2008年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
47 広島県山岳連盟 広島県 「わんぱく登山部」
山登りや沢登りを通して、子どもたちに「楽しい」「好き」といった気持ちの原体験を提供する。同時に登山の活性化や「山行中の屎尿の持ち帰り」を広報し、社会に提言する活動もおこなう。

「わんぱく登山部」 親子で山あそび! [10/26]

日  時:
場  所:
参加者:
2008年10月26日(日) 雨
広島県庄原市比和町 吾妻山
部員16名(小学校4~6年生)、保護者17名、スタッフ6名
 <活動のねらい>

・保護者に山あそびの楽しさを感じてもらう
・登山部活動に対する体験的な理解をはかる
・親子での体験の共有の場の提供
・保護者同士の交流の場の提供

 <活動内容>

「ハイキング」
これまで山であそんできたこども達が
家族の人をさそい「山の楽しさ」をおすそわけしよう、という回。
出来るだけ山で遊んだことのない人、一緒に山遊びをしたい人など、それぞれが一人づつ誘い
どのようにしたら山遊びを楽しいと感じてもらえるかなど各自作戦をたてて活動に臨んだ。

当日は雨模様。寒気も入ってきていて気温も低く、かなり寒さも感じながらの山登りに。
強い風のふく山頂もそこそこに、山向こうの大膳原に下りて小屋へ早々に避難。
暖かい鍋ものモドキのスープを調理し、みんなでいただきながら暖をとった。

小屋周辺からは森になっていて、
ブナハリタケやなめこなども良く出ておりきのこ狩りを楽しむ姿もみられた。

下山は南の原への平坦なトラバースのルートで。
こちらは山頂とちがってブナ・ミズナラの比婆山山群ならではの豊かな森。
霧にむせぶ紅葉の原生林の美しい様子を楽しんだ。

 <タイムスケジュール>

07:30  広島駅出発
10:10  休暇村吾妻山着
10:30  登山開始
11:20  吾妻山山頂
12:00  大膳原/昼食(小屋使用)
13:50  下山開始
15:10  休暇村吾妻山着(自由入浴)
16:00  現地出発
18:30  広島駅着

 <運営ポイント>

・主役は保護者。ペース配分や運営を、保護者に合わせて。
・休憩や水分の補給など、しっかりとれるようにこちらで管理。声をかけて。
・森や水など植生の豊かな場所を選択。
・「家族の人に山遊びの楽しさをおすそ分け」するプロジェクトとして、こどもにも参加してもらう。
・こども達にこの回の趣旨を説明し、誰を誘うか、どのようにしたら山遊びを楽しんでもらえるか、
・また、どのような山がフィールドとして良いか、など、事前にシートを使って作成しながら考えてもらう。

 <こども達の様子>

こどもたちは保護者と一緒のせいか、一日を通して全体的におとなしかった。
バスの中でも普段の元気な様子と違って神妙な様子。
状況になれてくると、中には友達同士で普段のにぎやかしい様子を保護者に披露するこどももいて
周りの保護者の笑いを誘っていた。

お昼ごはんを食べてから後、小屋のまわりでのゆっくりした時間の中で
親からはなれてこども同士で自由に遊ぶ姿が目立ってきた。
林の中にはいってごそごそしたり、
小屋の整備作業のために地元の方が使ったとおもわれる焚火の残り火をいたずらしたり。
帰り道では3~4人が徒党を組んで好きなように歩いていく姿も見られた。

雨で気温が低いためさすがに全体的なモチベーションは上がりにくい状態だったが
現地につくと大人たちも腹もくくったのか意外と元気な様子で歩きだしていた。
当日は雨になったけれど、みな「楽しみ」にしてくださっていたのだ。

もっと元気な方は、キノコを探してこどもと一緒に小屋のまわりを探索したり
道すがら藪の中に入っておもしろそうな様子だった。

下山後、入浴して体を温めた。
緊張もとけてか保護者同士でおしゃべりを楽しむ様子があったり、お土産を選ぶ姿があったり。
こどもも無邪気に親に甘える顔を見せ、いつもの活動とはまた違った楽しい雰囲気があった。

 <安全管理>

「管理ポイント」
・大人数を許容できる、出来るだけシンプルなファミリーコースの選択。
・秋からの雨天は寒さを伴うため、避難可能な場所が確保されたルートを選択。
・スタッフの人数。
・この時期の天候についてや、持ち物について事前に案内を。

「インシデント」
・特になし

 <評価・反省>

「運営」
40人という大人数の山行運営は初めて。
大量の食材や休憩場所など課題はあったが、やってみれば思ったより困難なものではなかった。
またかなり寒い雨だったが、大膳原の大きな山小屋を使用できたことで過度な過酷さはしのぐことができた。

こども達による作戦シートは初めての試みだったが、彼らの反応もよく保護者も含めて良い動機づけになったように思う。
ただ本番当日の運営の中にはうまくいかせていない。
せっかく名札も作ってもらっても、自己紹介をする場すら設けられなかった。
(とにかく寒くてそのような気分にもならない!)

普段ゆっくりと顔をあわせることのない保護者同士が、もっと交流しやすいような場を
天候にかかわらず何らかの形でつくっていければと思う。
事前準備がうまくいっていただけに今回はちょっともったいない感もあるが、
企画する側にとっては次につなげられるものが得られた。

「プログラム設定」
運営の事も考えると「出来れば晴れてくれ~」と心で叫んでいたのだが
自然は全くもって人の都合に無関心、公平平等である。
その甘えが設定の見極めに迷いを生じさせたと、終わってから感じる。
もっと積極的な雨の山遊びを突き詰めて提供し、それを楽しめただろうと思う。
晴れの山登りの準備をしていて雨がふっちゃった、という受け身な感が否めない。

また、「こどもは大丈夫だろうけれど、普段の経験のない大人はどうだろうか」と
心配していたが心配しすぎた。
もっと人の力を信じて良い。

 <総合評価>

40人という大人数の山行はわんぱく登山部では初めて。
滞りなく無事終えることができ、私たちにも自信になった。
そして、保護者をともなっての「雨の山登り」も、今回がはじめてのことだった。

10月末のこの時期の雨は寒い。
梅雨の温暖な時期ならともかく、さすがにこれでは「雨もいいな」ということにならないだろう。
(まずは寒さと不快に抵抗するに必死だ)
が、まぎれもなく「区切られることのない本物の自然の中に身を置く」機会の提供である。

あまり山の経験がない人に山って楽しい!と興味をもってもらうためには
最初はその体力に余裕のある範囲で山の時間を提供するのが効果的だとは思っている。
けれども、きつい山行や雨や寒さといった自然の状態が、人を山嫌いにさせるのではないのだと今回感じた。
(人を山嫌いにさせるのは、人による行動の押し付けや束縛が原因ではないか)

自然物である人は意外と強く出来ている。
自然の中での過酷な状況に身を置くとき、人が本来持つ生物としての感覚が覚醒されてくる。
私たちは表層の意に反して、それを無意識の中で「心地よい感覚」として受け入れてしまっているような気がする。
というか、自然物である人が自然の中に身をおき、心地よさを感じたり良い効果を得ることは
理屈を持ち出すまでもなく当たり前の話なのだ。

「雨で残念だった」という言葉はきかれても「だから山はいやだなあ」とは聞かれない。
「次は晴れた日に家族でいってみたい」と言葉がつらなる。
「ぐちょぐちょになってもまあいいかと開き直ったら案外楽しく登れました」
「実は雨のなかでの山登りもやってみたかったんです」
昨年度から2回目になる親御さんの中にはこんなことを書いてくれた人もいた。

人生経験のある大人は、やっぱりこどもよりもよっぽど強い。
みなさんそれぞれに何かを感じて持ち帰ってくださっていた。
そして雨でも晴れでも、自分の家族と一緒に山を歩く、というのは
こどもにとっても嬉しい時間のようだ。
「お父さんと歩くのは、また違った楽しさがあるとわかった」と書いてくれたこどももいた。
傍らで見ている私たちも「親子で楽しそうだな」と感じてしまう。

「親子登山はいい仕事だ!」「雨の山登りもやっぱりアリだ!」
と変な自信?をつけさせていただいた回になった。



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