− 第608回 −  筆者 中村 達


『レインウェアとパーカーの違い?』

 アウトドア用のウェア、特にパーカーなどが人気でよく売れているようだ。また、TVの報道番組でレポーターが着ているレインウェアも、ついているロゴやマークからアウトドアブランドが多くなったのがわかる。ほんの少し前まではビニール製も多く見られたが、ほとんど画面から姿を消した。
 高機能、高性能の素材、つまり防水性に優れ透湿性がある程度確保されているので、濡れない、蒸せないが当たり前になった。私のような古い山屋は、レインウェアは濡れないけれど、蒸せて汗だくになるという固定観念があったと思う。○○テックスという夢のような製品が市場に出始めたのは、1970年代の後半だった。高価だし「ホンマかいなぁ!」と半信半疑だった。が、カラコルムでそれをメンバーの一人が、快適そうに着ているのを見て羨ましかったのを覚えている。

 そんなレインウェアだが、いわゆるパーカーとは何が違うのか、実のところ私にはよくわからない。同じ素材がパーカーにも使われているし、止水ジッパーも採用されている。アウトドアショップで店員さんに違いを尋ねても明確な返答はない。登山やハイキングでは出来るだけ荷物は減らしたいし、パーカーとレインウェアが兼用できればベターだ。事実、無積雪期の山ではレインウェアを、パーカーとして着用している人も多い。もちろん冬季用や雪山で使用する場合は、保温性もほしいので考え方は変わってくる。

 少し前のことだが、米国でアウトドアメーカーの商品開発担当者と話す機会があった。その担当者にレインウェアを見せてほしいというと「そんなものはない、パーカーに防水性があればいいではないか」と怪訝な顔をされたことがあった。他のアウトドア関係者にも同じようなことを言われた。
 ただ、その当時と比べると、外国ブランドでもレインウェアが多くなった。日本の登山者やハイカーなどのマーケット動向を調査した結果なのだろうか。

 とはいえ、最近ではファストファッションの量販店などが高機能なパーカーを、格安で販売している。実は、先日もある大手日用雑貨店で、そんなパーカーが在庫処分とかで50%引きで吊るされていた。思わず手が出そうにあったが、他のアウトドアブランドをネットで購入したばかりなのを思い出して押し止まった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員