- 第275回 -  筆者 中村 達


『スキーブーツの寿命』

 スキーブーツはプラスチックの成型品だ。だから当然劣化する。表面に白い粉が吹き出したり、曇っているような状態になれば、加水分解が始まっているといっていい。ところが、このような症状がまったくないのに、突然、バラバラに壊れてしまうことがあるようだ。
 メーカーによるとスキーブーツの耐用年数は、使用状況や方法、保管方法などによっても異なるが、5年を目処にしてほしいということだ。また、「フレックスが頼りなくなったと感じたら、替え時」と表記しているところもある。

 スキーブーツの寿命は5年、正確にいうと、5年たてばそろそろ買い替えた方がいいということだ。
 実は、これまでさほど気にしてはいなかった。スキーブーツを見ながら、ふと何年使用しているか考えてみた。指折り数えてみると、10年は使用していたことになる。
 表面上は何の変化も見られないし、大丈夫のように思える。しかし、スキー場で突然分解して、バラバラになることを想像するだけで、ちょっと恐ろしい。滑走中だと転倒して怪我をすることもあるだろうし、ツアー中であれば遭難につながる可能性だってある。

 それにしてもスキーブーツの寿命がたった5年とは、なんとも理不尽な思いがする。毎年何十日もトレーニングをする選手や、スキーフリークならともかく、いまや年に10日程度滑るだけの私には、8万円のスキーブーツの寿命が、わずか5年というのには、正直なところがっくりだ。プラスチックの劣化は、防ぎようがないのはわかっているのだが・・・。

 2月ともなればスキー不況とはいえ、スキーショップの店頭には、さすがに気に入ったブーツは並んでいなかった。旧モデルの中に、何足かあることはあったが、「旧モデルには決して手を出すな」と、どこかのHPに書かれているのを思い出し、その場で来シーズンのものを予約した。

 アウトドア用品の耐用年数を考えてみた。あくまで私の使用頻度によるものだが、ピッケルは30年以上。登山靴は15年。これは皮製でグッドイヤーウェルト製法のもの。他のブーツはだいたい7~8年。あるイタリア製のトレッキングシューズは7年ほどで、ソールが剥がれたが、運よくメーカー(輸入代理店)で完璧に張り替えてもらった。
 テントは10年以上。ガスコンロは、15年は使っている。水筒は30年以上。ゴア・テックスのアウターは、10年以上着ているものもある。スキーゴーグルは15年。パックは、最年長がフランス製のモデルで30年。フライロッドは最長のもので17年・・・・・。 
 こう考えると、スキーブーツの寿命は短い。表面上は何ともないブーツを眺めながら、これを諸行無常として納得するか、諦めないか、シーズンが終わるまで思案が続きそうだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。