− 第629回 −  筆者 中村 達


『いまだからこそ出来るアウトドアなメンテナンス』

 いまは外出自粛で、山へ登るのも控えている。気がつく度に、ちょこちょこと買い揃えた、というより衝動買いだが、そんなアウトドアモノの多くが新品のままで置いてある。
 イタリアで買った登山靴は、一度も履かずに5年が経過した。本来はもっと早く履く予定だったが、10年前の靴がソール交換できたので、いつの間にかそのままになってしまっている。2年前にフランスで手に入れた、トレッキンングシューズも新品のままだ。靴は履かないと劣化が進みやすいという。ソールは7年がおおよその寿命と言われている。このままだと一度も足をいれないままに劣化という危惧がある。
 暇にあかしてアウトドアモノをチェックすると、10年ほど前のレインウェアは、内側の素材が一部剥離していた。これでは防水性はないのと同じだ。
 20年以上前に、米国で買ったディパックは、内側のポリウレタンコーティングが溶け出して、ベタベタして、どうしようもいない。すでに防水機能は果たしていない。ただ、ベタツキを解消する方法はあるようだが、当然ながら防水性はなくなる。思い入れがあるので、そのうちに試してみようとは思う。
 その点、昔のリュックは帆布製が多く、べたつきなどの心配はない。しかし、初めから防水性はさほど期待できなかった。
 気になるのはスキーブーツだ。私が愛用しているのは、歩いて登降が出来る兼用ブーツだ。これもフランスで手に入れた。すでに7年が経過しているので、加水分解が気になる。外見では判別できにくく、履いて滑ってみないとわからない、というので始末が悪い。当時、国内では手に入らなかった、私にとっては貴重品なのだが・・・。

 ゴソゴソやっていると、出てくるわ、出てくるわ、コンロ、バーナ―の類。水筒、ヘッドランプ、防水シートなどなど。考えてみれば、山やアウトドア用品は消耗品なのだ。古くなったり、劣化すれば使わない、というのが安全のためのテーゼだろう。ただ、これらの品々は、便利だった、役に立った、あるいは助けられた、などという思い出がある。それだけに簡単に、断捨離とはいかないのだ。  登攀用具は劣化しているのが多く、使用に耐えないと思うが、思い出の品々が多いので処分は当面出来ない。

 まだある。釣りの用具だ。最近は出かける機会が少なくなったので、ライン、リーダー、ティペットなどの消耗品は、劣化が進んでいるだろう。それなりに高いものなので、捨てるのは躊躇する。暇さえあれば作っていた大量のフライも、スレッドは劣化しているのだろうか。
 こう考えると、私にとっては煩悩の果てであるのかも。しばらく自粛が続くので、この際いろいろチェックしてみよう。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員