  
- 第111回 - 著者 中村 達
『東京アウトドアズフェスティバルの風景』
今年で11回目となる、東京アウトドアズフェスティバルが池袋のサンシャインシティで開催された。
今年のテーマは「山で遊ぶ、森で遊ぶ、川で遊ぶ」だった。このフェスティバルの当初は、オートキャンプブームの余韻もあって、国内外のアウトドア用品メーカーや商社などが数多く出展し、にぎやかなブースが並んだ。内外の最新アウトドアギアやウェアが紹介され、来場者の関心を集めた。しかし、その後、景気の悪化によりモノ志向は極端に落ち込んで、いわゆるハウ・ツウーを人々が求めるようになった。その代表が、日本百名山登山ブームと中高年の登山だった。そこにはモノに代わって、安全登山術や遭難しない登山の方法などにニーズが集まり、同時開催のセミナーには立ち見が出来るほどの盛況を見せた。また、山小屋や山岳観光地の案内コーナーが盛況となって、多くの中高年登山者が集まった。どこへ、どのように行けばいいかという要望が、モノの後に来たトレンドであった。
そして、ここ数年は中高年登山のブームが沈静化するとともに、自然体験や環境教育などがアウトドアズの核となってきたようだ。ブースを見ると、アウトドアメーカーの単独出展はなくなり、各地に誕生しつつある自然学校が中心を占めるようになってきた。また、全国のNPOやNGOなどの自然学校の体験コーナーには、学校の総合的学習時間の授業として、木工教室などが行われた。土日の開催日には、多くの家族連れで賑わった。
隣接する会場には、清水國明さんが主宰する「自然暮らしの会」がSAVEKIDSというイベントを開催した。これは自然に親しむことが少なくなった子どもたちに、木に触れてもらおうと企画されたもので、手作りの様々な木製の遊び道具が並べられ、長い長い行列ができた。
期間中昨年より5千人多い、3万人を超える入場者があったが、時代は明らかに自然とどう関わっていくか、過ごしていけばいいのかという人々のニーズと、教育という視点での自然体験活動が、この国のアウトドアズをかたちづくっていくという確信をもった。
(次回へつづく)
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■著者紹介
中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。
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