− 第710回 −  筆者 中村 達


『山の日』

 8月11日は山の日だった。この国は大半が山岳地という地形で、自然と言えば山が多い。山、つまり自然を大切にして、その恩恵に感謝しようというのが山の日の趣旨だ。
カレンダーに山の日が祝日と印刷されている意味は非常に大きいが、山の日について多くの国民が、果たしてどの程度認識しているのか疑問に思うことがある。関係者の一人として、もっとPRが必要だと感じている。

 しかし、最近のような酷暑の夏が続くと、特に低山は熱中症の危険性もあるので、歩くことを奨励するのは躊躇してしまう。私たちが振興しているロングトレイルも低山のエリアが多いので、十分な暑さ対策が必要だ。
 また、低山での事故も多発している。登山道からの転落で行方不明になったり、道迷いで予定通りに下山してこず、捜索願が出されるケースも多い。コロナ禍もあるので、救助に当たるみなさんはさぞ大変だろうと思う。報道を見るたびに頭が下がる思いだ。
 山の日だからと言って安易に山に登るのは危険も多い。それなりの準備と対策も忘れてはならない。
 古いお話だが、小学6年生の夏休みだったと思う。弟や近所の仲間を誘って、京都の愛宕山(924m)に登りに出かけた。どのルートを登ったのか記憶がないが、憶えているのは暑くてバテバテで登ったのは確かだ。心細くなって、カップルのあとを必死について行ったことをおぼえている。
 何しろキツイ登りだった。自宅から見える愛宕山が、こんなにしんどいとは思わなかった。山登りは大変だという印象が強く残っている。
 この愛宕山登山から数日後、弟が発熱と頭痛に見舞われて、10日ほど入院する事態になった。母親にひどく叱られた。夏の苦い記憶である。


(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員