− 第616回 −  筆者 中村 達


『暖冬?』

 いま、信州の安藤百福センターに来ている。周囲の森の木々はすでに落葉して、森の奥まで透けて見え、新緑や紅葉の時期とは一味違った風景が楽しめる。ただ、今年は窓から見える浅間連山には、今のところまだ積雪はない。ここに来る途中の軽井沢のスキー場は、人工雪で白くなっていたものの周囲には全く雪はなかった。
 今シーズンは暖冬といわれているが、果たしてどうなるのか。積雪量が少ないと、外国人スキーヤー、スノーボーダーも期待できなくなるのではと、いささか気にかかる。
 昔のことだが11月の初めには志賀高原で初滑りが出来た年もあった。立山では雷鳥沢や剣沢の新雪を楽しんだ。もちろん、年が明けても降雪がほとんどなく、スキー場近くの民宿で、ただ、ただ、食べて飲んでという年もあったが、3日ごろからは雪が積もって滑ることが出来た。しかし、近頃は地球の温暖化かどうかはわからないが、正月を過ぎても積雪量が少なくなったように思う。

 一方、年末になってもスノースポーツの文字やコピーを見ることが、以前と比べて極端に減少したようだ。一昔前は、街中にスキーやスノボーの雰囲気が漂っていた。今シーズンのスキーファッションは、なんていうのが話題にもなった。それにスキーの専門店も非常に少なくなった。
 4WD車の屋根には、早々とスキーキャリアがセットされ、街中を走っていた。年末にスキーキャリアを購入しようと、カー用品店に出かけたが、人気のあるものはすでに完売していたこともあった。

 しかし、いまはそんな風景はなくなった。ちなみに推計だがスキー人口は、最盛期のおよそ1,800万人から600万人と3分の1になり、スキー、スノボー関連の市場規模は、4,300憶円から1,200憶円程度と4分の1に激減した。また、スキー場も最盛期からおよそ200もの閉鎖や廃業が相次ぎ、現在は500程度になったと言われている。
 私がスキーや冬山登山にうつつを抜かしていた時代は、何だったんだろうか。そんなこと思い浮かべながら、スタッドレスタイヤへの交換時期を思案する師走である。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員