- 第395回 -  筆者 中村 達


『滋賀の山で小学生の行方不明騒ぎ』

 滋賀県の高島トレイルで小学生の行方不明騒ぎがあった。何より無事でよかった。
以下は、あくまで私の推測や想像、それに私見であることをお断りしておく。

 この騒ぎは、全国版のニュースで、大きく取り上げられた。当初、報道では赤坂山とあったので、赤坂山のどのあたりか想像をめぐらせた。が、実際には赤坂山ではなく、歩いて1時間ほど南西方向の寒風峠付近だった。赤坂山と寒風峠では場所が全く違う。
 小学生の体験学習だから、登山起点となるマキノ高原から、赤坂山への往復とばかり思い込んでいた。が実際には、子どもたちのコースは、マキノから寒風峠まで登り、高島トレイルが通っている稜線を赤坂山へと向かい、赤坂山から下山するというものだった。小学生の集団コースとしては、少し長いように思う。

 マキノから寒風峠までは、ブナやミズナラなどの原生林の急坂を登る。この時期、緑が鮮やかだ。寒風峠からは眼下に琵琶湖が広がり、晴れていれば伊吹山や湖北の山々が見える。
 寒風峠からは樹林帯をしばらく進む。樹林帯には、所々に通行禁止のためにテープが張ってある。道はしっかりしているが、見通しはあまり良くなく、片側斜面のところもあって、少し歩きにくい。どうやらこの辺りで、なぜかテープを越えてしまったようだ。

 樹林帯を抜けると、高島トレイルのハイライトである草原地帯に出る。コースは一本道で眺望もすばらしく、右に琵琶湖、左前方には若狭湾が見え、天気さえよければ赤坂山まで迷うことは、まずない。標高1,000mに満たない山稜だとは思えない風景が広がる。

 さて、子どもはどんな行動をとるか、予想できないときがある。近道と思い込んで、脇道にそれることだってある。子どもたちを責めることは出来ないのではないか。引率者がどのようなチェックや点呼をしていたのか、気になるところだ。もっとも、どんなグループ編成、登山形態だったのかわからないので、軽々には論じられない。ただ、今後の参考のために、検証がほしい。

 報道では教師とガイドが引率とあった。ガイドは高島トレイルの山岳ガイドではないかと思い、知り合いの山岳ガイドの携帯に電話を入れた。が、捜索で山に入っているのか、つながらなかった。
 翌朝早く電話が鳴った。その山岳ガイドからだった。一晩中捜索していたそうだ。彼によると、子どもたちを案内したのは、宿泊施設などの関係者で、日本山岳ガイド協会のガイドではなかったそうだ。

 もちろん資格があるから、認定されているからといって、絶対に安全、安心ということではない。ただ、公認資格の取得には、厳しいトレーニングを受け、試験に通らねばならない。だから一定基準のスキルと安全確保の技術、それに経験も備わっていることになる。
 認定された山岳ガイドであれば、引率人数はたえず確認するだろうし、今回のような問題が発生する確率は低いように思う。

 昼前、行方不明の児童が無事に保護されたと、TVが報じた。マキノ高原に自力で下りてきたところを、保護されたようだ。よくぞ頑張って、無事に下ってきてくれたと思う。本当に無事でよかった。

 この行方不明騒ぎで、高島トレイルを運営している山岳ガイドたちは、風評被害が出ないように苦心しているという。また、これで子どもたちの登山が自粛されるのでは、と気をもんでいた。
今回のことで、子どもたちの自然体験活動が、セーブされてはならない。

※画像は秋のもので、行方不明時とは異なります。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。