− 第685回 −  筆者 中村 達


『初冬の旧街道』

 今年最後の連休(飛び石)に、の信州へ出かけてきた。高いところの紅葉はすでに終わっていたが、標高500mあたりはまだ残っていた。木枯らしが吹くと、すべて飛ばされて冬枯れの様相を見せるだろう。
 中央アルプスや南アルプスもまだ積雪は少なく、山肌やグレーの岩稜が見えている。ただ、そのあと強い冬型の気圧配置になったので、今頃は山々は白くなっているに違いない。

 中山道を車で走っていると、旧街道を歩いている人たちを目にすることが多くなった。この日もパックを背負った何組ものハイカーを見かけた。コロナ前は外国人ハイカーがたくさん歩いていた。一時は年間5万人もの外国人が中山道を歩き、日本の山深い自然を楽しんでいたという。その影響なのか、日本人のハイカーが増えたそうだ。

 私たち日本人にとっては馴染みのある風景でも、外国人には日本の自然と歴史文化は新鮮で、興味がわくのだろう。考えてみればその逆も然りで、私たちが外国に出かけると、多くの発見があり感動することが多い。氷河とその背後にそそり立つ岩峰群の景観は国内では見られない。足元には様々な高山植物が咲き乱れ、まるでハイジの世界にいるような錯覚を覚えたこともたびたびある。
 一方で国内の山々は、奥深い自然の中で信仰の長い歴史が脈々と続き、人々の暮らしとある種の山岳文化のようなものを醸し出しているように思える。そんな歴史文化が全国の山々にはある。そこに無数の道があり、現在ではハイキングのルートとしても利用されている。枯れ葉舞う初冬の信州で、そんなことを思った。
※画像はイメージです。


(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員