- 第337回 -  筆者 中村 達


『流行のアウトドアファッション』

 近頃書店のファッション雑誌のコーナーでは、やたらアウトドアモノ、アウトドア風が多くなった。アウトドアファッションが若い人たちの間で人気だ。
 スポーツアパレルの出荷額を見ても、アウトドアズは毎年5%以上のびている。ゴルフや野球、サッカーなどの球技は、ダウンか横ばいなのに、アウトドアズは進捗が著しい。もちろん、ウォーキングやライフスタイルといったカテゴリーも伸びている。余談だがライフスタイルというのは、わかりづらい。ありていに言えば、カジュアルのことと思うが、スポーツ分野としては、そういう分類はなじまないのか知れない。
 ともかく、アウトドアファションは出荷額でもおよそ600億円で、アウトドア業界は絶好調といったところである。

 なぜ、好調なのか。それは、山ガールのおかげだといわれている。若い女性が山を歩きだして、彼女たちを追うように山ボーイも登場した。彼らの購買意欲は旺盛で、ファッションにもこだわりがある。いわゆる中高年登山者とは一線を画している。
 アウトドアブランドは、アウトドアには出かけない若者たちにも人気がある。米国のフィルソンやノースフェイス、パタゴニア、シェラデザインなどを着こなす。ブーツはレッドウィングやティバーランドにダナー。フランスのダウンブランドのモン・クレーは、山より街中で見かけるほうが多くなった。英国のバブアーもアウトドアファッションの定番になった。

 アウトドアブランドは機能が売りである。防水、透湿、防風、防寒性に、最近ではUVカットや消臭機能まで加わっていることがしばしばだ。果たして、そんな高機能がファッションとして必要なのか訝しげだが、ヘビーデューティこそ大事な要素なのだ。
 かつて、シェラデザインのマウンテンパーカーは憧れだった。モン・クレーのダウンはアルバイト2か月分の給料をつぎ込んで手に入れた。この国が豊かになって、さらに超円高に後押しされて、いまは求めやすくなった。

 アウトドアブランドは山やフィールドに出てこそ、その意味がある。なんてことを言うと、いかにも年寄りくさい。

 先日、20年ほど前にシアトルで買った、フィルソンのダブルマッキーノクルーザーを、クローゼットから引っ張り出してみた。何年かぶりに袖を通すと、大きくてブカブカだった。当時は大き目が流行っていたようだし、私の体も少しスリムになった。そこで、リフォームにと洋服店に持ち込んだ。馴染みの店主が「これは難しいぞ」と独り言を言いながら、引き受けてくれた。仕上がりが楽しみだが、結局は街着になりそうだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。