と溪谷社刊 定価1,500円(税含む)

『山と溪谷』2011年1月号(特集 登山白書2011)

 高尾山の1日の最高登山者数は、74,359人だそうだ。まるで通勤ラッシュなみである。富士山は6合目で40万人、8合目が32万人訪れた。それに山ガールブームが巻き起こって、登山人口は1,230万人だとするデータもある。この数値が確かだとすると、近代登山が始まって以来の登山ブームである。本誌はそんな現状を登山雑誌の相次ぐ創刊や、観客動員数200万人を超えた映画『剣岳 点の記』、今年公開される『岳 みんなの山』、あるいはアウトドアファッションブームの火付け役のひとつになった野外フェスなど動向を紐解きながら、登山ブームの背景を論じている。この登山ブームは果たして本当なのか、定着していくのか、さらには若者たちに波及するのか、専門誌のみならずとも自然体験活動の指導者にとっても非常に興味深い。
この国の地勢から登山は、自然体験活動の主要なアクティビティのひとつだ。登山の現状を的確に捉えておくことは、マーケティングとしても重要である。山の便利帳2011が付録になっている。
山と溪谷社刊 定価1,200円(税含む)

『生物多様性100問』

帯に「Q&Aでわかる生物多様性入門!」とあるように、生物多様性とは何かから始まり、「生物多様性国家戦略」「生物多様性基本法」さらには、先ごろ開催された「COP10」の意義まで、幅広く解説された入門書。Q&Aで書かれているので大変わかりやすい。COP10が閉幕し、生物多様性の言葉自体が、すでにメディアには登場することが、少なくなった。そのうち人々の関心も、すっかりなくなってしまうかもしれない。 生物多様性は、私たちに突きつけられた大きな課題である。人間が生きていくためには絶対に欠かせない生物多様性の保全を、持続的に考え、行動に移していく必要がある。
盛山 正仁 著  福岡 伸一 監修  木楽舎 刊 定価 1,000円+税

『野宿大全』〜究極のアウトドアへの招待〜

アウトドアで「歩く」、「移動する」、「食べる」、「寝る」などの技術や知恵・知識が経験的に書かれた教本である。「野宿の楽しみを知らずに生きている人は可哀想だ」が本書のコンセプトになっている。野外で活動するための体の鍛え方、歩きかた、バイクパッキングの方法、テントで寝るための知識、食料計画、宿泊地の選定などが、これまでの数多くあるアウトドアのマニュアルとは一線を画して、心憎いほどポイントを突いた解説がされている。例えば、ウォーキングのペースでは「『ゆっくり』と『もっとゆっくり』のふたつである。楽に歩くこと。ただそれだけである」。また、バックパックでは、「何年も使える大事な道具ですので、買うときは値札を見ないで決めること」。「残念ながらシュラフは価格と性能が比例する。予算が許す限り、高級品を選んだほうがいい」など、とてもわかりやすい。
アウトドアのマニュアル本は数多く出版されているが、メーカーを名指しで製品の良し悪しを指摘している例は少ない。本著では具体的に製品名をあげながら、長所や欠点などを記述している点が、読者にとって大変参考になる。あとがきに「この本は、バックパッカーからサイクリスト、さらにはオートキャンパーまで、野外活動の初心者から中級者まで、役立つことは保証しよう。」とある。アウトドアの教本としてお奨めできる一冊だ。
著者 村上 宣寛 三一書房 刊  定価1,800円 + 税

『孤高の人』

新田次郎の山岳小説「孤高の人」を原作とするコミック版全5巻。週刊「ヤングジャンプ」の連載が、コミック本としてまとめられた。原作は山岳小説の最高峰のひとつで、人はなぜ山に登るのかを問いかけている。本書は原作とは時代もストーリーも違っているが、人が山に魅せられるのはいつの時代でも同じである。
高校生の主人公森文太郎は転校生で、心をとざし、誰とも交わろうとしない。そんな彼は、からかわれ半分で校舎の垂直の壁を素手で登ってしまう。この達成感が彼を山へ、登攀へと目覚めさせた。コミックではあるが、「孤高の人」森文太郎の世界に魅せられ、はまり込んでいくのが不思議である。現代登山の最先端を知る、という意味でも興味深く、登攀についての緻密で正確な表現も秀逸だ。
著者 坂本 眞一・高野 洋 原案 新田次郎著「孤高の人」 集英社刊 全5巻 各刊定価514円 + 税

『東京発信州行き鈍考列車30年』

東京から北アルプスの山麓に移り住んで30年が経過した著者が、田舎暮らしで感じたこと、見えてきたことを社会学の視点で、ときには文化人類学的な視角で解析しながら、「これからの私たち日本人の生き方」に、さまざまなヒントを示そうとしている。
田舎の生活を「時速4キロの文化」とし、都会の生活に「時速50キロの文化」というユニークなキーワードを与え、ムラ社会のなかで、いい塩梅のライフスタイルとは何かの模索がいまも続く。「田舎をことさら特別視して、そこへ移住することでこれまでの生活、人間関係がリセットされると思う都会人が少なからずいる・・・・」が、「田舎に思い描いた暮らしが実現できる保障はどこにもない・・・」は、著者の都会人への率直なメッセージである。
田舎暮らしとは、実は人と自然暮らしの楽しみであり、生活の中に自然を取り込みながら、そこに住む人々との付き合い方の間合い、微妙な距離感をいかに保てるかどうかだと説いている。そして、森羅万象に抗うことのないライフスタイルとともに、都会ともいい距離と関係をもつことで「田舎型暮らしの魅力」が発見されるひとつの方法とも述べている。
地域社会で活動する自然体験の指導者、なかでも若い人たちにはお薦めの好著である。
扇田 孝之 著 現代書館 刊 定価1,800円 + 税

『ブルータス』11月1日号 山特集

あいついで、トレンド誌が「山」の特集をおこなった。『ブルータス』は、「ワンダーフォーゲル主義」をコンセプトにした構成で、米国のジョン・ミューアトレイルやヨセミテなどを紹介している。また、「HISTORI OF GREAT BACKPACKING GEAR」ではアウトドア用具の歴史と進化がイラスト入りで詳しく解説されている。この種のテキストでは稀に見る秀逸さといっていい。そのほか日本の登山史とトレイル、さらには山岳文学などもわかりやすく記載していて、登山のもつ文化的要素がよく理解できる。
http://magazineworld.jp/brutus/651/
マガジンハウス刊 630円(税込み)

『Esquire 12月号』エスクァイア日本版

『Esquire』は、「美しき日本の山々へ」をテーマに、北穂高、京都北山、白馬山麓、富士山、谷川岳などを山岳文化の視角で紹介しながら、「今、山へ行こう」と呼びかけている。中でも「ヒマラヤ登山とエコロジーのゆりかご、京都・北山」は、「北山からヒマラヤへ」を合言葉に、1,000mにも満たない藪山から憧れのヒマラヤを目指した、いまや中高年となった岳人には懐かしいフレーズである。数多くの著名な登山家を輩出したのが京都北山だった。『Esquire』誌が特集を組むと、「山」もトレンディでオシャレになる。
エスクァイア マガジン ジャパン 700円(税込み)

『基本がわかる野鳥ECO図鑑』

巻頭に「野鳥の出会いや、彼らが繰り広げている日々のドラマに気づかずに暮らしている人が多い」とある。私も含めて、多くの人たちがそうなのだろうと思う。本書は知っているつもりでも、実はほとんど知らなかった野鳥の基本を、「やさしくわかる図鑑」をコンセプトに明快にまとめられている。
野鳥の見分けかたを、大きさ、仲間、水辺、河川、習性などの簡単なキーワード別に解説しながら、「あるがままに親しむ」方法を、著者のすぐれた感性でわかりやすく著している。終章の「鳥と人とエコライフ」では「野鳥がわかると命のつながりが見えてくる」。そして、野鳥との出会いは、人生を豊かにし、持続可能な楽しみ方が生まれくると述べている。カラーイラストもきれいで、いつも手元に置いておきたくなる「安西式バードウォチング図鑑」である。 著者 安西 英明 イラスト 谷口 高司 東洋館出版社 刊  定価 1,900円 + 税

『日本型環境教育の知恵』

日本を代表する環境NGOのひとつとなった日本環境教育フォーラムが、設立20周年を記念して、「自然体験をと通して地球環境を考えよう」をコンセプトに、記念出版をおこなった。世界と日本の環境教育の歩みを検証し、日本型環境教育のあり方を具体的な事例をあげながら、21世紀型ライフスタイルの提案を試みようとしている。また、自然学校による地域の活性化の実践例から、人づくりと企業、あるいは行政とのパートナーシップの意義と課題に論及するなど、様々な視点で環境教育を解析し、多くの課題を提起している。また、第7章の未来へのメッセージでは、東大名誉教授の月尾嘉男氏が「一神教と近代合理主義が環境問題の背景にある」と論及するなど、読み物としても興味深い記述が多い。さらに環境教育の年表など、資料としてもよくまとめられていて、指導者には必携の知恵本としてお薦めである。
編著 (社)日本環境教育フォーラム 小学館クリエイティブ 発行 小学館 発売  定価1,890円 + 税

おひさまのほんシリーズ『むしのもり』

主人公のさっちんは、むしのもりに住んでいるオオクワガタと友達だ。むしのもりでおこなわれた、相撲大会やお祭りに招待され、クモやゲンゴロウなど数多くの昆虫たちにであう。昆虫好きの子どもたちにはたまらない夢の絵本だ。主人公の好奇あふれる目線が、むしたちの不思議の世界を愉快にとらえている。カブトムシやオオクワガタは、デパートなどで買うものだ、と思い込んでいる子どもたちにもぜひ読み聞かせたい。
「私たちが住んでいる地球は、人間だけのものではない。自然にはさまざまな生物がいるから安定している。昆虫の生命を無視することなく、仲良く共生していかなければならない」というレイチェル・カーソンの思想を思いおこさせてくれた。生物の多様性と環境学習の原点について、ちょっと立ち止まって考えてみたくなるヒントが多い。大人でも十分に楽しめる、お薦めの絵本である。
著者 タダ サトシ 小学館 刊 AB版32頁 定価 1,300円 + 税

『日本の生きもの図鑑』

野外に出かけると、道端に咲く野草や森の樹木、野鳥の名前などが気になる。出会うたびにこの名前は、種類はなんだろうと思うのだが、だいたいは知らないことのほうが多い。
まして、昆虫になると正しい名前などは、ほとんど分からない。そんなとき、図鑑でもあればと思うのだが、何種類もの分厚いものをアウトドアに持ち出すのは大変だ。
この『日本の生きもの図鑑』は、街、里、山、水辺、海とフィールド別に「ふつうにみることができる」700種の野鳥、昆虫、樹木、花草、哺乳類、魚などがカラーイラストで解説され、分かりやすく一冊にまとめられている。また、漢字にはふりがながふられているので、子どもたちでも楽しめる図鑑である。全てに英文名が記されているのもうれしい。この一冊に紹介されている全ての名前がわかれば「生きものの博士」だそうだ。
監修 石戸 忠 今泉 忠明 講談社 刊 定価2,000円+税

『南極、行っちゃいました。〜極寒ほんわか日記』

第48次南極観測隊4ヶ月間のブログ「山経験、技術なし、体力・・・自信なし。スポーツ紙女性記者の121日」をまとめたもの。南極について書かれたものは数多くあるが、著者ならではの「ちょっとゆるめ」の視点が大変面白く、共感をよぶ。昭和基地での隊員の研究や作業、そして日常生活の様子が、このゆるめの目線でとらえられ、南極を身近に感じる。南極大陸に初上陸し、マーキングするシーンなどには笑いを誘われた。
また、巻末の取材機材や衣類などの装備品一覧は、『南極越冬記』(西堀栄三郎著)の時代と比べると隔世の感がある。それでもともかく南極は、究極の自然体験と認識させられるお薦めの一冊である。
小林 千穂 著 日刊スポーツ出版社 刊  定価 1,575円(税込み)

『冒険手帳』

まえがきに「現代の文明がピンチにおちっているのは、一見「頭」の勝利があらゆる利便を提供してくれているようにみえて、そのじつひとりひとりの人間が自分の頭を使うことをまったくしなくなってきているからだ。この本で「冒険」とよぶのは、じつは「人間らしさ」をとりもどすことなのである。」とある本書は、1972年に書かれたものを加筆・修正して文庫本として再出版されたものだ。この時代、アウトドアという言葉は今日的な意味を持っては、まだ一般的には使われていなかった。
副題の「火のおこし方から、イカダの組み方まで」の基本技術は、いまでも変っていない。今日では、様々なアウトドア用品や素材が開発され、アウトドアでの技術をカバーしてくれるかに見えるが、野外での生活技術の基本は不変だと、あらためて考えさせられる、冒険のための教書である。
谷口 尚規 著 光文社刊「知恵の森文庫」 定価 724円 + 税

『インスタントラーメン発明王 安藤百福かく語りき』

今年の1月にご逝去された、故安藤百福氏の語録である。安藤スポーツ・食文化振興財団の理事長として、自然体験活動の普及、振興という分野ではトム・ソーヤースクール企画コンテストをはじめ、数多くの支援活動を推進されてきた。もちろん、インスタントラーメンの発明者として、世界中でその名は知られている。この語録は、日清食品の役員、社員、OBから記憶に残る言葉を収集し編纂されたものであるが、自然体験活動の指導者にとっても、含蓄のある言葉が多数掲載されている。「ベンチャー精神とは、無から有を創造することである。」「子どものように、いつも『なぜ?』と疑問を発しなさい。」「いつも心の窓を開いておけ。するとほかの人には見えないものまで見えてくる。」・・・・・
自然体験活動の指導者、教育の関係者には、ぜひ手にとっていただきたい語録である。
安藤 百福 著 中央公論社 刊  定価 1,200円 + 税

『BE-PAL』 NO.313 2007年7月号
特集『子供たちに伝えたい 野外遊びの知恵とテク』

その昔、子供たちは父親から、あるいはガキ大将から自然や野外での遊びを教えてもらった。川遊び、虫取り、魚釣りなど、自然の中での多様な遊びと体験が、子供たちの生きる力を育んだ。自然体験活動が豊かに行われ、TVゲームなどがない時代であれば、声高に野外遊びなどと言う必要がないのだが・・・。
『野遊びパパなら頭に入れておいてください「データに見るニッポンの子供の遊び環境」』では、子供たちを取り巻く遊びの環境劣化に、愕然とする数値が紹介されている。
子供の自然体験の原点は親にある、と認識を新たにする一冊である。また、小特集の「ニッポンの低山は寄り道が楽しい!」は、身近な自然が楽しく発見できガイドとしてもお薦めだ。
小学館 刊 定価480円(税込み)

『昆虫の食草・食樹』
たとえば、「あこがれのチョウ・オオムラサキに会いたい!と思ったとき、あなたならどうしますか?」が本書のテーマだ。それには、憧れの、好きな昆虫が食べる植物を探しだせばいい。これが、食草・食樹を調べるということなのだそうだ。昆虫が好きな木はどこに生えて、どこにあって、いつ探せばいいかなど、観察者の目線に立って大変分かりやすく解説されたハンドブックである。本書は植物と昆虫の専門家が、それぞれの疑問をぶつけ合いながら書かれたもので、フィールドワークでは大いに役立つと思う。写真もきれいだ。
共著者のひとりである、林 将之氏は、この自然体験.comでもお馴染みのライターであり、氏のユニークな観察視点は本書でも随所にあらわれている。自然体験活動指導者や教育関係者にお薦めの一冊である。
森上 信夫・林 将之 著 文一総合出版 刊  定価1,200円 + 税

『素朴だけではない 田舎暮らしの馴染み方』
団塊の世代のおよそ3割が田舎暮らしをしたい、半数が週末は自然指向という統計がある。この688万人の新たなライフスタイルの模索がはじまっているが、自然とともにあるライフスタイルは、長い時間をかけて醸成されるものであって、そうやすやすと手に入れることは出来ない。「自給自足の自然暮らし」、「自然の中で悠々人生」、「楽しい田舎暮らし」などというコピーが氾濫しているが、現実は決してそんな生やさしいものではない。
本書は中山間地域の自然的人間のスケールを「時速4キロの文化」、グローバル化が進む現代の都市文明を「時速50キロの文化」と定義して、田舎暮らしの実像を社会学的な視点で分析している。
著者は30年数年前、東京から長野県のスキーリゾートに移り住み、人目には羨ましくも見える山荘を経営しながら、森の中の生活を続けている。しかし、閑散期には「食べていく」ために、ときには肉体労働者として、まるで馬車馬のように働かねばならない厳しい現実がある。さらに、田舎という地域社会で、その土地のコミュニティに受け入れられることがいかに難しいかを指摘しながらも、都市との「人・もの・情報」を得るネットワークを構築することがポイントだと、「田舎暮らし予備軍」にメッセージを送っている。
また、訪れてくる一部の自然保護団体の「林業体験活動」などを、遊園地のような余暇レジャーだと厳しく批評し、富に増加している「自然愛好家」にも、その本質について疑問符を投げかけている。「田舎ブーム」への警鐘であり、自然体験活動指導者にも少々耳の痛いお薦め一冊である。
扇田 孝之(おおぎだ たかゆき)著 現代書館 刊 定価 1,800円 + 税

『ヤマケイJOY 秋 これぞニッポンの秋山』
日本の紅葉は世界的に見ても特に美しいといわれる。とりわけ山稜部から山麓へと降りてくる紅葉の彩を見ると、この国の自然のすばらしさを実感する。本書は高く険しい山だけでなく、日帰りのハイキングコースや、ファミリーで歩ける紅葉の山々を「身近ないい山『トモダチ山』」として、やさしくガイドしている。また、「こどものやま」特集では、小さな子ども達を連れて山に出かけるためのコツや秘訣などが、子どもの目線や、家族の視点で解説しているところがユニークで参考になる。「山に対する子どもの好奇心を刺激する」などは、自然体験活動指導者が常に心がけておかなければならないキーワードだろう。
山と溪谷社 刊  定価990円(税込み)

『スズメの少子化、カラスのいじめ』
著者が日常生活の中で見る野鳥がいる風景を紹介しながら、専門家でもよくわかっていないスズメやカラスの生態と、彼らが存在する理由をわかりやすく解説している。スズメの寿命がわずか1年数ヶ月というのは驚きであり、一方で、都市化が進み空間が少なくなってきたなどの環境の変化が、スズメの少子化に繋がっているのではと警鐘を鳴らしている。また、カラスの賢さや学習能力は良く知られているところだが、「カラスを見分け、聞き分ける」ことで四季を知ったり、彼らと遊ぶことも出来ると「野鳥のプロ」ならではの視点が楽しい。子ども達にスズメやカラスの生態を面白く伝えられる読み物でもある。
そして、見たい鳥や出会いたい場面は限りがなく、出費もなく、老後は不安などころか楽しみでしかたがない、という著者のライフスタイルを、うらやましいと思う読者も多いのではないだろうか。
著者 安西 英明 ソフトバンク新書 刊 定価700円+消費税

『ヤマケイJOY 夏2006 北アルプスの歩き方大特集』
「日本アルプス」と命名したのは、英国人の科学者ガラウンドだったが、現在でも外国人には、日本にはアルプスがあるじゃないかといわれる。韓国や台湾など東アジアの国々や米国、ヨーロッパなどからも登山者が増えているそうだ。登山は自然体験活動の基本であると思う。国土の7割近くが山岳丘陵地帯なので、山は必然的に自然体験活動のフィールドであり、登山は必須のプログラムとなる。夏のアルプス、特に北アルプスは登山者の間で人気があった。昭和30年〜40年代は多くの若者たちで登山道は大渋滞ができ、学校集団登山も盛んだった。だが昨今では、北アルプスも中高年者の独占された感がある。
この特集では計画の立て方や、装備、歩き方などのほか、家族や初心者でも楽しめる北アルプスの登山コースも紹介されている。3000m級の山々は、地上に比べて気温も10数度は低く、夏でも快適だ。1泊2日のコースや、立山室堂のお花畑散歩道なども紹介されていている。今年の夏休み、家族で北アルプス登山にチャレンジしてみてはいかがだろう。
山と溪谷社刊 定価1,100円(税込み)

『フクロウの大研究』(小学中級以上)
日本人にとって、フクロウは明治時代以前は、不吉な鳥とされていた。
しかし、現在では「福」に通じる鳥として、絵画や置物、アクセサリーにもなっている。また、学問や芸術のシンボルでもあり、知の象徴である。
世界で146種と数えられるフクロウの種類や生態、さらには人間の生活とのかかわりなどを、丹念な取材のもとに大変わかりやすく解説している。「羽音を立てないで飛ぶフクロウ」の飛行術が、世界でもっとも優れた列車といわれる「500系新幹線」の設計に生かせれているなど、興味深い逸話も多く、大人でもフクロウ世界に引き込まれる好著である。
国松 俊英 文・関口 シュン 絵 PHP研究所 刊 定価1,250円+税

『子どもの安全ハンドブック』
子ども達の外遊び声は、いつの間にか途絶えてしまった。連れ去り事件や、誘拐事件、そして殺人事件などが多発し、子ども達を取り巻く環境はきわめて危険な状態になった。公園などでの一人遊びはもはや論外で、登下校でさえ保護者が同伴しないと危なくなった。この国はいつからこんな状態になったのか・・・。子どもの安全管理を真剣に考えなければならなくなった社会の病巣は根深い。
本書は、子ども達が危険に直面したり、あるいは回避するためのノウハウが分かりやすく解説されている。「ひとりで誰もいない家に帰るとき」「知らない人に声をかけられたら」「連れられそうになったら」など、目次を見るだけでリアルな現実が想起されるのが怖い。
もちろん犯罪だけでなく、生活の中で非行の芽を見つけたり、学校生活でのいじめや、教師のわいせつ行為への対処法など、シーン毎に細かく解説されている。さら日常生活での事故や事件に遭遇した場合にどう対応したらいいかなど、子どもの安全対策が網羅されている。このような図書が出版される社会は悲しいが、現実を直視し、いかに子ども達を守っていくかは、きわめて重要な私たちのミッションである。複雑な心情ではあるが、推薦させていただく一冊である。
森 健・岩崎大輔・子川 智 著 発行 ㈱山と溪谷社 刊 定価980円+消費税

『目で見る日本登山史』(別冊『日本登山史年表』) 山と溪谷社 編
日本のアウトドアアクティビティのフィールドは、基本的に山岳地帯だ。国土の68%が山岳丘陵地という地勢的特徴から、「山」が必然的にアウトドアズの舞台である。そんなこともあって、日本の登山史を抜きに現在の登山はもちろん、野外活動や自然体験活動も語れないように思う。本書は江戸後期の宗教登山から現代の中高年の山登り、そして山の環境問題までを、数多くの写真を中心に、大変分かりやすく構成している歴史書である。また、10年近くの歳月をかけて制作された大作で、資料として手元においておきたい一冊として推薦したい。別冊の『日本登山史年表』は、本邦初の登山記録のデータベースとしても大変貴重である。
発行 ㈱山と溪谷社 定価7,800円+税(別冊 日本登山史年表セット)

17年度版『農山村漁村体験の宿』 (財)都市農山漁村交流活性化機構 編
田舎でゆっくりした時を過ごし、様々な農業や林業、あるいは漁業などの体験をする旅の形が、グリーンツーリズムである。子どもたちの自然体験活動だけでなく、07年問題などといわれる団塊の世代の、定年後のライフスタイルのひとつとして注目されている。本書は、田植え・稲刈り、キノコ狩り、山菜採り、ジャムづくり、ガラス工芸のほか、様々なアウトドアアクティビティができる、体験型宿泊施設のガイドブックである。民宿などを中心に、全国およそ450の施設のコンセプトと、体験可能なプログラムを紹介している。宿泊費は1泊2食付で、ほぼ7,000〜8,000円に設定されていてリーズナブルだ。家族の体験旅行にもおすすめである。
発行所 ㈱山と溪谷社 定価1,400円+税

『あなただからできる 自然災害ボランティアABC』(社)日本ネイチャーゲーム協会 編
阪神淡路大震災で、「ボランティア」という言葉が、その意味を理解されて社会に定着した。地震や台風などの被害がでると「ボランティ募集」などいうのにも、何の違和感を持たなくなった。しかし、ボランティ活動をしたいと思っても、何を、どのようにしていいのかまだまだ分からないことが多い。本書は、自然体験活動の普及指導団体が著しているだけに、視点が大変ユニークだ。冒頭の「子ども達の遊び相手」になろうでは、とかく子どもたちに目が向かない災害地の状況を指摘し、ストレスが発散できるような遊びの指導をすすめている。また、災害発生のメカニズムの説明はもちろん、災害現場に向かうボランティアの装備やルールなども、実際の体験にもとづいて分かりやすく書かれている。子どもたちへの心理ケアなど、自然体験活動の指導者には、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。
発行所 ㈱ネイチャーゲーム研究所 定価1,575円(税込み)

『365日信州野遊び宣言』 なべくら高原・森の家 編
なべくら高原は長野県飯山市の北端にある。そこは国内でも名だたる豪雪地帯で、周辺部には農家が点在するだけで、名の知れた名所旧跡があるわけでなく、ましてスキー場やレジャー施設などが整った観光地ではない。1997年、そんな過疎の地域にグリーンツーリズムのさきがけとして「なべくら高原・森の家」が建てられた。全国からインストラクターを募り、地元の住民とともに農業体験、自然体験、アウトドアアクティビティまで様々なプログラムが創作された。過疎の地域にありながら、毎日、何がしかのプログラムが行われ、多くの参加者があるのは驚きである。いまや「新感覚の田舎のリゾート」をうたい文句に、全国的にも注目される存在になった。本書は、「なべくら高原・森の家」の遊びの教本であり、指導マニュアルでもある。けっして無理をせず自然と付き合いながら、土地の風土風習にあったプログラムづくりは、読み物としても面白い。
なべくら高原・森の家 http://www.iiyama-catv.ne.jp/~morinoie/
信濃毎日新聞社 刊 定価 1,500円+消費税

『BE-PAL』7月号 特集 夏休みの遊び道具
アウトドア用具つまり遊び道具は、カタログを見ているだけでも楽しい。機能優先につくられた遊び道具(アウトドアギア)には、フィールドを彷彿させるコンテンツや物語が凝縮されているように思う。虫取り網を手に入れただけで、虫の専門家になったような気分になることもある。この特集では、磯遊び道具、雑魚採集道具、鉱物発見道具など、それぞれ分野別に紹介されている。遊び道具から夏休みの自然体験を考えてみる、そんなアプローチがあるのかもしれない。他に、「川ガキ」が棲む清流ベスト10、正しい「川ガキ」の育て方、など興味深い特集が組まれている。
小学館刊 定価450円(税込み)

『Walk 関西版 歩く』
歩くことは運動の基本である。健康のためのウォーキングが静かなブームだ。しかし、ウォーキングは楽しくいなければならない。GWは家族で歩くっていうのは、いかがだろう。『Walk 関西版 歩く』は、関西圏の水辺を歩く特集で、醒井、武庫川、赤目四十八滝、滝谷四十八滝、布引の滝など、自然豊かなウォーキングコースが紹介されている。また、大河ドラマ「義経」の舞台となっている鞍馬、東山、福原、屋島などがウォーキングコースとしてガイドされているので、歴史ファンには便利な特集である。単なる観光からウォーキングに行動を少し変えるだけで、景観は随分と違って見えてくるものだ。
山と溪谷社 刊 定価 780円(税込み)

『ハトの大研究』〜古代から人とともに生きてきた鳥〜
公園や街かどでなにげなく見かけるハト。平和の象徴でもあるハト。糞害が社会問題になるハト。しかし、ハトの生態や人間とのかかわりについて、私たちはどれほど知っているのだろうか。国内には7種のハトが生息しそれぞれ固有の特徴がある。ナトリウムを補給するために毎日数十キロの距離を飛んで、海辺まで海水を飲みに来るアオバトの生態などは、公園で見るハトのイメージとは大きく異なる。
また、主に軍事通信の手段として利用されてきた、伝書鳩の歴史と役割についての記述は、通信とは何かをあらためて考えさせられる。伝書鳩はレースハトとして現在に受け継がれているが、帰巣率が激減しているという。ハトのもつ独自の帰巣本能が、携帯電話などの無線基地局によって影響を受け、方向感覚が狂ってしまったのではないかという著者の推察は、決して私たち人間にとっても無関係ではない。そして、日常の目線でハトを丹念に観察する著者の姿勢から、子どもたちはフィールドワークの必要性を学んでくれるだろう。
国松 俊英 著 PHP研究所刊 小学中級以上 定価1,250円(税別)

『ソトコト』2005年4月号 特集「保存版ソトコト的元気NPO大百科」
自然体験や野外活動の普及指導のために、非特定営利法人いわゆるNPO法人を設立する団体が増えている。NPO法人を設立する最大のメリットは、何といっても法人格を取得することによって社会的に認知され、資金面でもさまざまな優遇措置が受けられることだろう。そのため自然体験活動に限らず、多種多様なNPOが設立されている。本号は元気のでるNPO特集であり、環境保護、自然学校、福祉などの分野別に主なNPOが紹介されている。また、「今どきのいい男はみな、NPOに所属中!」などというコーナーもあって、多彩なNPOの活動が興味深く掲載されている。NPOで働いてみようと考えている人や、NPO法人の設立を計画中の方々には、大変参考になる特集である。
発行 木楽舎 定価800円

『ホールアース自然学校の今 年報』
1982年にはじまったホールアース自然学校は、日本の自然学校の歴史でもある。
同校は、農作業を基本に、富士山の山麓で『生き方、暮らし方』を自然体験活動の理念にしてきた。その後、地域づくりや人材の育成などを行いながら、今日ではエコツーリズムや国際協力のリーディング校として、全国2000校はあるといわれる自然学校の旗手となっている。
同校では年間6万人以上の生徒が野外活動を体験するが、フィールドは富士山麓だけでなく国内外にひろがると同時に、国際協力活動としてバングラデシュなどにも積極的に支援を行っている。本年報は単なる活動報告書ではなく、自然学校や学校などの教育現場でも活用できる、同校の理念とノウハウが凝縮された教本でもある。
ホールアース自然学校編 非売品
お問い合わせ E-mail info@wens.gr.jp URL:http://wens.gr.jp

『野外毒本』被害実例から知る日本の危険生物
フィールドを野山と海に分け、“危険生物”について、被害の起こりやすい季節と時間帯、予防策、被害状況、そして、その対処方法などを、具体的な実例をあげて解説している。
ヘビ類、ハチ類、大型動物など野山の危険生物、食べてはいけない植物や花粉症や、かぶれの被害を与える野山の植物、海の危険な生物などが詳しく紹介され、“危険生物”の多さに驚かされる。しかしながら著者は、“危険生物”というのは、人間の一方的な定義であり、彼らには生きるべき存在意義があり、そこに人間が立ち入るから問題が起こると指摘し、大切なのは謙虚な気持ちで自然に入ること、と述べている。
自然体験活動や青少年活動の指導者、教師、アウトドアズマン、登山者、釣り人などには必読の、すぐに役に立つ『野外毒本』である。
羽根田 治 著 山と溪谷社 刊 定価 3,360円(税込み)

3Dスカイトレック 白馬・黒部を飛ぶ』
CD-ROMで楽しむ、動く3D立体画像ガイド。『白馬・黒部』などをエリアにした、北アルプス北部山域版である。好評の「槍・穂高・上高地」、「釼・立山・鹿島槍」に次ぐ第3弾。
この『白馬・黒部』版で北アルプスのほぼ全域が、鳥瞰できることになった。これらの3Dは、航空写真と標高データをもとに、3次元の立体画像として、パソコンでリアルの再現できるということで、大変注目されている。どの角度からでも、あるいは、任意の標高から風景をながめることができ、登山前のルート確認や、ガイドブックとしても利用できるのはもちろんだが、なんと言っても地形がリアルに理解できるのがいい。コンピュータグラフィックスではなく、実写に基づいた空撮映像をプログラム化しているので、かなりリアルだ。地理や地学の教材としても、活用できる。パソコン操作が苦手なお父さんでも、簡単に扱うことができ、パソコンの学習にもなる、お奨めのソフトである。
山と溪谷社 刊 定価 3,360円(税込み)

『まさか!のときの生き残り塾』
空き缶と新聞紙でご飯を炊く
30秒で焚き火をおこす
泥水をやかんで蒸留する
太陽熱で卵をゆでる
レジ袋でジャガイモを育てる・・・
身近な物を活用した様々な衣食住術や、救助方法が紹介されている。あえて写真を使わす、シンプルなイラストで解説されているので大変わかりやすい。災害時などのサバイバル技術として書かれているが、野外活動だけでなく、日常生活さらに、省エネ・リサイクルなど、環境保護意識の向上に役立つだろう。(大)
進士 徹 著 家の光協会 刊 定価1,365円(税込み)

『3Dスカイトレック 釼・立山・鹿島槍を飛ぶ』北アルプス中部編
CD-ROMで楽しむ、動く3D立体画像ガイドの第2弾。『釼・立山・鹿島槍』などをエリアにした、北アルプス中部山域版である。かつて登ったあの尾根、渓谷、そしてピーク。あるいは、憧れの岩峰、登ってみたい山々を、パソコン上で自由に鳥瞰することができる。CGではなく、実写に基づいた空撮映像をプログラム化しているので、かなりリアルである。3000mの峰々を、まるで遊覧飛行のように楽しめるほか、登山ルートや山名などの情報も画面上に表示されているので、ガイドブックとして利用することができる。学校での地理の教材や、パソコンの学習にも活用できるなど、用途は広い。
なお、6月下旬には白馬・黒部エリアの『北アルプス北部編』が発売される予定。
山と溪谷社 刊 定価 3,360円(税込み)

『自然の仕事に就こう。』
自然の中で働いてみたい。自然とかかわる仕事がしたい。こんな人たちが多くなってきた。また、リタイア後は、田舎で暮らしたいという人も、これから数多く出てきそうだ。
この本は副題に『大いなる自然とともに働き、新たな人生を見つける』とあるように、自然の仕事に就くための、講座ガイドブックである。自然といっても都会に近いところか、全くの山の中か、海の中か。資格は必要か、などが『森と山』『海』『大地』『空』『動物』『環境』『食べ物』別に、73職種がわかりやすく紹介されている。自分にあった仕事に就くための講座やスクール、あるいは体験教室なども、地域別に記述されているほか、仕事の内容が具体的に、収入や、どうすればその仕事に就くことができるか、なども紹介されている。
巻末には仕事別、エリア別の求人情報もあり、自然の仕事の広がりが、よく理解できる。
山と溪谷社 刊 定価980円(税込み)

ヤマケイJOY増刊号『2004山のウェアの選び方』
山登りやアウトドアのウェアは、ハイテク素材がいまや常識である。汗を吸収する、通気性がいい、速乾性に優れている、・・・・などというのは、当たり前になった。汗で発熱するという、不思議なアンダーウェアは、この冬、ちょっとしたブームにもなった。
特に山登りでは、ヒヤーッとする不快な思いに悩まされてきたが、ひどい汗をかいても、さらーっとした肌触りの、アンダーウェアも売り出されている。
アンダーウェアだけでなく、レインウェアも高機能だ。一昔前は、雨より汗で濡れることが多かった。また、ハイテクレインウェアは、機能が優れていたが、高価なのが難点だった。しかし、同等以上の機能をもちながら、1万円そこそこのレインウェアが登場するなど、進化が著しい。
しかし、あまりにもあまりにも種類やブランドが多く、どれを選べばいいのかわからないのも悩ましい。この『2004山のウェアの選び方』は、そんな快適・快感ウェアの選び方が、詳しく紹介されている。また、メンテナンスや洗濯の方法なども記されているので、大変参考になる。
山と溪谷社 刊  定価990円(税込み)

『葉で見分ける樹木』
この自然体験ドットコムの連載でも大変好評だった、林 将之さんの待望のフィールドガイドが出版された。
本書は葉で木の名前を調べる、ポケットサイズの検索図鑑である。身近な公園や森で見られる350種が、わかりやすく紹介されている。とかく難しい専門用語の漢字にも、ルビがふってあるのがうれしい。
『従来の樹木図鑑では、初心者が木の名前を調べることはできなかった・・・私はこう言い切っても間違いではないと思っています。』と著者が述べているとおり、樹木の名前を覚えたり、見分けるのは難しい。素人は、幹や枝を見て名前を当てようとするので、なおさら見分けがつかなくなり、ついつい諦めてしまうのだ。「葉で木の名がわかる」というのは、もっとも手頃な自然へのアプローチのひとつだろう。
詳しくは、http://www.ne.jp/asahi/blue/woods/book.html
林 将之 著小学館 刊  定価 1,838円(税込み)

『エベレストから百名山へ』〜ヒマラヤから教わったこと〜
日本を代表する登山家、重廣恒夫氏の登山記録である。サラリーマンである氏は、入社したその年のクリスマス会で、社長に将来の夢を聞かれ「ヒマラヤへ行くこと」とこたえた。社長の「がんばりなさい」というひとことで、「これはしめた」と思ったそうだ。そこから、エベレストやK2をはじめ、数多くのヒマラヤ登山がはじまった。氏の実践したヒマラヤの登山戦術や準備の過程が、それぞれの時代を映しだしながら綴られている。
123日で登りきった、日本百名山の一筆書き連続登山には、なぜ、ひとは山に登るかという情景が見えてくる。
重廣 恒夫 著 光文社新書 刊  定価820円 + 税

『姉崎一馬の新自然教室』
山形県の朝日連峰山麓で、植物写真家姉崎一馬氏が主宰する、「わらだやしき自然教室」を舞台にした、ユニークな自然教室のテキストである。ブナ林や田畑で、さまざまな活動に参加する子ども達の姿が、生き生きと綴られていて、読み物としても面白い。
いまどきの子どもたちの自己紹介、ホームシックと特効薬、珍メニュー「バナナ・キムチ」など、指導者や若いお父さんやお母さんにも、ぜひ読んでいただきたい一冊である。
『「自然教室」に参加する子どもを見ていると、だんだん野性的な子どもが少なくなってきたことに気づく・・・・中略・・・・それでも「わらだやしき自然教室」には、この絶滅危惧種の元気の塊のような子どもが出現する。』とある。いまや自然教室は、絶滅危惧種再生活動なのかもしれない。
あねざきかずま 山と溪谷社 刊 定価 1,600円 + 税

日本スキー教程『スキーへの誘い』 全日本スキー連盟 編集
「スキーはすべての人のために」をコンセプトにした、スキー教本。小学生の女の子、ワールドカップレーサー、スキー教師、100歳を間近にひかえた、三浦敬三さん、などの滑りを紹介しながら、スキーはだれでも、年齢や性別に関係なく、技術に関係なく、楽しめるスポーツだ、とといている。
子ども達や、若者達のスキー離れがすすむ中で、スキーの技術だけではなく、スキーがいかに楽しいか、どう楽しめばいいのかがわかりやすく記述されている。難しい漢字にはルビもふられているので、子ども達も読みやすい。
スキーをしたことがない人に、スキーをしばらくしていない人にお届けする、『スキーへの招待状』と帯にある。女優吉永小百合さんのエッセイや、スキーの切手、オリンピックのポスターなどの項目もあり、スキーの世界を親しみやすく紹介している。
スキージャーナル 刊 定価1,800円 + 税

BE-PAL 10月号 特集『地震に備える』
9月26日早朝、北海道で大きな地震が発生した。震度6以上の地震だった。日本列島は活断層の上にあることを、あらためて認識させられる。アウトドア用品が地震対策に役に立つことは、阪神淡路大地震で理解された。しかし、時がたつと、ついつい忘れがちである。必読特集として組まれた、今回の記事は、まさに時宜をえた、というのだろう。
最近のアウトドア用品は、高品質である。コンパクト、軽量、高機能がコンセプトであり、新素材が多用されている。テーマは「家族と自分と隣人を守るためにアウトドアの知識と道具を生かす!」とある。アウトドアズと自然体験は、サバイバルと表裏一体である。いまこそ、備えのために読んでみたい特集である。
小学館 刊 定価430円(本体410円)

『無酸素登頂8000m14座への挑戦』〜スーパークライマー小西浩文の愛と墓標〜
この自然体験.COMで連載中の登山家小西浩文さんの、無酸素によるヒマラヤ8,000m峰全14座完全登頂をめざすノンフィクション作品。なぜ、小西さんは無酸素にこだわり、14座完全登頂を目指すのか。「神に選ばれた者」にのみ許された行為なのか。最強の登山家の「生と死の」極限世界が、ノンフィクション作家によって、鮮やかに表現されている。
自然体験活動の指導者には、ぜひ読んでいただきたい、一冊である。
長尾 三郎 著  講談社 刊  定価1,800円+税

3Dスカイトレック『槍・穂高・上高地を飛ぶ』
まったく新しいガイドブックが出た。航空写真の実写映像を、3次元の立体映像で山々を再現したCD-ROM。まるで鳥のように、北アルプスの槍ヶ岳や穂高岳など、を自由自在に高度や角度、さらにはスピードを変えて飛ぶことができる。登ったコースを空からトレースしたり、登りたいルートを確認するのにも役に立つ。もちろん地形や地勢などを立体的に学習することも可能で、使う人や目的によって用途は広がる。パソコンとこのCD-ROMで、ダイナミックな映像がリアルに再現でき、これまでの地形図にはない楽しさを味合うことができる。
なお、http://www.yamakei.co.jp/dsn/index.htmから体験版のダウンロードが可能となっている。
山と溪谷社 刊 定価3,200円+税

ドキュメント気象遭難
アウトドア、特に山で起こる大きな事故の大半は、急激な気象の変化によるものだ。書名のとおりこれは、『気象遭難』といわれている。天候の急激な変化が、事故の原因だとされる7例の山岳遭難を詳細に検証しながら、その対策と危機管理を述べている。これからの季節は、とくに落雷の危険が大きい。検証事例は山岳遭難が中心となっているが、国内の自然体験フィールドの大半が山岳地だけに、リスクをいかに回避するか、指導者にはぜひ読んでいただきたいドキュメントである。「『これぐらいの天気なら』と判断して行動を続けていると、必ずどこかで一線を越えてしまうとことがある」と、警鐘を鳴らしている。
羽根田 治 著 山と溪谷社 刊  定価1600円 + 税

『ソトコト 7月号 通巻49号』
 〜夏休み、エコ体験ツアー100選〜

スローライフ&エコ・トラベル宣言として、「海流の中の日本再発見の旅100特集」が組まれている。カテゴリー別に、グリーンツーリズムとして「第1次産業を体験する旅」、ネイチャーツーリズムの「自然の中にある真実を探す旅」、そしてアドベンチャーツーリズムの「冒険・探検の旅」が、紹介されている。夏休みの計画の参考になる旅やツアーが、思いのほか沢山ある。
木楽舎 刊  定価600円(税込み)

『自然の暮らしがわかる本』
自然志向で「田舎暮らし」やスローライフがブームだ。そんな中で。自然が豊な田舎で、どう暮らしていけばいいかというマニュアル本である。『田舎暮らしとは、田舎や山の中ですむということだけでなく、自然のサイクルに沿って暮らすことである』という著者の、『自給自足の知恵と暮らし方』が体験的に詳しく記述されている。
農家の補修、井戸水のこと、トイレと排水の問題など、生活周りのことがわかりやすく解説されている。『農と自給の楽しみ』では、肥料、堆肥のことはもちろん、鶏やミツバチの飼い方も記述され、田舎での暮らし方の一端が理解できる。『収穫と食品加工』の章には、手作りパンや、蕎麦打ちの方法なども紹介されている。そして、『里山での遊び方』は、自然体験活動に、すぐにでも利用できるテキストにもなる。
新田 穂高・城ノ内 まつ子 共著 山と溪谷社 刊  定価1600円 + 税

『子どもたちには危険がいっぱい』
学校教育の現場では『生きる力』をどう育むかが課題となり、そのために、自然体験活動が推奨されている。しかし、自然体験にはつねに危険がともなう。危険だから行なわないのではなく、その危険をいかに回避し、対処するかが子どもたちにとって必要な学習だと著者は指摘している。さらに『生きる力』の育成は学校だけでなく、家庭も含めた社会全体で取り組むことが重要であり、事故を怖がって避けるのではなく、野外に潜む危険をいかに冷静に分析し、どう向き合うかという視点が必要だとしている。具体的な学校内の事故や、野外における様々な事故、山岳遭難などの事例を検証しながら「計画と発想を問い直し」ている。
村越 真 著 山と溪谷社 刊 261P 定価1,600円 + 税

『星野道夫物語』
1996年8月、カムチャッカ半島でヒグマに襲われ命を絶った、伝説の動物写真家「星野道夫」の物語である。大学時代は探検部に入り、北海道や琵琶湖で熱気球を飛ばすなど、好奇心に満ち溢れた星野は、アラスカで大自然と野生動物に魅せられる。動物写真家田中光常氏に師事し、写真の技術だけでなく野生生物とどう向き合うのか、動物写真をどう考えるのかを学ぶ。その後、アラスカ大学で野生動物管理学を専攻し、アラスカの大地に根をおろし、エネルギッシュに夢を追い続けた、若き日の「星野道夫」のノンフィクション。著者は星野の冒険心と行動力について、こう書いている。『多くの人々は、こうした探検をやってみたいという気持ちをいだいたことがあるに違いない。けれどだれもが思うだけで実現できずに大人になって、都会の生活に流されてしまっている。星野は私たちのできなかった夢を実現して、アラスカの大自然の旅を続けていた。』と。
国松 俊英(くにまつ としひで)著 ポプラ社 刊  定価 1400円 + 税

『どんぐり校長の自然塾』
この自然体験.COMで、「私の実践している自然体験活動」を連載中の渋谷区立中幡小学校校長杉原先生の書き下ろしエッセイ。いまや名物校長となった著者の教育と自然体験学習へのフィロソフィーが、小学校の教育現場から厳しく、時にはやさしく語りかけるように書かれている。
ドングリを校長室で発芽させ、その苗を伊那谷のアルプス山麓に植えて森を作ろうという、子どもたちが地球規模で参加できるスケールの大きな環境教育を、様々な障害を乗り越えて実践した著者の熱い思いが語られている。
また、現在の教育界がかかえる問題を提起し、「公立学校が危ない」と警鐘を鳴らしながら「校長」や「教師」のあり方について、自伝的メッセージを送っている。
教師や指導者にはぜひ読んでいただきたい一冊である。
杉原 五雄 著山と溪谷社 刊 定価 1400円 + 税

『海の楽校』『川の楽校』『森の楽校』
「自然と遊ぼう」をテーマに、野外で大人から子どもまでが体験できるヒントが満載された、フィード別マニュアル。環境学習や自然体験学習のためにも、あるいは大人が子どもと遊びためのガイドブックとしても推薦したい。

『海の楽校』は、海と友だちになろうがコンセプト。海の不思議を知るための子どもと大人のための入門書。泳ぐだけが海遊びではなく、海と話をしようからはじまる。海と友だちになれば。海が好きになる。海が好きになれば、海のことがわかってくる。生物のこと、植物のこと、遊び方、大人たちへのアドバイスまで、写真入でやさしく解説している。ビーチでビンゴ、潮だまりの遊び、岩場の探検など楽しそうなプログラムも紹介されている。
不思議な海のことが見えてくる一冊。
長谷川 孝一 著  山と溪谷社 刊 定価 1,600円 + 税

『川の楽校』は「川は危なくないの」「川で泳げるの」という疑問からはじまっている。
立松和平さんのいう、絶滅危惧種「カワガキ」について、遊ぶ親が「川ガキ」を育てると書いている。『川の楽校』も、川と友だちになろうがコンセプトだ。川に行けば面白いことがいっぱいある。面白いことが発見できれば、川はすぐに親しい友だちになる。そのためには、川で安全に遊ぶためのパスポートが必要だと、著者は述べている。本書はまさに川遊びのパスポートだ。川の生き物、釣の方法、遊び方、料理など川で学ぶ方法が楽しく紹介されていて、大人が読んでも大変参考になる。
皆川 哲 著  山と溪谷社 刊 定価 1,600円 + 税

『森の楽校』は森の不思議を知るための入門書。「森ってどんなところ」という素朴な疑問にはじまり「森にはどんな木があるの」から「アニマルトウォッチング」まで、『森と友だちになろう』という視点で、大変わかりやすく解説されている。森で遊び、学ぶためのノウハウと、指導者や大人たちへのアドバイスも記述されている。知っているようで、実は知らないことが多いのが森のこと。この『森の楽校』一冊で、自宅近くの森や鎮守の森でも、新しい発見ができることだろう。「森での冒険」などは、ファミリーキャンプでも取り入れてみたいプログラムだ。
小林 毅 著  山と溪谷社 刊 定価 1,600円 + 税

「自然の実りがわかる本」
いま、都会では家庭菜園がさかんだ。庭や市民農園で、農薬を極力使わず、旬の野菜などを食べようとする人たちが増えている。子どもたちにとっては、野菜や果物を栽培し収穫し、そして食べるプロセスは、最良の自然体験である。サブタイトルは、完全有機農法で育てる菜園作づくりの12ヶ月となっており、「菜園をデザインする」からはじまり、3月から月ごとにどんな野菜を、どのように植えればいいか、詳しく記述されている。
また、栽培の難易度は☆印で示され、適期、適量、連作の可否、前作の種類なども記載されているので、入門者には大変わかりやすい。さらに、料理の方法や食べ方などもわかりやすく書かれている。4月は「桜の花の塩漬けのつくりかた」だ。ちなみに、家庭菜園でも20種類以上の野菜がとれるそうだ。

新田 穂高、城ノ内 まつ子、中村 顕冶 共著 山と溪谷社 刊 定価1600円+税

「人気のB&Bの宿300」
海外に出かけると、B&Bの宿が多い。B&Bとはベッドと朝食つきの宿のことで、夕食はついていない。したがって、比較的リーズナブルに宿泊することができる。これだと、夕食は外で好きなところでとったり、コンビニなどで買うことによって、少ない予算でも旅ができる。宿に泊まればお仕着せの料理を、選択の余地なく、食べなければならなかったし、時間にも縛られがちだった。これまで国内のB&Bの宿は、非常に少なかった。しかし、旅のニーズの多様化で、B&Bの宿にも人気が出てきた。そこで登場したのが、『B&Bの宿300』だ。300ではまだまだ少ないが、5,000円台からの宿が結構あって、家族連れの自然体験や旅行にも利用できそうだ。
山と溪谷社 刊 定価1,500円 +税

「実践・自然学校運営マニュアル」-国際自然大学校20年の極意
国内屈指の自然学校として知られる国際自然大学校が、創立20周年をむかえ、その経験を集大成して製作した「自然学校運営マニュアル」。
組織の運営方法はもちろん、事業計画のノウハウ、安全管理、収支計算書、請求書の書き方、業務委託書の見本、スタッフの出勤簿など、自然学校経営のすべてが仔細に記述されている。また、NPO法人の同学校の定款なども附則されているので、資料としても活用できる。
佐藤 初雄、桜井 義維英 共著 山と溪谷社 刊 \1,400+税

CONE HAND BOOK『自然体験活動指導者手帳』
自然体験活動推進協議会(CONE)編集した、指導者のための教本。自然体験活動とは何か、その理念などなどから、歴史、安全対策や保険の加入の仕方、指導法まで分かりやすく解説されている。自然体験指導者や、これから指導を目指す人には必携のハンドブックだ。すぐに役に立つ、待望の指導者教程。
山と溪谷社刊 定価667円+消費税

「グリーン・トラベラー」Vol.1
 ネイチャーライターの堀内一秀さんが中心になって創刊した、エコツーリズムの専門誌。21世紀のキーワードは「環境」であり、旅の環境を考えたとき、名所旧跡めぐりでもない、リゾートでもない、もっと主体的に問われる旅の時間がある。そんな旅の情報を届けたいというの、が創刊の趣旨。創刊号は世界最初の国立公園であるイエローストーンが、バックパックキングによるエコツアー視点で、特集されている。また、全国体験民宿のリストも掲載されていて、データとして貴重である。
(有)アドヴェント発行・編集
〒222-0023 横浜市港北区仲手原1-18-46
申し込み先 http://www.eco-travel.ne.jp

「自然体験活動指導者評価ハンドブック」〜知を知って、自ら育てる〜
自然体験活動が活発になるにつれ、指導者の質と指導の内容をどう評価するかが大きな課題となってくる。そのために制作されたのが本書。このハンドブックの目的は、指導者に求められる成果や役割・技能を明らかにし、指導者の育成が効果的に行われることだ。
自然学校で実際に行われている事例を紹介しながら、指導者の育成プログラム、評価の方法やそこで働くスタッフの給与査定の評価表なども例示されている。自然学校、自治体、学校の先生にも、具体的にすぐに役に立つハンドブックだ。
なお、本書は市販されていないので、下記まで申し込むこと。

自然体験活動推進協議会 定価500円(税・送料別)
東京都新宿区新宿5-7-8-6F
TEL.03-5363-2501 FAX.03-5363-2502
E-MAIL:info@cone.ne.jp URL:http://www.cone.ne.jp

「なんで山登るねん」、続「なんで山登るねん」、続々「なんで山登るねん」
著者 高田 直樹 
河出書房 刊 定価 正編 ¥750(税別) 続、続々編 各 ¥800(税別)

「人はなぜ山に登るか」かという山屋種族の悶々とした疑問に、けっして大上段に論説を試みたものではない。京都語で自伝的登山論を、はんなりと記述しているが、そこには人を愛し、後輩達や教え子を「山」というフィールドで指導してきた、教育者としての著者の顔がある。旺盛な好奇心で、山登りや人と自然の関係を多層的にとらえた本書は、自然体験活動の原典として読まれても不思議ではない。「自然体験学習」とは何かという本質論が随所に述べられていて、例えば『山は自由の感覚の学校』であり、『山登りは創造的活動なんや』は、まさにいま総合学習の中で、子どもたちに求められている教育そのものである。
ヒマラヤやチベットへの登山隊を幾度となく指揮し、BMW1100Rのバイクを乗りまわし、オーディオに凝り、高校の教師を辞めたあとは、気がつけばパソコンの権威になっていた。そして、還暦を経てもG4を携え、世界を駆け巡る著者の「なんで山登るねん」は、際限のない好奇心とともにいまも続いている。本書は山と溪谷社から出版され、ベストセラーとなった同名本シリーズの文庫版。


『森の中の小さな旅 日本の森 ガイド50選』
 山と溪谷社 刊 定価1,500円(税別)

 日本の国土のおよそ70%は山岳地帯である。そして、その山麓や中腹には、開発され森が失われようとしている中で、少なくなったとはいえ巨樹巨木の森が残されている。本書は「こころ安らぐいやしの場」として、NHK-BS2で放映された『日本の森』のすべてをまとめたもの。知っているようで、案外知らなかった身近な森へのガイドも記述されている。
なお、同名のビデオも発売されている。全10巻・各巻定価3,000円(税別)

『子供に伝える野外生活術』
 広瀬 敏通 著 地球丸 刊  \1,000(税別)

 野外活動やアウトドアに関する技術書は数多く出版されているが、本書は年間6万人もの子どもたちや学生に、毎日のように「野外活動」を指導している「現場の実践的経験」に裏打ちされた、野外生活術のテキストである。日本の自然学校のパイオニアでもある著者の、自然に対する哲学や思想といったものが、遊び方から技術、道具の選び方にまで貫かれていて明快である。
 「自然と遊ぶ」「動物とつきあう」「食べるとは」・・・こんな流れで、目次が構成され、書名の「野外生活技術」は、そのあとで登場する。つまり自然と遊ぶこと、接触することが重要であり、技術はその先である。とかく、道具や技術に走りがちなこの国の野外活動やアウトドアズとはスタンスが違う。それは著者が「自然とのつきあいかたが、どうしてこんなにヘタクソになってしまったのか。知らない相手と上手につきあうことは難しい。現代人は、昔より遥かに豊富な情報に囲まれているにもかかわらず、自然を理解できなくなってきている。実体験が消えていることが原因のひとつだ。子供は体で得られる新鮮な感覚で自然と出会う。余分な情報などいらない。」と述べていることでも示されている。
 指導者の言葉で書かれているので、大変読みやすく分かりやすい。自然体験活動の指導者や学校の先生、それに、もちろんお父さんお母さんも、野外活動のための必読のバイブルとして推薦したい。

『自然体験・野外活動ガイド2002』
 山と溪谷社 刊  \980(税込み)

 「環境の世紀といわれる21世紀。学校の週休2日制、自然共生型社会への回帰など、今あらためて自然体験が見なおされている。人が生かされ、生き生きと輝く場所・・・」(本書より)そんな自然体験のフィールドや自然学校などが、関東甲信越、中部、関西地域毎に紹介されている。施設名、可能な体験プログラム、場所、URLなども掲載されているので、大変便利だ。場所選び、プログラムを考える上で参考になるだろう。

『ソトコト』8月号
 特集:森の学校、ドイツの環境教育
 木楽舎 刊 定価600円

 ドイツといえば、その徹底した資源のリサイクルと環境保護で知られる。
 そのドイツの「環境教育」特集した本号は、自然の中で学をテーマに子どもたちに対して行われている環境教育の現場を入念に取材している。ドイツは環境先進国だが、牛は紫色をしていると思いこんでいる子どもたちが多いという、驚きから環境教育がはじまる。   
 とくに、体験学習の場として利用されている森の学校や、環境センター、学校農園などの紹介は興味深い。また、学校で実践する環境監査のプログラム「教室の温度調査」「学用品のエコ度チェック」「水の使用量調査」などは、日本の教育現場や自然学校などもすぐに応用できそうだ。さらに環境団体の環境教育の具体例も詳しくレポートされている。ドイツの環境教育を分かりやすく特集されている本号は、おすすめの一冊。

『ヤマケイ関西 京都北山・比良山』
 山と溪谷社 刊 定価1300円

 京都市街から北に広がる山地を「京都北山」という。京都北山の定義は人によって違うが、京都の登山家の間では丹波山地から日本海までの広大な地域をそう呼んだ。
「京都北山からヒマラヤへ」という言葉がキーワードであり、今西錦司や西堀栄三郎など日本を代表する数多くの探検家や登山家を輩出した。若者たちはパイオニアワークを京都北山で学習し、それが僻地の探検やヒマラヤなどの高峰登山につながった。
 戦後の高度成長期には、京都北山で多くの若者や学生たちが汗を流しながら、広大なフィールドでまさに自然体験を行った。京都北山はフィールドワークを実践する格好の場であった。だから北山は京都の登山家の間には独特の思い入れがある。
 そんな京都北山を多彩な角度から特集したのが『ヤマケイ関西・京都北山、比良山』だ。
 京都北山の豊富なコンテンツが一挙に読める本書は貴重である。歩き方ガイドから登山史、博物誌まで詳しく記載されている。資料としても価値ある一冊だ。

「自然学校をつくろう〜あなたも自然体験活動のリーダーになれる」
 岡島 成行著
 山と溪谷社刊 定価1,200円(税別)

環境ジャーナリストで、このサイトの制作委員でもある著者が、なぜいま自然学校が必要かというテーマを、現場や生活者の目線でわかりやすく解説した必読の一冊。

『自然学校を全国に作る作業は、過疎地域の振興策であり、都市住民の福祉につながる。また、自然学校システムを確立するための基盤整備は新たな公共事業として位置づけられるし、旅行観光業、飲料、食料メーカー、アウトドアメーカーなど、各種業界が総合作用を起こす形で新規マーケットの創設にもなる。
そしてなによりも、多くの人々が自然学校を利用するようになれば、走りすぎる時代の中で、一歩立ち止まって考える人がふえ、世の中は落ち着いた明るさに包まれるようになるにちがいない。
みんなで自然学校をつくりましょう。だれでもすぐに自然体験のリーダーになれますよ。』(まえがきより)


この本は日本環境教育フォーラムのサイトで購入ができます。


BE-PAL BOOKS「親と子の週末48時間」
 九里 徳泰 著
 小学館刊 定価1,200円(税別)

総合学習と完全学校週5日制の導入は余暇時間が大幅に増加するとともに、家庭での教育がいっそう重要視される。この著は文部科学省の新学習指導要領にそった自然体験教育入門書。1年間の毎週末に何をすればいいのか、日本を代表する冒険家であり、1児の父親であるもある著者が父親の復権への一助になればと願いをこめた家庭教育書でもある。


「野外教育入門」
 星野 敏男・川島 直・平野 吉直・佐藤 初雄 編著
 小学館刊 定価1,980円 税込
      
日本を代表する自然体験活動の指導者が「やさしくわかる自然体験活動」をコンセプトに、自然の中で体験する指導法、プログラムのたてかた、リスクマネージメントなどさまざまな問題や、指導者の疑問200にわかりやすく応える、指導者のためのバイブル。巻末のデータ集や年表は、わが国の野外活動の実態をしるうえで大変役に立つ。