(財)日本野鳥の会


1.野鳥に親しむ
1-1.楽しみ方さまざま
 バードウォッチングの楽しみ方にルールはありません。「旅のついでに」という人もいれば、さまざまな出会いを求めて日本各地や世界各国に出かけていく人、地域の自然保護のために、地元の鳥に絞って観察する人もいます。一人でよし、家族や知人ともにもよし、探鳥会に参加してなかまをつくるのもよいでしょう。
 身近な鳥でもわかっていないことが多いので、自宅近くで数を数えて季節や年による変化を調べたり、声や行動を記録してその意味を調べたりする人もいます。庭やベランダに呼ぶとか、季節ごとの暮らしを観察して鳥の生活カレンダーを作っている人もいます。
 写真、ビデオ、録音を楽しむ人、絵画、俳句、音楽、木彫りなどの創作の素材にする人もいます。

1-2.野鳥を見分ける
 「何という種か?」を見分けて名前がわかると、親しみが湧くだけでなく、その鳥の暮らしや環境を知る手がかりも得られます。なぜなら生き物の暮らし方は種によっておおよそ決まっているからです。
 例えば、出合った鳥がシジュウカラなら、たくさんの虫を食べる鳥なので、そこでは多くの虫が必要ということになります。ツバメであれば、夏鳥なので秋には南の国に渡っていくこと、ツグミなら冬鳥なので、シベリアからやってきたことなどがわかるでしょう。(写真:ツバメ)
 また、自分の町にどんな鳥が、いつ、どのくらいいて、どんな暮らしをしているのかを知ることは、自分の町の自然を知ることにもなります。いろいろな種の鳥がそれぞれの暮らし方をしていることがわかると、自然の多様性や豊かさを実感することができるでしょう。

1-3.どうしたら見分けられるか?
 慣れることが一番。そのためには焦らずに、自分なりに楽しみながらバードウォッチングを続けましょう。簡単に見分けられる鳥がいる一方で、ベテランでもなかなか見分けられないものもいます。すべて覚えようとせずに、わかりやすいと思うもの、自分が気に入ったものなどから見分けられるようにするとよいでしょう。

1-4.見分けられなくても
 何という種かがわからなくても、姿かたちや行動から「雄か、雌か」「成鳥か、幼鳥か」が推測できることもあります。春に行動を共にしている2羽を見かけたらペア(つがい)、初夏にかけて数羽が一緒にいれば、親子の可能性が大です。このように関係を想像したり「何を食べているの?何をしているの?どうして?」などと行動を観察するのも楽しいものです。
 鳥の名前や知識と関係なく、野鳥が好きで野鳥の会の会員になっている人も少なくありません。また、多くの絵画、音楽、文学などに鳥が登場することがありますが、それらの作家がすべて鳥に詳しかったわけではないでしょう。古今東西、名前がわからなくても鳥と親しんできた人たちはたくさんいるのです。(写真:オナガガモ)

2.どこへ行こうか
2-1.近所でバードウォッチング
 山や林の中はしげみが多く、慣れないうちは野鳥を見つけにくい環境です。気づきさえすれば、どこにでも鳥が暮らしているはずですから、まず近所からバードウォッチングを始めてみませんか。身近な鳥を覚えると、それと比較していろいろな野鳥を見分けられるようになります。庭やベランダに来る鳥、ツバメのように市街地に好んで巣をつくる鳥もいます。近くに公園や空き地、雑木林や河原があれば行ってみましょう。何度も通えば季節によって見られる種類が変わったり、同じ鳥でも違った場面や季節ごとの暮らしが見られることでしょう。

2-2.レンジャーのいる観察施設
 日本野鳥の会では、1981年5月、全国の方々から1億円のご寄付をいただき、北海道苫小牧市郊外のウトナイ湖に日本で初めてサンクチュアリを建設しました。
 サンクチュアリとは、野鳥とその生息地を守るための拠点です。同時に自然保護のための普及・教育の場でもあります。ここでは野鳥をはじめとする自然が主人公です。
 日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、地域の自然を守る活動と来訪者への自然解説、サンクチュアリの環境管理にあたっています。
 現在、日本野鳥の会では、全国11ヶ所のサンクチュアリにレンジャーを配置しています。

(1)ウトナイ湖サンクチュアリ(火・水休)
 北海道苫小牧市植苗150-3 TEL:0144-58-2505
(2)鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(火水・4~9月休)
 北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南 TEL:0154-64-2620
(3)春国岱原生野鳥公園(水休)
 北海道根室市東梅103 TEL:01532-5-3047
(4)福島市小鳥の森(月休)
 福島市山口字宮脇98 TEL:0245-31-8411
(5)東京港野鳥公園(月休)
 東京都大田区東海3-1 TEL:03-3799-5031
(6)谷津干潟自然観察センター(月休)
 千葉県習志野市秋津5-1-1 TEL:0474-54-8416
(7)横浜自然観察の森(月休)
 神奈川県横浜市栄区上郷町1562-1 TEL:045-894-7474
(8)三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館(現在、2000年噴火の影響で休館中)
 東京都三宅村坪田4188 TEL:04994-6-0410
(9)加賀市鴨池観察館(無休)
 石川県加賀市片野町子2-1 TEL:0761-72-2200
(10)姫路市自然観察の森(月休)
 兵庫県姫路市太市中915-6 TEL:0762-69-1260
(11)福岡市油山自然観察の森(月休)
 福岡県福岡市南区大字桧原字夫婦石855-1 TEL:092-871-2112

2-3.探鳥会(野鳥観察会)
 何事も初めは不安で戸惑うもの。その点、探鳥会に参加すると、初めての参加でもベテランのガイドを受けられます。日本野鳥の会では、各地でだれでも参加でき探鳥会を実施しています。、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。
 探鳥会では「リーダーに積極的に質問すること」「自分に合った場所やリーダーを選び、なかまをつくっていくこと」をお勧めします。

3.野鳥たちの四季
3-1.春~夏
 夏鳥の季節。4~7月頃までは子育てシーズンでもあります。雄がさえずり、つがいが出来て、子育てや親子が見られます。この間は親鳥が神経質なことが多いので、子育ての邪魔をしないように注意しましょう。8~9月は羽が抜け変わる時期で、多くの鳥が活動的ではありませんが、干潟は旅鳥のシギたちが南下して賑わいます。

3-2.秋~冬
 冬鳥の季節。寒さや食物の不足などで、生き残りをかけた試練の季節ともいえます。市街地で野鳥の種類や数が多くなり、木の葉が落ちて姿を見つけやすい季節でもあります。3月は春めいてくる一方で、まだ多くの冬鳥が残っています。(写真:タンチョウヅル)

3-3.春と秋
 4~5月は北上の季節。冬鳥や旅鳥が北へ移動し、夏鳥が南の国からやって来ます。9~10月は南下の季節。夏鳥や旅鳥が南へ移動し、冬鳥が北から飛来がし始めます。これらの渡りの季節には、身近なところでも意外な鳥が羽を休めているかも知れません。

4.フィールドマナー/やさしいきもち
 バードウォッチングを通して、野鳥の暮らしや彼らが暮らす自然環境について知ることが「やさしい気持ち」に結びつくことでしょう。また、観察することに夢中になって、人に迷惑をかけないことにも気をつけましょう。
 日本野鳥の会では、自然観察などの野外活動で、自然や人に迷惑をかけない心構えとして「フィールドマナー/やさしいきもち」を提唱しています。

…野外活動、無理なく楽しく
自然は、人のためだけにあるのではありません。思わぬ危険が潜んでいるかもしれないのです。知識とゆとりを持って、安全に行動するようにしましょう。

…採集は控えて、自然はそのままに
自然は野鳥のすみかであり、多くの生物は彼らの食べ物でもあります。あるがままを見ることで、いままで気づかなかった世界が広がります。むやみに捕ることは慎みましょう(みんなで楽しむ探鳥会では、採集禁止が普通)。

…静かに、そーっと
野鳥など野生動物は人を恐れるものが多く、大きな音や動作を警戒します。静かにしていれば彼らを脅かさずにすみますし、小さな鳴き声や羽音など自然の音を楽しむこともできます。

…一本道、道からはずれないで
危険を避けるため、自然を傷つけないため、田畑の所有者などそこにくらす人に迷惑をかけないためにも道をはずれないようにしましょう。

…気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑
撮影が、野生生物や周囲の自然に悪影響を及ぼす場合もあるので、対象の生物や周囲の環境をよく理解した上で影響がないようつとめましょう。餌を与える行為も、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種、水質悪化が指摘されている場所などでは控える必要があります。また、写真撮影や給餌、観察が地元の人や周囲の人に誤解やストレスを与える場合もあるので、十分な配慮をしましょう。

…持って帰ろう、思い出とゴミ
ゴミは家まで持ち帰って処理しましょう。ビニールやプラスチックが鳥たちを死にいたらしめることがあります。またお弁当の食べ残し等が雑食性の生物を増やすことで、自然のバランスに悪影響を与えます。責任を持ってゴミを始末することは、誰でもできる自然保護活動です。

…近づかないで、野鳥の巣
子育ての季節、親鳥は特に神経質になるものが多く、危険を感じたり、巣のまわりの様子が変化すると、巣を捨ててしまうことがあります。特に、巣の近くでの撮影はヒナを死にいたらしめることもあるので、野鳥の習性を熟知していない場合は避けましょう。また、巣立ったばかりのヒナは迷子のように見えますが、親鳥が潜んでいることが多いので、間違えて拾ってこないようにしましょう。

5.道具
 特別な準備がなくても、目と耳、考える頭や感じる心で野鳥や自然を楽しむことができるのがバードウォッチングですが、双眼鏡や望遠鏡があれば野鳥を遠くから、驚かさずに観察できます。これらの道具については次に紹介します。
5-1.双眼鏡
(1)選び方
 双眼鏡の3つの数字(倍率、視野、口径)をチェック!例:8×30 7°=倍率8倍、対物レンズ口径30ミリ、視野7度
 大きさはレンズの口径が大きいほど明るい広い視野になりますが、その分重くなります。
 日本野鳥の会バードショップなど専門店で、信頼できるメーカー品を買えば安心です。  約2~3万円以上、倍率7~10倍、視野7度、口径30mm程度がよく使われています。
(2)注意
 落としたりぶつけたり、レンズに触れたり傷をつけないように、また、太陽を直接見ないようにしましょう。
(3)使い方
ストラップ調節:首から下げて胸の位置くらいにセット。
レンズ幅の調節:双眼鏡をのぞきながら左右の幅を目の幅に合わせます。
視度調節:左右の視力が違う場合に、普通は右接眼レンズで調節できます。
訓練:遠くの対象から近くの小さいものまでピント合わせの練習をしましょう。最初は自分の目で鳥をさがし、視線を鳥に向けたまま双眼鏡をあてがうようにするとよいでしょう。飛んでいる鳥や、すぐ逃げてしまいそうな鳥は、まず、肉眼で観察しましょう。

5-2.望遠鏡
 双眼鏡より倍率が高い20倍がよく使われ、遠くの鳥や、動きが少ない鳥を見る時に威力を発揮します。視野が約1度と非常に狭いので、三脚が必要です。

5-3.図鑑、ノート、カメラ
 野外ではケータイ野鳥図鑑、家ではインターネット野鳥図鑑を使いましょう。またロングセラーの図鑑「新・山野の鳥」「新・水辺の鳥」は書店でお求めください。下調べや復習に便利です。
 フィールドノート(野帳)は出会いの記録(いつ、どこで、どんな種類、どんな場面に見たとか、感想、疑問など)、鳥の特徴を書いたり、スケッチしておくと特徴を見落としません。

(「新・山野の鳥」安西英明、(財)日本野鳥の会より抜粋)

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