− 第627回 −  筆者 中村 達


『桜が咲いた』

 今年はおおむね1週間ほど、例年より桜が早く開花したようだ。桜は一気に咲いて、風景がピンク色に染まるのが何ともいい。今年は新型コロナウィルス感染症の広がりで、気持ちが滅入りがちだが、そんなときに咲く桜で、幾分心が癒されたように感じる。
 里山で突然パーッと桜が咲くのを見ると、ウキウキするのは例年と変わらない。
 連休に遠出するのも控えた方が良さそうなので、例によって自宅近くの森林公園を歩いてきた。いつもなら広い芝生の広場は、子どもたちが走り回っているのだが、人はまばらだった。林道を登って峠に着くと、そこは長い滑り台のスタート点近くだった。利用者は滑り台の横尾に設えられた階段を登ってスタート点に立つ。
 スタート点には、親子連れの人たちが順番待ちをしていた。賑やかな子どもたちと、長い滑り台を前にして少し緊張する子たちがいた。順番待ちといっても、都市部の公園のその比ではない。親子連れが多く、なんだかホッとした気持ちになった。ここなら感染の危険性も少ないだろうと思った。
 滑り台から離れて少し歩くと小川に出た。飛び石にしゃがんで、沢蟹だろうか、夢中で探している姿があった。水の中に足を入れて遊んでいる子どもたちもいた。

 ところで、各地にある自然学校も、新型コロナウィルス感染症の広がりで、様々な事業が中止や延期に追い込まれているようだ。子どもたちの野外活動を指導して、元気で健やかな成長を育むような活動だけに残念だ。もともと小規模な事業体が多いので、現下の状況が心配だ。そんな中で、彼らのスキルとノウハウを生かして、学童保育を行っているところもあると人づてに聞いた。感染症が広がって閉塞感のある雰囲気だからこそ、子どもたちには生き生きと過ごせる空間とリーダーが必要だと思う。

 この日、桜はちらほらだったが、たぶん来週あたりは満開だろう。その頃はいつもの年なら春休みだ。休校をしているところも多いので、さて、子どもたちはどうするのか?次の休日も歩きに行こう。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員