− 第658回 −  筆者 中村 達


『コロナ禍での表現』

 コロナ禍で連日、それもこの1年以上、コロナの報道や話題がメディアにあふれて、やや食傷気味である。 COVID-19、PCR、クラスター、エビデンス、アウトブレイク、パンデミックなど、聞きなれない数多くの外国語も日常に蔓延して、すでに日本語化したようだ。そのせいか、私も聞きかじりの知識ばかり増えて、ひとかどの評論家風になったような錯覚を覚えることがある。
 また、感染者が急増して緊急事態宣言が発出されると、報道される感染者数に暗い気持ちに陥る。逆に減少した数値で気持ちが幾分楽になったりもする。そんな一喜一憂の日々を連日送り続けて、早や一年が過ぎ去った。

 TVなどで気になるのは、数値の報道の仕方だろう。例えば、「500人を下回った」、とするか、「まだ400人を超える高止まり」では、イメージがずいぶん異なる。前者はやや楽観的だし、後者はまだ危機的状態にある印象を受ける。つまり恣意的に視聴者の気持ちを変えられるということでもある。考え過ぎかもしれないが。

 SNSなどが発達して、だれもがレポーターやライター、あるいはジャーナリストになれる可能性がある。意見や情報の発信が、だれでも簡単にできるし、よく問題になるフェイクも流すことが可能だ。それだけに、ファクトとフェイクを見分けられる知見が問われている。
 という私も、気をつけなければいけないと、いまさらながら自戒するコロナ禍の日々である。


(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員