− 第605回 −  筆者 中村 達


『山の日』

 8月11日は「山の日」だった。今年の記念全国大会は山梨県甲府市で開催され、テーマは「山に親しみ 山に学び 山と生きる」~持続可能な未来へ~であった。会場となった甲府市総合市民会館には、山梨県民や全国から多くの関係者が参加していた。
 超党派「山の日」国会議員連盟会長の開会宣言のあと、山梨県知事、甲府市長、環境大臣、林野庁長官らの挨拶があった。続いて地元の和太鼓演奏や、子どもの森みどりの少年少女隊による「山はふるさと」の合唱などが行われ、大会はクライマックスを迎えた。
 そして、来年開催地の大分県へ山の日記念の帽子が託された。最後に「山鐘」が少年少女隊に11鐘鳴らされて、記念式典は終了した。
 また、この日は全国でも様々な「山の日」関連イベントが開催され、徐々にではあるが山の日の意味が知られてきたようだ。とはいえ、式典の挨拶でも触れられたが、まだ国民の間に浸透するまでには時間がかかる。
 「山の日」は山に登る日というわけではない。まして国民に登山を奨励しているものではない。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」が山の日のコンセプトだ。

 この国の国土の多くは山岳地で占められ、古くから山々と豊かな自然の恩恵を受けてきた。その恩恵と恵みに感謝し、自然を大切にしようということが制定の目的である。
 もちろんこの国の自然に触れるには、必然的にその地勢から山岳地帯に入ることが多くなる。ハイキング、山歩き、登山、山旅などが盛んに行われ、国民のレジャーの一つになっている所以でもある。
 そして、アウトドアズにようやく「アウトドアライフスタイル」などというカテゴリが出現したのも、自然とともにあるライフスタイルの希求かも知れない。

 式典のあと市内にある武田神社に参拝して、中央道から帰路についた。山の日の振り替え休日がお盆休みとつながったためか、高速道路は各所で渋滞が発生していた。サービスエリアも帰省する人たちや、遊びに出かける人たちで溢れていた。
 今日は「山の日」だという空気感は、さほど感じなかった。国民の間に浸透するには、まだ少し時間がかかりそうだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員