− 第625回 −  筆者 中村 達


『暖冬で閉鎖するスキー場も』

 暖冬による雪不足で、各地のスキー場が厳しい状態となっている。2000年以降、閉鎖に追い込まれたスキー場は50以上もあるという。雪不足、スキー人口の減少、それに新型コロナ感染症の流行で、インバウンドによる入り込み客も期待できない状態となっている。
 そんな中で、福井県にあるスキー場の閉鎖が報じられていた。標高の低いスキー場だけに降雪量が少なく、数年来の暖冬でついに経営が行き詰ったそうだ。

 ところで、福井県と岐阜県、滋賀県の県境あたりは豪雪地帯だ。そのため、かつては山岳スキー、いまはバックカントリースキーのフールドとして、知る人ぞ知る山地でもある。が、例年なら琵琶湖の北部の山々も、雪ですっぽり覆われているが、今年は遠目にも積雪量は少ないことがわかる。

 古い話だが、私が初めてスキーをしたのは福井の山中にあるスキー場で、高校1年生のときだった。そのスキー場にはリフトが2基と食堂があったように思うが、記憶は定かではない。貸しスキーは木製で、ブーツはゴム製の編み上げだった。民宿に泊って自炊していたと思う。宿の軒下で、ホェヴスで米を炊いたことは憶えている。 しかし、このスキー場は10年ほど前に閉鎖されたと最近知った。私にとって初めてのスキー場だけに感慨深いものがある。

 これも40年以上も前の古い話だが、冒頭の閉鎖されたスキー場にも思い出がある。私の山仲間が福井に住んでいた。誘われて、京都から乗り継いで北陸線に乗った。彼の家は駅近くにあった。そこから車でスキー場に出かけた。
 スキー全盛期のはしりだったのか、ゲレンデは混雑していた。長い順番待ちのリフトに乗って、山上に降り立った。ゲレンデを見下ろすと、真ん中あたりにアカマツが数本立っていた。私がそれまでに各地のゲレンデ見たのは、ナラ、トウヒ、白樺、ブナ、落葉松、ツガなどだ。そのアカマツを見て、標高が低いところなのだと実感した。このとき以来、アカマツを見るたびに、このスキー場を思い出す。

 大変残念なことだが、標高の低いスキー場は、暖冬になると積雪量が減少して、オープン出来ないところが多くなる。近年はこの傾向が顕著だ。地球の温暖化なのか、周期的な変動なのかよくわからないが、このスキー場が閉鎖されたのは確かである。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員