− 第623回 −  筆者 中村 達


『クライミングが人気』

 安藤百福センターの敷地に、一昨年クライミングウォールが設置された。東京2020を機に、人気が高まるだろうし、アウトドアアクティビティとして面白い。そして、クライミングの持つ教育的効果も期待できるなどが、設置の主な理由だ。
 先ずは、秋に、ツリーハウスイベントで、子どもたちを対象にクライミング教室を行った。事前予約制としたが、すぐに満員となった。 昨年もツリーハウスイベントの他にも数回教室を開催したが、募集告知をすると、すぐに定員が埋まってしまった。
 教室の様子を見ていると、子どもたちは初めは少し緊張気味だが、登り始めるとすぐに慣れて巧みに攀じっていく。体が柔らかいので素直に登れるのだろう。
 クライミング教室の回数を重ねるたびに、大人も登ってみたいという要望が出てきた。そこで、今年は大人も参加できる教室を、二回ほど開催することとなった。(開催の要項はhttps://www.momofukucenter.jp/schedule/event_schedule/5973.html を参照)

 さて、いわゆるスポーツクライミングを見ていると、私たちが岩壁を攀じっている頃とは、ずいぶん様変わりしたものだと思う。ある意味では別物だともいえる。自然の岩壁は様々な不確定要素が存在する。変数が多く、それに対処するために、様々なトレーニングや準備を行う必要がある。自然が相手だけに、天候には常に注意を払わねばならないし、装備とともに、食料などの準備もいる。岩壁を登るには、担げる重量にも制約があり、あれもこれもというわけにはいかない。いかに軽量化し、必要十分なものを担いで登れるかを考えて準備しなければならない。登山は準備の時からはじまっている、といわれる所以である。

 別の見方をすれば、危険だし、準備などは面倒で、それなりの労力が要求される。だからいわゆる岩登りは敬遠されがちで、参加人口も激減している理由だと思う。ところが、スポーツクライミングは、安全だし、子どもたちでも楽しめる。世界的にも日本はこの競技は強いし、東京2020でもメダルが有力視されているので、いっそう人気がでてくるのではないか。
 スポーツクライミングがきっかけとなって、自然の岩場を登る若者が増えればと思う。もちろん安全対策をしっかり行ってだが・・・。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員