− 第645回 −  筆者 中村 達


『初冠雪の便りが届いたが・・・』

 ある老舗スキー場の関係者の「スキー場や宿は、外国人がいないとやっていけない」、という言葉が耳に残っている。数年前のことだ。
 秋になると初冠雪の便りが届く。今年の冬は雪が多いのか、少ないのか、いまでも気になる。スキーにのめり込んでいた頃は、スキー雑誌の0号に掲載された、そのシーズンの板やウェアを食い入るように見入っていた。まさにスキーバブルの時代だった。

 いまは、遊びが多様化したのと携帯代などにも出費がかさむ。何しろスキーやスノボにはそれなりの費用がかかる。休暇が取得しやすくはなったが、若い人たちのいまの平均的な可処分所得では、簡単には出かけられないと思う。
かつては、高度経済成長期だったので、なんとなく将来に希望があった。給料が安くても、少々無理をしてもなんとかなるという、楽観的な気持ちが私にもあったような気がする。だからボーナスの大半を山やスキーに充てた。

 今年はさらに新型コロナウィルス感染症の流行で、特に宿泊をともなうスキーやスノボは減少するだろうし、訪日外国人も期待できない。お世話になったスキー場や宿泊施設の関係者の顔を思い浮かべるのが辛い。
 一方、スキーの道具・用具業界も苦戦が予想されている。ただでさえスノースポーツ参加者の減少傾向に悩まされているのに、今回の事態が追い打ちをかけるのではないか。
 地球の温暖化で降雪量も減少しているとされるが、長期予報では、今冬は寒くて雪も多いらしい。皮肉なものだ。
スキーやスノボは冬の最良のアウトドアアクティビティだと思う。特に、子どもたちは、転んでも、転んでも、立ち上がらなければならないし、誰も助けてはくれないことを学ぶ。それでも上達していく自分のことがわかるし、そうなると、このうえもなく楽しい。そして、何より冬の自然の素晴らしさを、五感で感じることが出来る。
 1日も早く、元の日常に願うばかりだ。

※画像はイメージで本文とは無関係です。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員