− 第611回 −  筆者 中村 達


『災害とトレイル』

 台風で大きな被害が出ている。激甚災害だ。日毎に被害が拡大していて心が痛い。一日も早い復旧を祈るばかりだ。 毎年のように台風が上陸して災害を引き起こしていて、地震などを含めると、自然災害が日常化してきたように思う。災害が日常化してくると、私たちのライフスタイルも考えなければならない状況になったということだろう。

 ところでロングトレイルも、まだ全容は把握できてはいないが、全国から被害の状況が届きはじめている。トレイルは山岳地にあることが多いので、地滑りやガケ崩れ、落石、そして倒木などによって寸断されている場合がある。そして、トレイルへのアプローチが同じような状況なので、トレイル本線に辿り着けず状態が分からないところもある。

 また、災害が発生している自治体や関係者にとっては、人々の生命と安全の確保が最優先の課題であり、歩く旅の道の復旧は、2の次、3の次になるのではと思う。

 一年でいまが自然の最も美しい季節でもある。高い山々には雪が積もり、紅葉はそろそろ山麓に下りてくる頃だ。トレイル歩きや山旅には最適なシーズンでもある。地域観光の活性化にも注目されている。
 また、子どもたちの体験学習には「歩く」、中でも自然を歩くは大きな意味がある。ふしぎ発見の世界が広がり、好奇心を育むことも期待できる。
 そんなフィールドが災害で利用できないところもあるのは残念だ。ただ、トレイルの復旧は、道路や橋梁などとは違ってさほど時間はかからないだろうし、ルートやコースの変更で対応できる場合も多い。
 大きな災害に見舞われたが、ロングトレイルは長い目で見ればいいのではと自問自答している。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員