![]() ![]() ![]() 著者 吉田 哲也・浪合通年合宿センター副所長
親の自然体験度の移り変わり 私は、国内留学(山村留学)現場の指導者です。私はこの仕事を10年しています。私の職場では、10人のこどもたちが一緒に生活しています。自然体験と共同生活体験を軸に、食事づくりから掃除、薪割りから農作業、自転車ツーリングから高所登山、話し合いからとっ組み合いまでいろんな体験をしています。(急いでお断りしますが、ここは自立支援施設でもないし、不登校児施設や社会福祉施設の類でもありません。) 「私たちがこどもの頃にしていたような体験を、我が子にさせたい」 時が流れ、今の親御さんはこうおっしゃいます。 「私たちは自然体験なんて、したことがない」 このふたつを例示して現代の保護者像を示すのは、極端かもしれませんが乱暴ではないでしょう。 アウト・ドア派のお父さんは、増えているようです。でも、私の目には、快適なキャンプ場で、音楽を流しながら蚊帳(のようなもの)で外界を遮断し、カートリッジガスの火でバーベキューをしているキャンプは、今求められている自然体験とはちょっと距離があるような気がしてなりません。 私もそうしたキャンプを家族で楽しむことがありますが、でも、それより我が家の小さな畑で農作業をしている時や、川原でなんとなく石をめくって生き物を探したりしている時の方がよっぽど「自然体験」してるって感じます。 ともあれ、今の親御さんの自然体験度は、おしなべて低い、といって差し支えないと思います。たぶん、我が国の一次産業の衰退と密接に関係していると思います。低いなりに「自然体験って大事(らしい)から、せめて我が子にはいろいろさせてやらなきゃ」と思っていらっしゃるのが現状ではないでしょうか。もしかすると「でも、自然体験なしで大人になったオレたちってそんなにダメなのかなあ・・」なんて思っていらっしゃるかもしれませんね。あ、これって邪推?? 自然体験活動は体と、心と脳を総合的に使います。カラダとココロと脳ミソにいいんです。たまのキャンプ、とかじゃなくて、日常的に自然体験したいものですよね。くらしに自然体験を取り戻す・・・このことが、今一番肝心なんだと思います。 2002年秋から始める親子の自然体験 都会・・なんて言葉を使いましたが、今のこどもたちは都会っこであろうと、田舎の子であろうと、自然体験が少ないことに変わりはありません(信州大学平野助教授の調査による)。それは家庭生活や地域、学校の活動のあり方に原因がありそうですよね。あと、わざわざ日常的と書いたのは、キャンプ等のようにイベントチックじゃなく、いつでもすぐにできることが肝心と考えているからです。 ともあれ、まず、テレビやパソコンの画面の中じゃない、ほんとの自然に出かけることが大切です。外に出ようよ、ってことです。幸い、季節はドラマチックな秋、なんです。 どこでもネイチャーウォーク そんなことを考えて構成した活動・・題して「どこでもネイチャーウォーク」。以下、その概要を記します。 <心構え> 自然がなんにもないところなんて、ありませんよね。公園でも、路地でも、そこに自然はあるはずだし、それを発見しよう!という気持ちを持つことが肝心。もちろん、ちょっと郊外にでかけることができれば、もっともっと自然を味わうことができますよね。 それと、できれば、のんびりじっくりできるよう時間をプロデュースしておいていただきたいですね。自然に浸る時間は、くらしを刻む時間とはまた違いますから。のんびりゆっくり、が基本です。 <ねらい> 身近な自然にまなざしをむけ、自然への好奇心と自然からの感動を得るセンスを養うこと。 <持ち物> 筆記用具、メモ帳、図鑑(関心があるもの、また調べてみたいものの図鑑)、カメラ(デジカメでもよい)、ビニール袋、ちょっとしたおやつ、水筒(コンビニで買っちゃうんじゃなくて、家から支度して持っていく、それを野外で食べるってことが楽しいんですよ) <やりかた> 「歩いて出かける」・・もちろん、郊外までは電車や車でも、目的地についたら歩きましょう。距離はそんなに必要ありません。2キロもあれば半日くらい楽しめちゃうかも。 その2 「見つける」・・自然をみつけよう。都会の真ん中なら「自然発見」をキーワードにしてみるといいかも。自然が豊富な場所なら、自然の中でも何かひとつテーマを決めるといいですよね。自分に関心があるもの・・たとえば、「花」とか「葉っぱ」とか「石」とか「虫」とか。これからのシーズンだと、紅葉したいろんな種類の葉っぱをゲットしてみるのも楽しいでしょうね。 その3 「集めよう、調べよう」・・さあ、みつけたものをゲットしていこう。現物をとることがはばかれるようなら、カメラやデジカメの登場です。ゲットしたら、それが何か調べてみよう。図鑑の出番ですね。図鑑で調べてわからなかったら、まあ、いいでしょう。おうちに帰って、機会があれば調べてみようくらいの気楽な気持ちがいいですよ。これを繰り返すうちに、時間はどんどんすぎていきます。 その4 「休む」・・水筒を出し、おやつを出し、お気に入りも場所でちょっとブレイク。この休憩もポイントです。景色のいいところ、気持ちよくなれるところ、それを探すってことがいいんですよね。テーマは、自然を心地よく感じられるところで休む。おうちから持ってきた、あったかーいお茶やおやつが、なんだかとってもおいしいに違いありません。秋の風、色づいた葉っぱ、枯れた花でさえ、いつもと違って見える筈。休んだら、また歩いて、見つけて、集めよう、調べようです。 その5 「ふりかえる」・・さて、楽しいネイチャーウォークが終わったら、1日をふりかえってみましょう。「どんなことが一番心に残ってる?」「何が一番きれいだった?」「どんなことが楽しかった?」・・わかりやすい言葉で、こどもに問いかけてみましょう。そして自分もおしゃべりしてみましょう。照れないで。そしてこどもの発言には受容的・肯定的に。この「ふりかえり」が一番肝心です。ここで、向自然的感性がぐんと伸びるといっても過言ではありません。ここをやらずに、「どこで夕食食べる?」とか「宿題やったか?」とかにいっちゃうと、活動の値打ちがなくなっちゃいます。 その6 「飾る」・・おうちに帰ったら、ゲットしてきたものを飾ってみましょう。現物をコレクションケースに陳列するのも楽しいし、アルバムに写真をはりつけていくのも楽しいです。デジカメなら、パソコンで電子アルバムづくりですね。できのいいものは大きく引き延ばしたりして、飾ってみるのもいいですよ。これも「ふりかえり」のひとつといっていいでしょう。ものを集め始めたら、また出かけたくなります。これも、仕掛けのひとつですね。 そしてこれから プランターで野菜栽培もいいでしょうし、キノコ栽培も楽しいかもしれません。食べるもの(素材)をつくるって、自然とのつながりをかなり認識しやすいですよね。こどもも喜ぶし。 おっと、ここで一言。「食べ物栽培したけど、こどもはよろこばなかったぞ」って言われたことがあります。でもこれって、「ごはんつくってやったけど、おいしいっていってくれなかったぞ」って言っているのと同じような気がしませんか? 上手にやる工夫とか演出なしで、こどもが喜ぶなんて思わない方がいい。けど、その工夫とか演出って、そんなに難しい話でもない。 ともあれ、まず肝心なことは、たぶん、みっつだけ。 「こどもが、これからやる活動を理解できる状態(年齢、知識、体力)か」 「大人が楽しんでできるか」 「こどもと一緒にやれるか」 あ、安全管理が大切なのは、いうまでもないですからね。 我が家ではこんなことしてるよ、って例があったら、また教えて下さい。 うちでも、またうちの現場でも活用させていただきたいです。 ■著者紹介 吉田 哲也(よしだ てつや) 浪合村立浪合通年合宿センター副所長 1968年京都市生まれ。信州大学教育学部卒。 (財)野外教育センター(現 野外教育財団)研究生を経て、職員に。短期合宿室室長、松川通年合宿所所長を経て、1993年より現職。 長野県キャンプ協会理事、国立乗鞍青年の家指導者養成カリキュラム開発委員、 飯田市立風越こどもの森公園運営委員、他 |