− 第646回 −  筆者 中村 達


『コロナ禍の秋』

 久しぶりに北アルプスの山麓に出かけた。自粛生活が続いたので、今年初めて同地を歩いた。
 向かう途中、高速道路のサービスエリアでは、消毒用アルコールが各所に置かれ、レストランはアクリル板がテーブルに設置されていた。平日なので観光客はさほど多くはなかったが、仕事中か仕事場に向かう人たちが、列をなして手指を消毒していた。

 山麓のケーブル駅でも随所に消毒液が設置されて、連絡先の記載など、感染予防が徹底されていた。訪れていたハイカーや観光客もマスクをして、手指の消毒に余念がないように見えた。
 さすがにマスクをしていると息が切れるので、行き交うハイカーが少なくなると外して歩いた。外したり、かけたりと、いい加減面倒だったが仕方がない。
 宿では手指の消毒の他、検温も行われ、レストランも三密を避けるように、椅子が配置されていた。その感染予防対策の徹底ぶりに、正直なところビックリした。

 さて、今年の紅葉だが出かけた日は、山麓部ではいま一つに見えた。暑かった夏と少雨のせいか、ナナカマドの色づきもよくはなかった。ブナやミズナラなども、黄色くはなっていたが、・・・。もっとも、1,800mあたりから上はほぼ例年通り、色づいて秋を堪能することが出来た。
 私が帰ったあと、雨が降って気温も下がったので、今頃は美しい紅葉に彩られていると思う。が、間もなく足早に冬がやってくる。

 帰路、立ち寄ったお寺でも、消毒液が随所に置かれ参拝者は手指をぬぐった後で、手を合わせていた。門前の土産物店では各店舗の入り口に消毒液が置かれ、店に入るたびにアルコールを噴霧するので、ついに手がカサカサになってしまった。
 そんな何とも形容しがたいコロナ禍の秋である。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員