− 第610回 −  筆者 中村 達


『山の危険と情景』

 台風が過ぎ去って、ようやく秋らしい気候になった。これからがアウトドアへ出かける最適なシーズンだ。すでに高山や北海道の山々では冠雪が見られるようだが、低山では過ごしやすく、この先は紅葉が楽しめる。
 ただ、低山や里山でも危険はある。熊の出没、マダニやスズメバチなどによる被害も多発している。もちろん以前からも被害はあったが、報道されることが多くなったように思う。
 近年では人口の高齢化と過疎化によって、人と野生動物との距離が近くなったことも原因のひとつと言われている。

 特に中山間地域の自然の荒廃は進んでいるように見える。放置された竹林は、台風で倒れかけた竹が重なり合って、風に吹かれてギシギシと音を立てている。真っ暗な竹林には誰も寄り付かなくて、放置されたままの光景をよく見かける。

 植林された杉林も間伐がされないまま密生して、昼間でも暗黒の闇をつくり出している。里山を歩くと、そんな情景に出くわすことが多い。
 私の住んでいる滋賀県でも少し山間部に入れば、イノシイやシカ対策の柵やネットが張り巡らされている。しかし、久しぶりにその地域に出かけると、人の姿はなく人家は廃屋になっていることがある。当然、大事にされていた田畑も雑草が蔓延って、元の姿は見る影もなくなっている。こんなことも、野生動物が増えその危険性が指摘される理由の一つなのだろう。

最近、外国人が日本の山々を歩く姿を見かけるようになった。夏、彼らはTシャツ、半ズボンというスタイルが多い。それに帽子はなし。
 私たち日本人登山者やハイカーの多くは、熱中症や日焼け対策に帽子を被り、長そでのシャツ。ダニ対策もあって長ズボン。熊除けの鈴を鳴らしながら、という風景もある。意見はいろいろあるだろうが、こんな感じではある。私もそんな風である。
※画像はイメージです

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員